政府が日帝強占期(日本の植民地時代)の強制動員被害者に対する賠償問題を解決するために組織した官民協議体が、4日の初会議で発足する。一部の被害者団体が政府の推進手続きについて透明かつ公開の方式で行われていないと批判するなど、協議体は発足前からぎくしゃくしている。2015年に拙速に推進された「慰安婦」合意のように、韓日関係の改善を大義名分としてまたしても被害者に譲歩を強要するやり方になってはならないとの指摘が出ている。
協議体はチョ・ヒョンドン外交部第1次官が呼びかけ、学界や専門家などが参加する。政府が協議体を設置してまで強制動員問題の解決策を探っているのは、表面上は日帝戦犯企業の国内資産強制売却についての最高裁の最終判決が8~9月ごろに出ると予想されるためだ。2018年10月の最高裁の強制動員被害者賠償判決を「国際法違反」と主張している日本は、この間「資産の強制売却は韓日関係の破綻を意味する」と脅している。
より根本的には、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が韓日関係改善を通じた韓米日安保協力の強化を、北朝鮮の核・ミサイルの脅威への対応に向けた外交・安保政策の最重要課題だと考えているためだ。最高裁の賠償判決直後からこう着状態に陥っている韓日関係の正常化の前提として、日本側は強制動員問題の解決を掲げつつ、「韓国政府が解決策を示すべき」だと迫っている。韓米日3国の安保協力の強化のためには韓日関係の改善が必要であり、そのためには強制動員問題が解決されなければならないという日本側の構図を、政府がそのまま受け入れているわけだ。
韓米日安保協力についての3カ国の認識には差がある。先月29日、スペインのマドリードでのNATO(北大西洋条約機構)首脳会議を機に4年9カ月ぶりに実現した3カ国首脳会議で、米国は北朝鮮の核問題を含めたインド太平洋全般での3カ国の協力の重要性に言及した。3カ国の安保協力を朝鮮半島に限ることなく、中国をにらんでインド太平洋全域へと拡大するという意味だ。
日本は、韓米日共同軍事演習や日本の集団的自衛権の行使などを強調した。基本的に、朝鮮半島にとどまらない3カ国安保協力の範囲拡張という米国の立場に同調しつつも、国防力強化などの自国の安保的要求を貫徹しようとの意図がうかがえる。
一方、韓国は、北朝鮮の核問題への対応のための3カ国安保協力を強調した。大統領室は首脳会議直後に資料を発表し、その中で「3カ国首脳は、北朝鮮の持続的な核・ミサイル計画の進展が朝鮮半島だけでなく東アジアと国際社会にとって深刻な脅威になるということで認識が一致した」とし「韓米日安保協力がこの日をもって復元された」と語った。
大統領室のこのような主張は、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代には韓日関係のこう着の中で揺れていた韓米日安保協力体制が、尹錫悦政権になって正常化したという「違い」を浮き彫りにするためのものとみられる。結局、「3カ国安保協力の復元」という国内政治上の効果に傾倒し、その前提である韓日関係の改善のために日本が要求した強制動員問題解決用の官民協議体を慌てて推進するかたちとなっている。(社)日帝強制動員市民の会が先月30日に記者会見を行い、政府による協議体の会議への出席要請を拒否すると宣言したのも、このような構図の「添え物」となることを懸念したためだ。
専門家は「韓日関係の改善と韓米日安保協力を別の問題として扱う『ツートラックのアプローチ』が必要だ」と指摘する。日本の外交・安保政策の専門家である統一研究院のイ・ギテ平和研究室長は、「朝鮮半島にとどまらない3カ国安保協力は、国益に即して細かく問うべき部分が多い」とし、「北朝鮮の核・ミサイルへの対応のための3カ国安保協力は急がれるかもしれないが、他の部分では、3カ国協力の復元は可視的な違いを作り出せない可能性がある」と指摘した。政府が韓日関係の改善を大義名分として、国内的合意を経ずに強制動員被害者賠償問題の解決策の立案を急ぐ理由はないという意味だ。