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[寄稿]文在寅と尹錫悦の時代の先にやって来るもの

登録:2022-05-05 03:03 修正:2022-05-05 08:09
2019年7月25日、文在寅大統領が当時は新任の検察総長だった尹錫悦次期大統領に任命状を授与した後、懇談会場に向かう様子/聯合ニュース

 数日後には尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が就任する。新政権が発足してもいないのに、早くも大統領執務室の移転、閣僚候補者の脱法・不正、60代の大金持ちの男性や元検事や大統領の親友で埋めた人選など、様々な問題が浮き彫りになっている。文在寅政権の偽善、特権、不公正を激しく非難することで握った権力ではあるが、いま国民は「公正と常識」どころか、韓国社会の真の巨大権力の実体を見ている。

 性暴力対策を求める女性たちを嘲笑し、移動の自由を望む障害者たちを攻撃し、子どもを保護するミンシク法を緩和し、労災対策である重大災害処罰法は企業を萎縮させるとして手を加えようとするなど、そのあらゆる態度に共通しているのは、社会的弱者に対する非難と蔑視だ。私たちのほとんどは、それぞれがある面では社会的弱者ではないのか。これは国民の多数を排除する政治だ。

 このように上流層、権力層が自分たちだけの世界を隠すことなくあらわにしているという点で、尹錫悦政権は李明博(イ・ミョンバク)政権初期によく似ている。(李明博政権で)政権引き継ぎ委員会が「オレンジではなくオーリンジと発音するよう教える英語教育」を国政目標に掲げ、米国では販売できない牛肉の部位を韓国が輸入することに国民が反対するのに対し大統領が「不安なら韓牛を買って食べろ」と発言した。その“純真無垢な階級性”が類似している。

 このような類似性は構造的なものだ。韓国の保守は弾劾後「進歩もまったく同じだ」という免罪符の発行に没頭したために、反省と刷新がなかった。ただし変身はあった。30代の党代表を選び、「青年」、「MZ世代」、「20~30代」を掲げてマイクも握らせた。ところがその青年たちは女性嫌悪の先頭に立ち、その党代表は今は性接待疑惑で懲戒の危機にある。結局は、古い権力の復帰へと向かうための迂回路だったのだ。尹錫悦時代は、すべてを弾劾以前に戻そうとする力と、それに抵抗する力が衝突し続ける時期になるかもしれない。

 しかし、越えるべき壁は大統領と検察の権力だけではない。この時代の最大の絶望は、もしかすると、あらゆる善なる価値と変化を目指す努力が疑われるようになったことにあるのかもしれない。民主主義、正義、平等、公正、連帯、これらすべてが嘲笑の対象となった。いま私たちは、どのような言語でより良い未来を語るのか。

 弾劾同盟の解体は、韓国社会に無規範と価値の混沌、あらゆる権威の没落をもたらした。ろうそく集会が続いていた時期、朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾に賛成する世論は80%を上回り、文在寅(ムン・ジェイン)政権初期には大統領を評価するとする率も80%に達していた。理念、階層、地域の違いを越える全国民的支持と期待があったのだ。しかし、あれほど高揚していた希望が現実において裏切られた後、空いたその場所には幻滅と嫌悪の集合感情が入り込んだ。住宅価格の暴騰、政治家による強制わいせつ、ダウン契約書(実際の取り引き価格より低い価格を記載した契約書)はろうそくのオーラとは共存できない。

 この過程は意外と着実に進んでいた。民主党の支持率と文在寅政権の政策に対する肯定的な世論は、この5年のあいだ右肩下がりだった。その中で2018年と2020年の2回、一時的に世論が好転したが、それは南北首脳会談と新型コロナウイルスへの初期対応の成功という例外の結果だった。まさにその時に地方選挙と総選挙が実施され、与党は圧勝した。この勝利が毒となった。社会の根底に徐々にひびが入り、崩れ落ちつつあることが見えないように、この勝利が目隠ししたからだ。

 尹錫悦政権の誕生は、このすべての不幸な過程の結末だ。二大政党の支持層は、各自の信念と善悪の物差しで現実を見るだろうが、今の韓国社会と政治の最も深い危機は、民主党も国民の力も進歩も保守も、その陣営の中心にいる人々同士は熱い情熱で団結していようとも、もはや多くの人の心に触れて共感と信頼を得ることができていないというところにある。したがって尹錫悦の時代を乗り越えようとするあらゆる努力は、文在寅の時代をも越えなければならない。

 労働者詩人ペク・ムサンの詩集『道の外の道』を改めて広げてみる。「私が育てた畑に雑草ばかり生い茂っている/私が植えて芽を出したのは/日陰で日差しも浴びられなかった/雑草だけが花を咲かせていっぱいだ/私が育てたものはつぼみも結べなかった/私が夢見てきたものはどこへ行った/見知らぬものばかりが私の畑に根を下ろした」。それでも詩人は言う。「それでもあれはすべて私の畑に咲いた花たち」。文在寅と尹錫悦の時代の先には、何があるのだろうか。何がやって来るべきなのだろうか。やって来るのだろうか。

//ハンギョレ新聞社

シン・ジヌク|中央大学社会学科教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1041399.html韓国語原文入力:2022-05-03 15:53
訳D.K

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