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悪循環に陥った朝鮮半島…北朝鮮、予想を覆して2日連続で武力示威

登録:2022-10-20 03:18 修正:2022-10-20 08:33
朝鮮中央通信の18日の報道によると、北朝鮮の金正恩国務委員長は労働党中央幹部学校を訪れ、記念講義を行った/聯合ニュース

 北朝鮮の対南武力示威に対して韓国が軍事的に対応し、それに再び北朝鮮が対応していることで、朝鮮半島情勢はややもすると一触即発の事態となる悪循環に陥っている。2018年、偶発的な衝突が戦争へと拡大するのを防ぐために南北が合意した「9・19軍事合意」が力を失うことになれば、朝鮮半島の危機状況は手の施しようもなく拡大するだろうという懸念が高まっている。

 北朝鮮は18日夜と19日午後に2日連続で東海(トンヘ)と西海(ソヘ)に砲兵射撃を行った。朝鮮人民軍総参謀部は19日、報道官名義の発表で、「敵は18日9時55分から17時22分まで、南江原道鉄原郡(チョルウォングン)前方一帯から数十発の放射砲(多連装ロケット砲弾)を発射した。前方一帯で相次いで敢行される敵の軍事的挑発行為により、朝鮮半島の情勢は悪化し続けている」と主張した。続いて「朝鮮人民軍総参謀部は、敵の北侵戦争演習である『護国22』が狂乱的に繰り広げられている時期に敢行された今回の挑発策動を特に厳重に受け止め、いま一度重大な警告を送るための」対応措置だとして自身の砲撃を正当化した。これに対して韓国軍当局は、北朝鮮が言及した砲撃訓練は9・19軍事合意に違反しておらず、以前から継続して実施されてきた訓練だと説明した。

 これに先立ち、北朝鮮は18日夜、江原道長箭(チャンジョン)一帯と黄海道長山(チャンサン)岬一帯から東海および西海に向けて250発あまりの砲兵射撃を行った。14日未明と夜にロケット砲弾560発を東海および西海に発射したのに続く武力示威だ。特にこの日、北朝鮮が発射した砲弾は、9・19南北軍事合意にもとづく海上緩衝区域に落ちたため、14日の2回に続き9・19軍事合意に違反していると合同参謀本部は説明した。北朝鮮は19日午後12時30分ごろにも黄海南道延安郡(ヨナングン)一帯から西海に向けて100発あまりの砲兵射撃を行い、砲弾は海上緩衝区域に落ちた。

 北韓大学院大学のヤン・ムジン総長は、北朝鮮が9・19合意に違反する砲撃を続けつつも9・19合意には言及さえしていないことを指摘し、「今後、韓国が9・19合意を破棄したら責任を転嫁するとともに、非難を回避しようとの意図」だと分析した。韓国に9・19軍事合意を先に破棄させるようしむけて情勢悪化の責任を韓国に転嫁するとともに、局地紛争や7回目の核実験などの大義名分を蓄積しているというわけだ。

 当初、国内外の専門家は、中国の習近平国家主席の3期目入りを確定する中国共産党第20回党大会の期間中(16~22日)には、北朝鮮は武力示威を自制するだろうと予想していたが、北朝鮮はこの期間にも武力示威を続けている。

 最近の北朝鮮の砲撃について、スティムソン・センターのロバート・マニング上級研究員はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し「今回の砲撃の意図は『偽の危機』を誘発し、韓米訓練に対する金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の怒りを表出しようというもの」と述べた。そして「(中国共産党第20回党大会を控えて)7回目の核実験をするなという中国の圧力に対する、(北朝鮮の)ある程度の不満の表明たりうる」と付け加えた。弾道ミサイル発射とは異なり、最近の砲撃訓練は国連安全保障理事会の議論事案ではないため、安保理の常任理事国である中国にかかる負担は比較的軽いとの分析も示されている。

 専門家は、北朝鮮の武力示威と韓国の軍事的対応が朝鮮半島の緊張を高めるという悪循環に陥っていることで、南北の偶発的衝突の可能性が高まっていることを憂慮する。実際に、今月14日に続き18日と19日にも北朝鮮が発射した砲弾が東海および西海の緩衝区域に落ちたことで、南北の戦闘機が対峙するきわどい状況も続いている。

 キム・チャンス元大統領府統一秘書官は、「南北が互いに強硬に対峙し、何であれそれこそ『導火線』になりうる一触即発の状況へと突き進んでいる」とし、「たとえ北側が違反しても、今のところは制御不能な状況へと突き進む前に、9・19軍事合意の維持を通じて何とか双方が衝突を回避しうる信頼装置を稼動しなければならない」と述べた。

 現在のところ北朝鮮が発射した砲弾は東海と西海の北方限界線(NLL)を超えておらず、北朝鮮側の海に落ちている。軍当局は、もし北朝鮮が発射した砲弾が北方限界線以南の韓国側の海に落ちれば、越えてきた北朝鮮軍の砲弾の数と同数の対応射撃を北方限界線以北の北朝鮮側の海に行う方針だ。この場合、白ニョン島(ペンニョンド)の海兵隊のK-9自走砲などが対応射撃を行い、陸海空軍の合同支援勢力も待機しているという。南北の軍事的対応が相まって緊張が高まり続ければ、双方の偶発的な軍事衝突の可能性は高まらざるをえないということだ。

 イ・ジョンソプ国防部長官は16日、合同参謀本部戦闘統制室を訪れ、現場の指揮官と将兵に対し「北朝鮮の直接的挑発が発生した場合、躊躇なく自衛権の観点からの断固たる初期対応を実施する現場の作戦終結態勢を整える」ことを強調したと国防部は説明した。

 今は政府は危機を高めるのではなく、危機状況の管理に取り組むべきだとの指摘もある。国防部企画調整室長を務めた世宗研究所のキム・ジョンソプ副所長は、「北朝鮮の最近の行動は単発性のものではないように思われる。韓米の軍事的対応などを大義名分として7回目の核実験にまで向かいうる状況かもしれない」とし「米国の拡大抑止についての約束もあるので、政府も過剰対応するのではなく、危機状況を安定的に管理していこうという努力を示すべきだろう」と述べた。

クォン・ヒョクチョル、チョン・インファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1063438.html韓国語原文入力:2022-10-19 21:02
訳D.K

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