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[コラム]AI兵器が登場するウクライナ戦争の未来

登録:2023-01-11 09:54 修正:2023-01-11 10:27
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が6日午後、モスクワのクレムリンで開かれた正教会のクリスマスミサに出席している=モスクワ/AFP・聯合ニュース

 ロシアのボリシェビキ革命は11月7日に起きたが、10月革命と呼ばれる。ロシア東方正教会のユリウス暦によれば10月25日に起きたからだ。去年の12月25日のクリスマスに、西側と韓国メディアはウクライナ戦争でロシアが「クリスマス休戦」もせず攻撃を継続しているという非難めいた報道を流した。ロシアやウクライナのクリスマスはユリウス暦に従うため、グレゴリオ暦の1月7日だ。ロシアがクリスマス休戦をするなら1月7日であり、実際に1月7日にクリスマス休戦を宣言したが、ウクライナはこれを拒否した。

 ウクライナ戦争で昨年4月に韓国に避難した高麗人(朝鮮半島にルーツを持つ旧ソ連領定住同胞)のナタリア・ソさん(35)にとって、この戦争の始まりはロシアがウクライナを全面的に侵攻した2月24日ではない。1週間前に自分が住んでいたクラスニー・ルーチにウクライナ軍の砲撃が行われた2月18日だ。現在は安山市(アンサンシ)の高麗人居住地域で一種の難民として暮らしているソさんは、その前の数年間に行われたドンバス内戦とは異なり、その日の砲撃は日常の安全を脅かす戦争に近づいたため避難したと語った。ソさんをはじめドンバス地域の少なからぬ住民にとって、ウクライナ戦争は誰が先に開始したのか不明だ。

 西側はロシアの侵略を糾弾し、ロシアのすべての行為を悪魔化する。クリスマス休戦をめぐるプロパガンダが代表的だ。ロシアはドンバス地域のロシア系住民の利害を代弁するという名分で、この戦争を「特別軍事作戦」と主張している。ロシアの侵略は明らかに批判すべきことだが、このようなプロパガンダが作動し、戦争を中止する妥協と交渉の余地が減るという点も深刻に見なければならない問題だ。

 西側や韓国では、昨年9月以降ウクライナ戦争の戦況が変わり、ロシアがまもなく没落するものとみられている。ウクライナは4月にキーウからロシア軍を追い出したのに続き、9月以後にはロシアが侵攻後に占領したドンバス北部地域をはじめ、南部のヘルソンまで奪還した。これは確かにロシアの苦戦を表している。しかし、ロシアが敗退を目前にしているというよりは、戦況は膠着状態に陥っている。

 ロシアが兵器と軍需、兵力が底をついたという報道が連日出ているが、その点ではウクライナの方が深刻だ。マーク・ミリー米合同参謀議長は11月9日、ニューヨークのある演説で、ロシアとウクライナの兵士が10万人ずつ死亡し、4万人のウクライナの民間人が死亡し、3000万人が難民になったと述べた。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長も11月30日に、ウクライナ兵士10万人と民間人2万人が死亡したと明らかにしたが、まもなくしてその内容を削除した。

 ウクライナの人口は4300万人だが、外国に行った避難民、ロシア系住民などを除けば2000万~2700万人なので、最大徴集可能な男性人口は300万人にすぎない。すでに100万人が徴集され、残りは身体的に徴集が不可能だったり、他の必須職種に勤務しなければならない人だ。徴集された100万人のうち戦闘に出る若年層は20万~30万人にすぎない。10万人が戦死したとすれば、ウクライナとしては致命的な兵力不足だ。本紙のノ・ジウォン記者のキーウ現地報道によると、50代男性たちが新たに徴集されているという。

 ハーバード大学ケネディスクールのベルファーセンターは、ロシア問題を客観的に伝えようとする「ロシア・マターズ」というオンラインジャーナルを運営している。イラクおよびアフガニスタン戦争で作戦参謀として勤めたアレックス・バーシニン元米軍中佐はこのジャーナルに「ウクライナ戦争の先にあるもの」という分析で、現在はロシアの「火力中心の消耗戦」対ウクライナの「局地的機動戦」の対決だと規定した。ロシアは戦術的状況が不利になるたびに後退して資源を慎重に補充し、ウクライナは局地的な反撃に成功したが戦略的資源を消耗したと診断した。戦争が続けば、双方は特段の方策を講じるだろう。西側は人工知能(AI)兵器を本格的にテストする誘惑に陥り、ロシアは核兵器で反撃する恐れがある。

 ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は「スペクテイター」に「もう一つの世界戦争を避ける方法」という寄稿で、ロシアの侵攻以前の境界線が望ましいが、現在の戦線でも停戦し、領土問題は住民投票で解決しようと提案した。客観的かつ独立的な住民投票が行われれば、ロシアは2月24日以前に占領したクリミア半島とドンバスの一部地域だけを獲得することになる。キッシンジャーは、戦争が続けばAI兵器が投入される新しい戦争が繰り広げられ、世界大戦に飛び火する恐れがあると警告した。歴史学者のニーアル・ファーガソンも「ブルームバーグニュース」に「東部戦線異常あり」という寄稿でこのような主張をし、2023年は世界大戦の年になりうると懸念を示した。

 世界はウクライナ戦争をめぐり、敵味方を分けて正義を叫び、ウクライナ住民と人類のいずれも惨禍に追い込んでいる。人類は今、再びその理性を試されている。

チョン・ウィギル国際部先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1075038.html韓国語原文入力:2023-01-10 02:08
訳C.M

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