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金正恩「ワクチンなし」の封鎖防疫を固守…人口の3.2%に発熱症状

登録:2022-05-16 04:51 修正:2022-05-16 16:21
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が12日、国家非常防疫司令部を訪れ、コロナ防疫の実態を点検し、対策を指示している/朝鮮中央テレビ・聯合ニュース

 北朝鮮で新型コロナウイルスが急速に拡散している。14日現在、北朝鮮の累計有熱者(発熱症状の見られる人)数は80万人を超え、累計死者数は40人を超えている。

 朝鮮労働党の中央委機関紙「労働新聞」は15日、「国家非常防疫司令部の通知」を根拠に、「13日夕から14日18時までに、全国的に29万6180人の有熱者が新たに発生し、15人が死亡した」と報じた。同紙は「4月末から14日18時現在までの全国的な有熱者総数は82万620人、死者総数は42人」と伝えた。

 12日に行われた金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記兼国務委員長主宰の労働党中央委第8期第8次政治局会議で、コロナ感染者(オミクロン株感染者)の発生を初公開してからわずか3日で、人口(2020年末現在2537万人、統計庁)の3.2%が「発熱症状」を示していることを確認したのだ。北朝鮮でのコロナ拡散は、北朝鮮各地の72の軍部隊など数万人が動員された「朝鮮人民革命軍創建90周年軍事パレード」(4月25日、金日成広場)など、4月中旬から下旬にかけて平壌(ピョンヤン)で集中した大規模な政治イベントが火種となった可能性が濃厚だ。2020年1月末以降、2年以上にわたって国境を閉鎖し、「コロナ清浄国」であることを最大の功績として掲げてきた金正恩総書記としては、危機管理能力が試されている格好だ。

 北朝鮮の防疫当局「国家非常防疫司令部」が今までに発表したおおよその統計値だけを見ても、コロナ拡散がはっきりと分かる。発熱症状の見られる人はおよそ35万人(4月末~5月11日)→1万8000人(5月12日)→17万4400人(5月13日)→29万6180人(5月14日)で、累計82万620人あまり。死者は6人(4月末~5月12日)→21人(5月13日)→15人(5月14日)、計42人だ。隔離(治療中)はおよそ18万7800人(4月末~5月12日)→28万810人(5月13日)→32万4550人(5月14日)と増えている。ただし、発熱症状の見られる人の数は、12日から13日の間には9.7倍と大きく増加した一方、13日から14日の間では1.7倍と、増加が鈍化している。

 金正恩総書記は14日に行われた労働党中央委政治局協議会で、「現状況は地域間での統制不能な伝播ではなく、封鎖地域と当該単位内での伝播」であり、「ほとんどの病気の経過は順調だ」と述べているが、この数値が根拠になっているようだ。

北朝鮮の新型コロナの状況 //ハンギョレ新聞社

 問題は、北朝鮮の統計値がどれほど現実を反映しているかだ。北朝鮮が発表した数値は、発熱症状の見られる人と死者の増加はいびつな曲線を描く。感染者数と感染率も発表していないが、これはわざと数値を隠蔽したというより、PCR検査機器や物資の不足などの事情の厳しさのせいだろう、というのが専門家たちの評価だ。北朝鮮当局がこれまでに「確定感染」を発表したのは、オミクロン株の感染により死亡した1人のみ。北朝鮮の防疫当局が状況を正確に把握することも対処もできずにいるとの懸念があふれているのもこのためだ。

 北朝鮮の保健医療システムは世界平均を大きく下回る。重症急性呼吸器症候群(SARS)などの以前の世界的な感染症の流行においても、北朝鮮の対応は「国境封鎖」程度だった。そのうえ住民の栄養状態も悪い。コロナ拡散を防ぐためには外部の「ワクチンと医薬品」の提供が絶対的に必要だと防疫専門家たちは指摘する。

 にもかかわらず金正恩総書記は「人民大衆第一主義の政治と一心団結した人民の力は、防疫大戦において勝利する最も威力のある担保」とし「ワクチン接種のない封鎖防疫」基調をむしろ強化する態勢をとる。「労働新聞」は14~15日、咳が出たら蜂蜜をなめる▽コーヒーは飲まない▽柳の葉を煎じて飲む、などの民間療法を紹介したほか、金総書記が「常備薬品を本部党委員会に納める」として医薬品を提供したことを報道している。

 同紙は15日、「現在までに134万9000人あまりが衛生宣伝、検兵検診、治療事業を開始し、有熱者と異常症状のある人をもれなく訪ね、徹底的に隔離して治療対策をとっている」と伝えた。

 加えて注目されるのは、金総書記が14日の労働党政治局協議会で「中国党と人民が悪性伝染病との闘争ですでにおさめた先進的で豊かな防疫の成果と経験を、積極的に学んだ方が良い」と強調したこどだ。上海封鎖のように、地域封鎖と隔離を核とする中国の「ゼロコロナ」政策を手本とする一方、中国政府に「支援」を要請する余地を残した発言だと解釈される。

 中国外交部の趙立堅報道官は12~13日、「中国はいつでも北朝鮮がコロナに立ち向かえるよう全力で支援し、助ける準備ができている」とし、「要求にもとづいて支援と助けを提供する」と述べた。北朝鮮が支援を求めれば、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権ではなく中国政府を選ぶ可能性が高いとの解釈が示される部分だ。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1042887.html韓国語原文入力:2022-05-15 15:57
訳D.K

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