現在の購買力で150億ウォンほどにあたる資金を奪われた日帝は、非常事態に陥った。団員たちはロシアの領土であるウラジオストクに身を隠し、独立運動に使う武器を買う契約まで結んだが、1月31日未明、日本の憲兵隊によって一網打尽にされる。チェ・ボンソル(チェ・ゲリプ)は銃に撃たれたが格闘の末辛うじて脱出し、チェ・ソンハ、チェ・ゲボク父娘の誠心誠意の看護と保護で命を取り留めた。だが、ユン・ジュンヒ、イム・グクチョン、ハン・サンホは翌年、ソウル西大門刑務所で死刑に処された。当時、彼らを密告したのは団員たちが武器購入を依頼した「独立軍の先輩」オム・インソプ。1908年夏の国内進攻作戦の時、最先鋒に立った義兵長であり、安重根(アン・ジュングン)と義兄弟の契りを結んだ人物だった。彼に関し、日本側の記録は1908年に「(日本の)領事館に出頭し、スパイとして雇用してほしいと請願」したと証言している。
映画に出てきそうなストーリーだが、日帝強占期(植民地時代)の独立運動史にはこれよりもさらにドラマチックに、喜びや悔しさ、悲しみに満ちた物語があふれている。『独立運動列伝』は、そのような物語の中の様々な人間群像を取り上げる。レーニンから金貨330キロを受け取り、横領などの疑いで臨時政府の警護員(警察)によって銃殺されたキム・リプ、日帝の予防拘禁に100日以上の断食で立ち向かい獄死したイ・ハンビン、光州学生運動を率いた傑出した青年指導者チャン・ジェソン、大韓民国愛国婦人会の初代会長だったが、夫カン・ナグォンと共に組織を丸ごと日帝に密告し、一家の無事を保ったオ・ヒョンジュ、臨時政府の破壊工作に乗り出し処断されたキム・ダルハ…。
「史料を読んでいると、思いがけず驚くべき涙のエピソードを知ることもあった」という著者は、「型にはまった英雄物語」を拒む一方、社会主義者の独立運動家たちを積極的に発掘して見渡す。韓国では長年タブー視されていた彼らの多くは、北朝鮮でもまともな待遇を受けることができなかった。金日成(キム・イルソン)系列の抗日闘争が過度に神格化し、リ・ホングァン、ホ・ヒョンシクなど名を馳せた指導者でさえ、金日成の部下に格下げされたり、相対的に隠されてきたからだ。丁寧に取り上げられた平凡な人々の「無名の献身」や、独立運動家の家族の波乱の人生も、読者の胸に迫ってくる。