24万7077票、0.73ポイント差。選挙で示された民心は絶妙だった。有権者は次期大統領に当選した尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏にも、共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補にも支持を集中させず、過去最も僅差の薄氷ドラマを演出した。両候補ともにしっかりとした政策ビジョンを示せない中で、ネガティブ戦ばかりに没頭した結果、有権者はどちらにも投票を集めない方式で「牽制球」を投じたとの評価がある。
有権者は、大統領選挙を通じて尹氏が圧倒的票差で政権を取れば暴走するのではないかという不安を示したとみられる。慶煕大学フマニタスカレッジのキム・ユンチョル教授は「市民はロシアのウクライナ侵攻などを見て、安保や平和問題が単純なスローガンの問題ではないと考えるようになった」として「だが尹氏の姿勢を見て、協力しようとの姿勢もなく、単独で国政をうまく運営するだろうという期待をしなくなったものとみられる」と話した。北朝鮮が今年に入って9回もミサイルを発射し、ロシアがウクライナを侵攻して、外交安保と世界経済の不確実性がますます大きくなっているが、尹氏は選挙運動期間にそれに対する代案と解決法を提示するのでなく、政府・与党を「運動圏勢力」と規定し暴言とも言える時代錯誤的な「理念論争」と「陰謀説」で一貫した。
また、最大野党「国民の力」のイ・ジュンソク代表に代弁される「ジェンダー分断」と政治的見解が異なる勢力に対して一貫して皮肉で対応する「傲慢な」政治に対しても警告状を送ったとの指摘もある。選挙序盤にはイ・ジュンソク式の「イデナム」(保守化したと言われる「20代男性」を縮めた新造語)マーケティングが、保守言論などにより保守政治の変化と持ち上げられ、女性の民心は水面下に沈んでいた。だが選挙後半に、イ・ジュンソク式分断が一層露骨化し、尹氏がこれを受け入れるとの立場を繰り返し明らかにするに至って、不安を感じた20・30代の女性が李候補側に結集する現象が現れた。政治評論家のキム・ミンハ氏は「嫌悪に便乗する傲慢な政治は成功できないことを示した」とし「このような成功できない政治を放棄せずに継続するなら5年後には反対側への政権交替が再現されるだろう」と述べた。キム・ユンチョル教授も「韓国の国民的情緒は、権力が傲慢なことを強く嫌うが、イ・ジュンソク代表がそうした部分を刺激した側面がある」と語った。
李候補と民主党も、20・30代の女性と湖南(ホナム)の圧倒的支持を受けながらも政権交替論に打ち勝つだけのビジョンを示せず、圧倒的支持を受けることに失敗した。特に、チョ・グク元法務部長官に対する捜査やチュ・ミエ前法務部長官と尹錫悦当時検察総長の対立状況で、民主党がネロナムブル(自分がやるのはロマンスだが他人がやるのは不倫=自分は棚にあげて他人を非難すること例え)式の独善政治を見せ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がこれを傍観する政治をみせたが、李候補がこうした状況を克服するリーダーシップを示せずに新しさを前面に出せなかったということだ。評論家のキム・ミンハ氏は「李候補は推進力や決断力に秀でているという点で文在寅政権や民主党のそうした問題を突破できる政治家とみられていたが、大庄洞(テジャンドン)特恵開発疑惑に火が点いて、推進力と決断力が良い結果ばかりをもたらすわけではないとの認識が生まれた」と話した。
今回の選挙で最大の争点になった大庄洞特恵開発疑惑を最後まで克服できなかった点も、李候補が薄氷の勝負から抜け出せなかった重要な原因になった。キム教授は「李候補が大庄洞疑惑で既得権層の談合構造を破れなかったことを認め、これを廃止することを国家的ビジョンとして掲げるべきだったのに、成果に基づく有能さなど実用的側面でのみアプローチし、これを克服できなかった」と述べた。
二大政党はともに選挙期間を通じて革新する姿勢やビジョンを提示せず、ネガティブと理念論争に没頭した点も、有権者が双方に圧倒的な支持を送らない理由になった。政治コンサルティング「ミン」のパク・ソンミン代表は、「民主党は昨年4月7日の補欠・再選挙で敗北した後に省察と変化が求められたのに、それもできなかった」として「今回の選挙を通じて尹氏の家族に対するネガティブ攻勢で一貫し、支持層を結集するキャンペーンばかりをした」と指摘した。彼は「尹氏もまた、政権審判論ばかりを叫び、自身がなぜ大統領にならなければならないのかについては説明できなかった」として「両者とも相手にだけ変われと叫び、自らは革新しようとしなかったため、両者ともに有権者の多くの支持を得られなかった」と話した。