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[コラム]韓国の次期大統領、外交安保が心配だ

登録:2022-02-08 01:52 修正:2022-02-08 08:42
3日、ソウルのKBSのスタジオで、正義党のシム・サンジョン、共に民主党のイ・ジェミョン、国民の力のユン・ソクヨル、国民の党のアン・チョルスの各候補(左から)が、地上波放送3社共催の大統領候補討論の前に記念撮影を行っている=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 一方的な公約とネガティブがあふれていた選挙戦において、先週の4者テレビ討論は、大統領候補の国家運営能力を少しではあれ見極めうる機会だった。討論後は我田引水式の総評が相次いだが、私が個人的に最も残念だったのは外交安保分野だった。

 30分にわたる外交安保討論は、時間、形式、内容、すべてにおいて非常に不十分だった。4つの分野の中でも、候補者たちの水準が最も貧弱なのではないかと思う。外交の百年の計も、首尾一貫したディテールもなかなかうかがえなかった。誰がなろうと、次の大統領のリスクの一つは外交安保ではないかという気さえした。

 国民の力のユン・ソクヨル候補の討論内容は、様々な面で心配になった。本人の意見なのか他人に書かせたものなのか分からないうえ、その内容は空虚なスローガンに近かった。支持率1位を争う野党第一党の候補の構想としては、粗削りに過ぎるように思えた。

 ユン候補の主張は、簡単に言うとTHAAD(高高度防衛ミサイル)追加配備で中国と対峙するとともに、先制攻撃論で北朝鮮と対決姿勢を強めて米国と仲良くするというものだが、現実的でもなく望ましくもない。米国との同盟を優先視することに対しては何も言うべきことはない。しかし、韓国があえて中国や北朝鮮に対して攻撃的な態度を見せつけるべきではない。

 さらに大きな問題は、THAAD配備などのフェイスブックの短文公約の根がどこにあるのかということだ。ユン候補の外交安保に対する中身のなさによるものなのか、それともイ・ジュンソク代表流の薄っぺらな安保ポピュリズムなのかを問わなければならない。ユン候補が国民の力の強硬派に囲まれ、「安保屋」を演じているのではないかということだ。

 討論で学習の跡を見せたことと、大統領として外交安保の資質を備えていることとは別だ。キム・ジョンイン氏が前に述べたように、ユン候補は他人に書かせたスローガンで「演技」することで良い目を見ているのかもしれないが、結局は小利をむさぼって大利を失うことになりかねない。一回の討論でも実現可能性に疑問が生じる極右安保公約で国民との目線を合わせるのは難しい。

 共に民主党のイ・ジェミョン候補も期待に応えられなかった。「政権を獲得すれば米国・中国・日本・北朝鮮の首脳にはどの順番で会うか」との問いに、イ候補が実用外交を強調しつつ「その時になって決める」と述べたのはやや物足りなかった。「現実的に米国のジョー・バイデン大統領にまず会うことになるのではないかと思う」と蛇足のように付け足していたなら、原則論と現実論がある程度合致したはずだ。

 イ候補が、韓米同盟の規定性についてどれほど熟慮しているのかは疑問だ。韓米同盟は韓国にとって経済と安保の基本軸であると同時に、自由と人権、民主主義という価値のパートナー関係でもある。陳腐な米国追従主義ではなく、現実に密着して韓米同盟の未来志向性を考えるべきだという話だ。

 イ候補は他の分野とは異なり実用外交、バランス外交という原則論を繰り返したが、経済と国民生活に比べて外交安保では相対的に準備が不十分なのではないかと思った。

 国民の党のアン・チョルス候補は概して右派を示しつつも、自分のカラーを出すことはできなかったように思う。文在寅政権が制定したTHAAD配備に関する「3不政策」の廃棄、韓米核共有協定などで保守色を示したが、次世代戦闘機事業などを重視しつつ外交安保の全体像を示すことはできなかった。

 正義党のシム・サンジョン候補は考えが明確でディテールにも比較的強かった。この分野ではシム候補がむしろ目立った面もあった。THAAD追加配備の不合理性などを鋭く指摘した。ただ、独自の平和外交の具体像は提示できなかった。

 次期大統領は、任期中に北朝鮮核問題の波が激しくなり、対決か妥協かの大きな岐路に立たされる可能性が高い。それだけに指導者の力量が重要な時期だ。

 周辺国の首脳の面々を見ると、心配の方が先に立つ。外交で長年の経験を積んだバイデン大統領、9年を経てなお長期政権態勢の中国の習近平主席、外相としての経験を持つ日本の岸田文雄首相、11年目の北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長に至るまで、誰もが老獪だ。彼らにとって、次の大統領は経験のない素人大統領に見えるはずだ。

 金大中(キム・デジュン)元大統領以降、外交大統領が出ていないのは民族的不運だ。大統領選挙で誰が当選しようと、まともな外交大統領の登場は期待できそうにもないため心配だ。杞憂であることを願うばかりだ。外交がしっかりしていなければ、G10、G5を云々することは不可能だ。しっかりとした外交で南北共生の経済共同体を構築できなければ、民族的飛躍を期待することは困難だ。

 せめてこれからは、何とか外交力を結集しなければならない。各大統領候補は、今からでも責任感と自制力、長期的な外交ビジョンを示さなければならない。外交安保に関する徹底討論を改めて開催し、違いを明確にしするとともに接点を見出さなければならない。そうすることで超党派的な外交の道を少しずつ築いていかなければならない。

//ハンギョレ新聞社

ペク・キチョル|編集人 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1030028.html韓国語原文入力:2022-02-07 15:02
訳D.K

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