尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の東南アジア歴訪に同行した夫人のキム・ゴンヒ女史がカンボジア現地の医療脆弱階層を訪問した写真が物議を醸している。共に民主党のチャン・ギョンテ最高委員がキム女史の訪問について「貧困ポルノ撮影」だと批判したことを受け、与党は「貧困ポルノという表現自体が人格侮辱で反女性的」(チュ・ホヨン院内代表)と反発した。与党はさらに16日午後、チャン最高委員を国会倫理委員会に提訴するなどさらなる議論を呼んでいる。今回の物議の主な脈絡と争点を詳しく確認してみる。
「美談」と言える行動だったのか
まず、問題になったチャン最高委員の発言だ。チャン氏は14日の共に民主党最高委員会の会議で、韓・ASEAN首脳会議が開かれたカンボジアのプノンペンで、首脳配偶者プログラムに参加せず単独で非公開日程をこなしたキム・ゴンヒ女史の行動についてこのように批判した。
今回もまた外交惨事が発生しました。キム・ゴンヒ女史の貧困ポルノ撮影が物議を醸しています。カンボジアは東アジア首脳会議を開催し、国家イメージの向上に力を入れています。そこで世界各国の首脳の配偶者にも世界的な名所、アンコールワット訪問を要請しました。しかし、キム・ゴンヒ女史は開催国の要請にもかかわらず、公式日程を取り消し、プノンペンの先天性心臓疾患を患う少年の家を訪れ、写真撮影を行いました。外交行事開催国の公式要請を断ったのも外交的欠礼ですし、医療脆弱階層を訪問して広報の手段にしたのはさらに失礼です。
これに先立ち、キム・ゴンヒ女史は歴訪初日の11日、韓国人医師のキム・ウジョン院長が運営するカンボジア・プノンペンのヘブロン医療院とンドゥオン病院を訪れ、患者に会って施設を見学した。12日にはプノンペンで先天性心臓疾患を患っている14歳の少年の家を訪れ、「乗り越えられるよね? 元気になって韓国で会おう」と声をかけ、回復を祈った。前日、ヘブロン医療院で会う予定だった少年が体調を崩して来られなかったと聞いて、アンコールワットを訪れる首脳配偶者プログラムに参加する代わりに、非公開で個別日程をこなしたのだ。
カンボジア政府が世界各国の首脳の配偶者のアンコールワット訪問プログラムを企画した背景を推測するのは難しくない。カンボジアでは観光産業は経済を支える4大主要産業の一つとして知られている。2019年には外国人観光客の支出が国民総生産(GNP)のほぼ20%に達した。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、2019年には661万人に達した外国人観光客の規模は2020年に130万人、2021年に19万6千人水準へと急速に減少した(カンボジア日刊紙「クメールタイムズ」6月7日付)。今年に入って3月に訪問ビザの発給を再び始めるなど観光客の誘致に積極的に乗り出しているカンボジアにとって、今回の国際会議は自国の文化遺産を広報できる良い機会だった。
いくつかの国内メディアはあたかもキム女史が「観光日程」をあきらめ、貧しい人を訪ねてボランティア活動に行ってきたという「美談」の類として取り上げたが、カンボジア政府が首脳会議開催期間に全世界に何を見せようとしたのか、また何を見せたくなかったのかを考えてみる必要がある。「外交的欠礼」というチャン最高委員の指摘が単なる政治攻勢と言い切れないのもそのためだ。
(2に続く)