故・安倍晋三元首相に対する追悼ムードの中で行われた参議院選挙が自民党の圧勝で終わり、日本の「平和憲法」改正が本格的に進められる見通しだ。岸田文雄首相は、自衛隊の憲法明記を含むいわゆる「改憲4項目」が議論の中心になることを予告しており、これをめぐる意見調整が今後の憲法改正の行方を左右するものとみられる。
岸田首相が選挙直後の11日に言及した自民党の改憲4項目は、安倍元首相が健在だった2018年3月に自民党が党大会で発表した「憲法改正に関する条文イメージ・たたき台素案」を意味する。同案は国会で発議できる完成した形の憲法改正案の草案ではなく、草案を作るためのたたき台だ。4項目は、憲法に自衛隊の明記▽自然災害など緊急事態への対応▽参議院の合区解消(各県別に少なくとも1人以上選出規定)▽生涯教育など教育の充実を追求する内容だ。
このうち軸となるのは、憲法に自衛隊の存在規定を明記する内容だ。同案を発表する前の2017年、安倍首相(当時)は平和憲法の核心である9条の他の内容はそのままにして、自衛隊の存在規定を明記する記述だけを追加することを主張した。当時、安倍首相が掲げた名分は「自衛隊は違憲」という一部の主張に終止符を打つことだった。これについては、武力行使の禁止など9条の核心的内容を修正することは事実上難しいと認めた「現実的なアプローチ」だった。自民党は野党時代の2012年、天皇を国家「元首」と規定し、自衛隊を「国防軍」に変える憲法改正案草案を作ったが、国粋主義色が強すぎるという理由で世論の叱責を受けた。
現在、自民党が推進している憲法改正案は、ひとまず現実的に存在する自衛隊の存立根拠を憲法に明記しようという内容にすぎない。そのため憲法改正が行われれば、日本が軍国主義国家に変わり、周辺国を侵略するという懸念は的を射ていない。
しかし、韓国の安全保障に少なからぬ負担を与えるのは事実だ。自民党は年内に日本の国家安全保障戦略なども同時に変え、中国や北朝鮮などを直接攻撃できる「敵基地攻撃能力」(反撃能力)を確保し、軍事費を最大で現在の2倍水準まで引き上げる軍備拡張を図っている。北朝鮮がミサイル発射の兆しを見せたとして、日本が韓国と協議せずに北朝鮮を攻撃すれば、朝鮮半島全体が韓国の意思と関係なく戦火に包まれることになる。
また、1947年の施行以後、一文字も変わっていない日本平和主義の象徴が改正されれば、その余波は想像を超えるものになるだろう。中国や北朝鮮、ロシアの脅威を口実に中長期的に平和憲法の本質に当たる条項まで手を入れる可能性がいくらでもある。
10日の参議院選挙で選ばれた議員の3分の2以上は、予想通り憲法改正に賛成していることが確認された。朝日新聞は、東京大学の谷口将紀研究室とともに調査を行ったところ、参議院議員のうち憲法改正に賛成する議員は全体議員の67%だったと、12日付で報じた。全体248人のうちアンケート調査に回答した議員は81%で、各党の議席数に合わせて統計的に補正して分析した結果だと同紙は付け加えた。憲法改正に賛成する議員に必要項目を尋ねると、「自衛隊保有の明記」が78%で最も多く、「緊急事態条項の新設」(74%)が後に続いた。ただし、温度差もはっきり現れている。自民党議員は93%が自衛隊の明記に賛成したが、連立与党の公明党では賛成する議員が14%にとどまった。
日本国憲法を改正するためには、衆参議院に設置された憲法審査会の議論を経て、衆議院では100人、参議院では50人以上が憲法改正案草案を発議しなければならない。以後、両院でそれぞれ3分の2以上の賛成を得て通過した改正案を国民投票にかけ、過半数の賛成を獲得しなければならない。現在、憲法改正の議論は憲法審査会の議論にとどまっている。岸田首相は11日、「秋の臨時国会」を本格的な議論の時期として言及しており、右派政党である日本維新の会の松井一郎代表は10日夜、「3分の2の発議要件が整ったわけだから(衆参両院の憲法審査会で)多数決で決めていく。スケジュールを定めて、国民に判断してもらう」とし、憲法改正への動きを加速すべきだと主張した。自民党の茂木敏充幹事長も10日、「できるだけ早く発議する」と述べた。