現代自動車が英プレミアリーグのチェルシーとのスポンサー契約を一時停止し、ロシア制裁の動きに加わった。しかし、現代自動車は世界の自働車メーカーがロシアを糾弾し、現地市場から手を引いている中でも、ロシア工場についてはこれといった立場を示していない。
ロイター通信など海外メディアによると、現代自動車欧州法人は12日(現地時間)、声明書を発表し、「今後告知があるまでクラブ(チェルシー)とのコミュニケーションとマーケティング活動を暫く中止するという決定を下した」と発表した。現代自動車は2018年6月、チェルシーとスポンサー契約を交わした。選手団のユニホームの袖や競技場内の広告看板に会社のロゴを提出する一方、チェルシーと共に幼少年サッカーキャンプを開催するなど、マーケティングにも積極的に活用している。現代自動車の年間スポンサー契約金額は1千万ポンド(約160億ウォン)と知られている。
現代自動車がチェルシーへのスポンサー契約を一時停止したのは、ロシアのウクライナ侵攻のためだ。英国政府は10日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の側近とされるチェルシーのオーナー、ロマン・アブラモビッチ氏を制裁リストに加えた。さらに、プレミアリーグは彼のディレクター資格を剥奪すると発表し、現代自動車もスポンサー契約の一時停止の決定を下した。
現代自動車は英国で積極的な対応に乗り出す一方、ロシア市場では目立った動きを見せていない。世界の自動車業界がロシア市場から手を引き始めたのとは対照をなしている。フォードは、ロシア内での合弁会社の運営を中止することにしており、GMやボルボ、トヨタ、マツダなどは輸出中止を宣言した。現代自動車がほかの自働車メーカーのように直接的な行動に出られないのは、ロシア内需市場で占める割合が大きいからだ。昨年、起亜自動車と現代自動車はロシア市場でそれぞれ20万5801台、17万1811台を販売し、ロシア独自のブランドの「ラーダ」に続き2位と3位を占めた。現代自動車と起亜自動車を合わせるとシェアは約23%に達する。
このような成果は、現代自動車がこれまでロシア市場の拡大に向けて力を入れてきたことによる結果だ。現代自動車は2011年からプーチン大統領の故郷であるサンクトペテルブルクに年間生産量23万台規模の工場を設立して運営している。2014年のロシアのクリミア半島併合後、世界の自働車メーカー各社が撤退した時も、損失を甘受してまでロシア市場を諦めなかった。2020年にはGMから年間10万台を生産できる現地工場を買収し、市場拡大の意志を示した。現代自動車としては、これまで築いてきたロシア市場でのシェアを簡単に諦められない状況だ。
西欧企業の相次ぐ事業撤退に対するロシア側の強硬な対応も、今後の対応に影響を及ぼすものとみられる。プーチン大統領は10日、国営メディアを通じ「生産を中止しようとする者に断固とした行動を取らなければならない。外部の経営陣を導入し、これらの企業を働きたい人に渡す必要がある」としている。
ただし、現代自動車は1日からサンクトペテルブルク工場の稼動を中止した。再稼働の時期はまだ決まっていない。現代自動車側は、稼動中止の公式的な理由として、物流難による自動車部品の需給困難を挙げているが、国際協力の流れにある程度加わるための動きだという分析もある。大林大学自動車学科のキム・ピルス教授は本紙の電話インタビューで、「現代自動車がロシア工場の生産を中止し、国際制裁の流れに同調しているが、それより鮮明な意見を出すのは難しいだろう」とし、「(中止による)被害を最小限に抑えながら、他のグローバル市場を開拓するのが重要だ」と述べた。