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元米統合参謀本部議長、「『核のボタン』言及された2017年より危険な状況」

登録:2022-10-11 00:31 修正:2022-10-11 07:01
マイケル・マレン元米統合参謀本部議長=ABCのホームページより//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮が弾道ミサイルを相次いで発射し、7回目の核実験の可能性が取りざたされている今が、朝米対決がピークに達した2017年末より危険であり、北朝鮮の核使用の危険性がさらに高まっている状況だと、マイケル・マレン元米統合参謀本部議長が主張した。そして、状況を打開するためには、朝米が直接対話しなければならないという見解を明らかにした。

 マレン氏は9日(現地時間)、ABC放送の「ディスウィーク」とのインタビューで、司会者が「以前、『この地域で北朝鮮との核戦争がいつにも増して近づいてきた』と発言したことがある。今はどうか」と尋ねると、「私の考えでは、(頻繁なミサイル)発射実験からすると、(核戦争に)近づき続けている」と答えた。2007~2011年に統合参謀本部議長を務めた同氏は、北朝鮮の核開発をめぐり、朝米の緊張が高まっていた2017年12月、同番組に出演し、「核戦争が近づいてきた」と述べた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と米国のドナルド・トランプ大統領が互いの持つ「核のボタン」に言及し、崖っぷちの対立に突き進んだ2017年末の状況より、今の方が危険だという見解を示したわけだ。

 マレン氏は、北朝鮮が最近になってさらに相次いで弾道ミサイルを発射していることを挙げ、「彼(金委員長)の(ミサイル能力に関する)研究と開発が続いている」とし、「そのような面で、我々は5年前より危険な立場に置かれている」と述べた。そして、「核弾頭を搭載したミサイルを単に(交渉の)テコに使うのではなく、実際に発射するかもしれないという意味なのか」という質問に、「そうだ」と答えた。そのような可能性が実在するのかという質問にも「5年前よりさらに可能性がある」と語った。

 マレン氏のいう「5年前」は、北朝鮮が多様な射程の弾道ミサイルを発射すると共に、6回目の核実験に踏み切り、朝米が「崖っぷち」の衝突を続けた2017年を意味する。北朝鮮は同年7月、米国の前進基地があるグアムを攻撃できる中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12型」の発射実験を行い、9月には6回目の核実験を敢行した。さらに11月には米国本土を打撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、「国家核武力の完成」を宣言した。これを受け、トランプ大統領は同年8月、「北朝鮮は世界が見たことのないような炎と怒りに直面するだろう」と警告しており、ホワイトハウスのハーバート・マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)は北朝鮮に対する先制攻撃を意味する「予防戦争」に触れた。にもかかわらず、北朝鮮の挑発が続いたことを受け、米国は戦略爆撃機を北方限界線の北方公海に派遣すると共に、空母3隻を東海に投入する強硬姿勢を取った。

 2017年末の北朝鮮の核・ミサイル連続実験とそれに対するトランプ政権の対応で、朝鮮半島がどれほど危険な状況に置かれていたかは、その後出た米政府と米軍高官の証言を通じて確認できる。ビンセント・ブルックス在韓米軍司令官(当時)は、米政府が韓国と日本にいる米国人を避難させる計画を立てていたとし、「戦争に近づいた」状態だった、米国は「あらゆる選択肢を検討していた」と述べた。元ワシントンポスト記者のボブ・ウッドワード氏は2020年に出版された著書『RAGE 怒り』 で、ジェームズ・マティス当時国防長官が2017年危機の時にワシントン国立大聖堂を訪ね、数百万人を犠牲にしうる戦争危機を解決してほしいという祈りを捧げたという事実を伝えた。マレン氏は当時、「ABC」のインタビューで、トランプ大統領が衝動的な選択をできないようマティス長官などが引き止めているが、いつまで通じるかは分からないと深く懸念していた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領(当時)も9月の国連総会で「我々のすべての努力は戦争を防ぎ平和を維持するためのもの」とし、平和を訴えた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は当時とは違い朝米対立を緩和しようと努力するよりは、韓日米3国間軍事協力に重点を置いている。

 マレン氏は、北朝鮮の非核化が現時点で実現可能だと考えるかという質問には、「難しいことは重々承知している」としながらも、戦争防止のための努力は続けなければならないと述べた。また、米国は中国の習近平国家主席を通じて北朝鮮を圧迫する解決策を期待してきたが、金委員長が希望するなら、朝米が直接交渉するのも望ましいという見解を示した。

 ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官も同日、同じ番組に出演し、北朝鮮と前提条件なしの対話に応じる意思を再確認した。カービー氏は、北朝鮮が対話の提案を拒否し、核・ミサイル開発を加速化しているとしながらも、「我々は前提条件なしに金正恩と向かい合って外交的な道を模索する用意がある」とし、「完全かつ検証可能な朝鮮半島の非核化」が米国の目標だという点に変わりはないと明らかにした。

ワシントン/イ・ボニョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/america/1062018.html韓国語原文入:2022-10-10 20:55
訳H.J

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