先週、女性アイドルグループ「New Jeans」のメンバーが、旧正月(1月22日)を迎えてネット上で新年の挨拶を上げ、ひどく叩かれた。英語で旧正月を「Chinese New Year」(中国の新年)と書いたところ、「陰暦の新年」(Lunar New Year)と言うべきだという叱責であふれたのだ。彼女は「今後は慎重に」行動すると述べ、謝罪しなければならなかった。
旧正月の英語名は「ルナニューイヤー」と「チャイニーズニューイヤー」のどちらなのかをめぐる昔からの論争に、最近再び火がつき、多くの人々が選ぶときに困難が生じていると米国CNNが29日(現地時間)報道した。
「ルナニューイヤー」を使うべきだとする人々は、旧正月は中国だけでなくアジアの様々な国でそれぞれ独自の慣例により行われているという点を挙げている。旧正月を示す表記からして国ごとに違う。中国では「春節」、韓国では「ソル」、ベトナムでは「テト」と呼ばれる。「チャイニーズニューイヤー」という表記は、こうした多様性を消してしまう効果を生むということだ。
「チャイニーズニューイヤー」と表記して槍玉に挙げられたNew Jeansのメンバーも謝罪文で、「旧正月は韓国を含む多くの国と地域で記念する祝日なので、私の表記は不適切だった」と書いた。多くの英語圏の報道機関で記事を作成する時に参照されるAP通信のスタイルブックをはじめ、多くの機関も、こうした理由から、通常は「ルナニューイヤー」という表記の使用を勧告している。
中国は、旧正月が自分たちの開発した太陰暦に基づいているとして、中国の春節だけでなく他国の旧正月も英語で表記する際には「チャイニーズニューイヤー」として、起源を明らかにして使うべきだという立場だ。実際に中国の国営通信社「新華社」は、ミャンマー、マレーシア、日本が「中国の陰暦の新年」(Chinese Lunar New Year)を祝ったという形で表記した。
こうした感情は、中国当局の厳格な統制を受けるソーシャルメディアにもあふれている。中国のネットユーザーたちは、中国版ツイッターと呼ばれる微博(Weibo)に「韓国が主導する『ルナニューイヤー』表記は、中国文化に対する西側のイデオロギー攻撃」だと書いた。
旧正月と関係ない人々も、これらの論議から逃れることは難しい。例えば大英博物館は、ツイッターで韓国の伝統音楽の公演を紹介し、「コリアン・ルナニューイヤーを魔法のような公演と一緒に祝いに来てください」と広報した。これに対して「チャイニーズニューイヤーと言うべきだ」とする反発が殺到すると、慌ててツイッターの投稿を削除した。
この論議について、西オーストラリア大学のマギー・イン・ジャン教授は、中国と周辺国の間の文化衝突と地政学的対立を反映しているものだと指摘した。例えば「ルナニューイヤー」の主張には、中国の周辺国が自国独自の文化的アイデンティティーを確立して知らしめようとする努力が背景にある反面、中国はこれらの人々が中国固有の文化を奪おうとしていると疑っているということだ。ここへ韓国と中国が最近、政治経済的に対立する状況が重なり、論争が大きくなっているというのがジャン教授の指摘だ。
さらにジャン教授は、中国の激しい反応の背景には、ますます力を得ている中国の民族主義が背景にあると指摘した。習近平国家主席の就任以降、中国のネット上は民族主義の論理があふれている状況にある。これに対して反省的な省察が必要だと主張した多くの学者・知識人・女性運動家が、「非愛国的」だという理由で批判を受けた。ジャン教授は、清の末期から外勢に踏みにじられたいわゆる「屈辱の世紀」が、中華民族主義が社会に深く根をおろす土壌になっていると述べた。