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ヌリ号、「未完の成功」で祝杯は来年に持ち越し…世界は「ニュースペース」時代へ

登録:2021-10-23 06:03 修正:2021-10-23 07:13
韓国政府は2030年まで韓国型ロケットで月着陸船を打ち上げることを目標にしている//ハンギョレ新聞社

 ヌリ号打ち上げ成功の祝杯をあげるのは来年に持ち越されることになったが、だからといって韓国の宇宙開発の青写真が変わるわけではない。

 世界の宇宙競争はもはや逆らえない大きな流れになった。2010年代以降、宇宙産業に集まる資金が急増している。投資情報会社のスペース・キャピタルによると、今年第3四半期までの宇宙企業への民間投資額は100億ドルを超えている。これは史上最高だった昨年の98億ドルよりも多い規模だ。

 ちょうど韓国の宇宙開発を妨げてきた足かせも外れた。1979年以降、発射距離と搭載重量に制限を加えてきた韓米ミサイル指針が5月に終了したためだ。

月軌道線の想像図=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

■政府の計画は?

 韓国政府はすでに変化した状況を反映し、今年6月に第3次宇宙開発振興基本計画を修正した。同計画で力点を置いているのはヌリ号の信頼性の確保だ。2020年に全世界で打ち上げられたロケット114機のうち10機が失敗するほど、信頼性は最優先課題だ。4回の打ち上げのために6800億ウォン(約660億円)を投入する理由がここにある。

 ヌリ号で月探査船を打ち上げるためには、ヌリ号の性能を高める高度化作業が必要だ。ヌリ号も500キログラムの小型搭載物は月まで送ることができるが、探査機能が可能な着陸船を送るためには、新たな飛翔体の開発が不可欠だと専門家らは指摘する。しかし今年6月の予備妥当性検討で、ヌリ号エンジンの高性能化案はひとまず留保された。

 政府は代案としてヌリ号上段にアポジモーター(軌道投入に使われる推進装置)を追加する案を検討している。ヌリ号で月探査船を地球の低軌道に送った後、ここでアポジモーターで月軌道まで投入できるという計算だ。どんな宇宙プログラムを企画するかによってヌリ号の未来が変わる。

 ミサイル指針以降、中止されていた固体燃料ロケットの開発も再開される。政府は、2024年までに小型固体燃料ロケットを開発する計画だ。固体燃料ロケットは、ヌリ号のような液体燃料ロケットより構造が単純で、低コストの短期打ち上げに適している。政府はこのような点を反映し、固体燃料ロケットの開発は企業中心に推進することにした。KAIST航空宇宙工学科のアン・ジェミョン教授は「今後はヌリ号のような国家主導の高性能ロケットと民間中心の小型ロケットというポートフォリオを備え、それぞれの需要に対応する必要がある」と述べた。

韓国型衛星航法システムは、8基の衛星で構成される=韓国航空宇宙研究院提供//ハンギョレ新聞社

 これまで数回見送られてきた月探査は来年からスタートする。まず来年8月、韓国型月軌道探査船(KPLO)が、米国のスペースX社のロケットに搭載されて打ち上げられる。月軌道船は来年末に軌道に到着した後、月上空100キロメートルの軌道を回り、1年間探査活動を行う。総重量678キログラムの月軌道線は今月末までに組み立て作業をすべて完了する。

衛星を軌道に乗せた後、地上に戻ってくるスペースX社のファルコン9ロケットの1段目=スペースX提供//ハンギョレ新聞社

■変化する国際宇宙産業環境

 韓国がヌリ号の開発に取り組んでいる間に、国際宇宙産業の環境は大きく変わった。政府の代わりに民間企業が宇宙技術と産業の主役に浮上するニュースペース時代を迎えた。体制や国力競争の一環として行われてきた宇宙開発でも、低コストと高効率が重要視される時代になった。

 現在、世界の飛翔体市場の最大の関心事は、ロケットの再利用技術だ。ロケットを再利用すれば、コストを大幅に下げることができる。独歩的な技術力を保有するスペースX社は、再使用のための1段目ロケットの回収記録が100回を越える。1機のロケットを最大10回まで打ち上げた。ロケットの1段目は全体ロケット打ち上げ費用の60%を占める。低コストを売りに世界の飛翔体市場のシェア20%を占めている。中国は独自に、日本はドイツやフランスと共に再使用技術の開発を始めた。

ロケットラボの小型衛星打ち上げ用ロケット「エレクトロン」=ロケットラボ提供//ハンギョレ新聞社

 技術は確保したものの、「成功の祝杯」をあげられなかった韓国としてはまだ道のりは遠い。ヌリ号は小型ロケットだった羅老(ナロ)号より性能がはるかに優れた中型ロケットだ。しかし、主要国の主力ロケットに比べれば、10分の1にも及ばない。

 もう一つの関心事は、小型衛星市場を狙ったロケット開発だ。小型化技術の発展に伴い、500キロ未満の小型衛星打ち上げの需要が急増している。特に、低軌道群集衛星を利用した通信ネットワークの構築が主要国による競争の舞台になった。市場調査企業らは2020年の28億ドル(3兆3千億ウォン)から2030年には137億ドル(16兆1千億ウォン)へ市場が拡大すると予想している。

 しかし、韓国には民間企業が小型ロケットを開発しても、これを打ち上げる発射台がない。政府はまず2024年までに、羅老宇宙センターに固体ロケット用民間発射場を構築する計画だ。

世界の主な宇宙ロケット。ヌリ号はの全長は左端のアリアン5号と同じくらいだが、推進力は10分の1に満たない=ウィキメディア・コモンズより//ハンギョレ新聞社

 このような一連の流れは、韓国の宇宙政策に新たな課題を投げかけている。来年ヌリ号の打ち上げが成功すれば、韓国の宇宙インフラ構築の第1段階は完成する。ヌリ号以降はそのインフラを世界の流れに合わせて効率的に活用し、改良するのが優先課題に浮上するだろう。

 韓国天文研究院のファン・ジョンア責任研究員は最近、韓国科学技術団体総連合会主催で開かれた討論会「韓国宇宙開発の未来」で、「韓国の宇宙開発史はヌリ号以前と以後に分かれる」とし、「ヌリ号以後は技術より目標とビジョンを先に立て、それに合う技術を開発しなければならない」と語った。

クァク・ノピル先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1016201.html韓国語原文入力:2021-10-22 10:56
訳H.J

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