このところ北朝鮮の弾道ミサイル発射が繰り返されるとともに、核による威嚇が露骨になっていることで、この30年間続いてきた「北朝鮮核外交」が事実上行き詰まっている。韓米日などが北朝鮮を再び対話の場に引っ張り出すほどの画期的な「戦略的決断」を下さない限り、現在の行き詰まった状況を打開する解決策を見出すのは容易ではなさそうだ。
北朝鮮は先月8日に最高人民会議を開き、「朝鮮民主主義人民共和国の核武力政策について」という名で自分たちの核教理を法制化した。法令は、国家指導部および国家の重要戦略対象などに対する「核および非核攻撃が敢行」された時だけでなく、「差し迫っている」時にも核を使用できるとし、事実上韓国などに対する先制核使用の道を開いた。北朝鮮は周辺国の不安をあおるかのように、今年に入って30発以上もの各種弾道ミサイルを発射するとともに、戦略資産を動員した米国の圧迫にもびくともしない姿勢を見せている。軍事力を誇示して相手の挑発を制御するという韓米の「抑止」が通じなくなっていることで、朝鮮半島と日本を含む東アジアの不安定さはいつにも増して高まっている。
最近の朝鮮半島の危機は、1993年3月に第1次北朝鮮核危機が始まって以来、30年にわたり続いてきた「北朝鮮核外交」が、結局のところ北朝鮮の核開発を阻止できず失敗したことを示している。この間、北朝鮮の核開発を阻止するために、朝米枠組み合意(1994年)▽6者協議(2003~2008年)▽朝米による直接交渉(朝鮮半島平和プロセス)の3度の主な試みがあったが、結局は成果を出せなかった。特に2019年2月28日にベトナムのハノイで自らの持つ最重要核施設である寧辺(ヨンビョン)地区を差し出し、2016年以降の国連安保理制裁を解除させようとしていた北朝鮮の決断が実現しなかったことで、北朝鮮の核問題は解決がさらに難しくなった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長はハノイ決裂直後の2019年4月、最高人民会議の施政演説で「米国との対峙は長期性を帯びるようになっており、制裁も続くことになるだろう」と失望を表明した後、2021年1月の第8回党大会で戦術核▽原子力潜水艦・水中発射核戦略兵器▽多弾頭個別誘導技術▽極超音速滑空飛行戦闘部などの兵器開発計画を打ち出した。今年に入ってからは、当時言及した兵器を一つずつテストすることで軍事的力量を立証しつつある。差し迫っているとみられる7回目の核実験で、北朝鮮が「実際に使用可能な」戦術核をも爆発させれば、朝鮮半島の核危機は以前とは全く異なる局面に入ることになる。
このような危機の中で、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は先月16日、外交・国防次官級対話のチャンネルである拡大抑止戦略協議体(EDSCG)を再稼動させており、政府と与党からは戦術核再配備や「拡大抑止の画期的強化」、米戦略資産の「常時配備」などについての発言が相次いでいる。
今の切迫した危機から脱するには、小さな誤った判断が大きな惨事につながらないよう、断絶している当局同士の意思疎通チャンネルを早急に復元しなければならない。そして、北朝鮮を再び交渉の場に引っ張り出せるような決断を下すしかない。金委員長は3年前のハノイで寧辺という「右肩」を差し出したにもかかわらず合意に至らなかったことから、交渉をあきらめ核能力を強化する道を選んだ。この選択を元に戻すには、今度は韓米日が自らの「右肩」を差し出さなければならない。その際の交渉条件は、ハノイの時より北朝鮮にある程度有利な内容にならざるを得ない。