今月15日に起きた南太平洋トンガの海底火山噴火の影響が、1万キロ以上離れたペルー沖にまで影響を及ぼし、原油流出事故が発生した。深刻な環境汚染が懸念されている。
ペルー政府は19日、先週末スペインのエネルギー企業レプソルの精油施設で原油を荷下ろししていたタンカーから6000バレルの油が流出した後、被害が広がっていると明らかにした。事故当初は流出した油が首都リマ市周辺の海岸の一部にのみ影響を及ぼしたといわれていたが、その後、被害面積が1万8千平方キロメートルにまで増大したと、ロイター通信などが報じた。ペルー環境部は前日、トンガの海底火山の噴火で発生した津波に見舞われたタンカーから油が流出し、周辺海域に広がっていると明らかにした。
原油の拡散が予想よりも大きくなり、2カ所の自然保護地域の動植物が危険にさらされており、漁業者も深刻な被害を受けている。ペルー環境法学会のクリステル・シェスケ環境保存専門家は「被害地域は、ペルーの海岸の中でも生物多様性が非常に豊かな地域」だとし、「原油流出が生態系と社会に長期的・短期的に大きな衝撃を与える」と指摘した。ソーシャルメディアなどには黒く汚染された海辺や、油まみれになって死んでいる鳥の写真などが掲載されている。原油流出で死んだ鳥の中には、ペルーとチリの海岸に棲息する希少種であるフンボルトペンギンもいると、英紙「ガーディアン」が報道した。
ペルーのミーシャ・バスケス首相は19日、記者団に対して、レプソルには原油流出に対応する緊急計画がないことが明白だと述べた。外務省はレプソルに被害補償を要求した。外交部はツイッターで「今回の事態はリマ周辺で発生した最悪の環境災害」だとし、「レプソルは直ちに被害補償に取り組まなければならない」と指摘した。環境部は前日、レプソルに対し、2日以内に被害地域を把握し、10日以内に油の処理を済ませるよう要求し、レプソルは最高3450万ドルの罰金を払うことになりうると警告した。しかし、レプソル紙の報道担当は19日、国営のラジオ放送で「われわれが今回の環境災害を起こしたのではなく、この事態が誰の責任なのかは言えない」と主張した。