昨年9月末に起き、いまだ犯人が明らかになっていないガスパイプライン「ノルドストリーム1・2」爆破事件を捜査中のドイツ当局が、犯行に使われたとみられる船舶を捜索していたことが明らかになった。
ドイツ連邦検察は8日、ノルドストリームのガスパイプライン爆破に使われたとみられる船舶を1月に捜索し、捜査は今も続いていると発表した。ドイツ連邦検察の発表前日の7日には、ドイツの公共放送「ARD」、「南西ドイツ放送(SWR)」と週刊新聞「ディー・ツァイト」がドイツ当局の捜査内容を共同取材して報じている。
ARDは「パイプラインを破壊したのが誰なのか証拠はないが、痕跡はある。これはウクライナに向けられている」と指摘した。ARDは、捜査官たちがパイプライン爆破に使われたとみられるヨットを捜索したとし、ヨットはポーランドにある会社が貸与したもので、同社はウクライナ人とみられる2人の所有だったと伝えた。ヨットは昨年9月6日、ドイツのバルト海に面するロストック港から出航し、爆破事件の現場であるボルンホルムの北西にあるデンマーク領クリスティアンスー島で発見された。
ドイツの捜査当局は船を捜索して爆発物の痕跡を発見したものの、誰がこの工作を依頼したのかを明らかにする証拠は発見できなかった。ARDは、西側のある情報機関が、昨年秋のパイプライン爆破直後に欧州諸国の情報機関に対してウクライナの特殊部隊がパイプラインを破壊したもようという情報を送っていたといわれると報じた。その後、親ウクライナ団体が行った可能性もあるという情報もあったとも伝えた。ARDは、工作チームは船長1人、潜水士2人、補助員2人、医師1人の6人で構成され、彼らが爆弾を設置したことが調査で分かったと伝えた。彼らの国籍は不明で、使用されたパスポートは偽物だったと報じた。
ドイツのボリス・ピストリウス国防相は「実際に何が確認されたのかは見守らなければならないだろう」とし「仮説的に言及するのは効果的ではない。明確にしなければならない」と述べるにとどまった。ピストリウス国防相は「(責任を)他の方向に転嫁しようとしている可能性も同様に高い」と述べた。親ウクライナ団体への責任転嫁を狙った欺瞞行動である可能性に言及したもの。
昨年9月26日夜、ロシアからドイツに天然ガスを送る海底ガスパイプライン「ノルドストリーム1・2」で爆発事件が起きた。バルト海で起きたこの事故により、ノルドストリームを通じてロシアから欧州に供給していたガス輸送ができなくなった。
誰がどのような目的でガスパイプラインを爆破したのか迷宮に迷い込んでいる中、先月初めには米国の調査報道記者シーモア・ハーシュ氏が、ノルドストリーム爆破事件は米海軍の深海潜水士を動員して行われた米国の工作だと主張している。7日には「ニューヨーク・タイムズ」が匿名の複数の米国高官の話を引用し、親ウクライナ勢力の関与の可能性があると報道した。親ウクライナ団体がパイプラインを爆発したと考えられるが、ウクライナ政府や米国政府が行ったものではないとみられるとする内容で、ウクライナ政府の代理勢力の犯行である可能性も残す報道だった。
ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は7日のニューヨーク・タイムズの報道について「法的枠組みの中で捜査することを望まず、あらゆる手段を使って大衆の注意を分散させようとしている人々が、新たな情報を広めている」と非難した。つまり、米国などの西側諸国が政府レベルの介入はなく親ウクライナ勢力の犯行だということにしようとしている、と批判したのだ。同日、ARDなどがドイツ捜査当局の捜査内容について報道し、翌日ドイツ検察が捜査内容を一部公開した。