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北朝鮮が軍事パレードに代わり「国防発展展覧会」を開いた理由は

登録:2021-10-13 03:26 修正:2021-10-13 07:50
朝鮮中央通信は12日、北朝鮮が労働党創建76周年を迎え、11日に国防発展展覧会を平壌の3大革命展示館で開幕したと報道した。金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が、国防発展展覧会を見て回っている=朝鮮中央通信/聯合ニュース

 北朝鮮が労働党創建76周年を迎え、国防発展展覧会「自衛-2021」を開催した。北朝鮮がこれまで実施していた軍事パレードではなく展覧会方式で軍事力を誇示したのは、今回が初めて。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長は11日、国防発展展覧会での記念演説で「わが党の革命的な国防政策とその輝ける生活力が集大成された本日の盛大な展覧会は、大規模な軍事パレードに劣らず大きな意義を持つ思弁的な国力示威になる」と述べ、意味を説明した。

 北朝鮮は、過去5年間に開発した主要な兵器をこの日の展覧会の会場に集めた。新型戦車、超大型放射砲、中・短距離ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられるミサイル、大陸間弾道ミサイル(ICBM)級ミサイルなどが登場した。特に、北朝鮮が先月試験発射したと主張した極超音速ミサイル「火星-8型」や、新型反航空(地対空)ミサイルなども目についた。実戦配備された場合、韓国、米国、日本などに脅威を与え得る兵器だ。

 韓国国防部は12日、国防発展展覧会に出された北朝鮮軍の兵器と装備を分析していると明らかにした。国防部のムン・ヨンシク副報道官はこの日の定例会見で「展覧会を通じて公開された装備などについては、すでに韓米の情報当局が分析中にあり、継続的かつ綿密に確認するだろう」と述べた。

 北朝鮮は、昨年10月の労働党創設75周年記念の夜間軍事パレードでも、今回と同じような兵器を公開している。当時の深夜の軍事パレードは極めて刺激的だった。ICBMのような戦略兵器だけでなく、平壌(ピョンヤン)の金日成(キム・イルソン)広場をいっぱいに埋めた22隊の機械化中隊と53隊の歩兵中隊の兵士たちが軍靴を高く上げて行進する場面は、見ている者に威圧感を感じさせた。

朝鮮中央通信は12日、北朝鮮が労働党創設76周年を迎え、11日に国防発展展覧会を平壌の3大革命展示館で開幕したと報道した。金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が、国防発展展覧会を観覧し関係者と握手をしている=朝鮮中央通信/聯合ニュース

 北朝鮮が大規模な軍事パレードの代わりに展覧会を開催したのは、「武力示威」はするが「正常国家」のイメージを強化しようとする意図だとみられる。北朝鮮は、国際社会において日常的な経済活動だと認められている展覧会の形式を通じて、国防力強化の必要性を国内外に対して伝えた。北朝鮮は、外部世界から“挑発”だと思われる軍事パレードのような軍事的行動を避け、最近自らが強調する二重基準(韓国が「北朝鮮のミサイルは挑発で、韓国のミサイルは抑止力」だとみなしているという主張)の撤回要求に力を加えた。

 西側諸国は、特別なケースでない限り、大規模な軍事パレードを行わない。第2次世界大戦後は社会主義圏が軍事パレードを主導し、西側社会では軍事パレードに「時代遅れ」「好戦的」「全体主義」のイメージが刻まれたからだ。韓国も軍事独裁時代の1980年代までは、毎年10月の国軍の日にソウルの汝矣島(ヨイド)で大規模な軍事パレードを行い、ソウルの江北(カンブク)の都心まで軍事パレードを実施したが、90年代の文民政権以降、大幅に縮小したり中止されるようになった。

 大規模な軍事パレードの始まりは旧ソ連だ。第2次世界大戦中の1941年11月7日、ナチスドイツ軍がモスクワまで20キロメートルの地点まで進撃してきた。ソ連の運命が風前のともしびとなった状況で、11月7日にモスクワの赤の広場でロシア革命24周年を記念する大規模な軍事パレードが行われた。派手な軍事パレードを終えたソ連軍は、モスクワ郊外の戦線に駆けつけ、これを見守ったモスクワ市民は強い勇気を得た。当時の赤の広場の軍事パレードは、強力なソ連軍の力を内外に対し誇示し、独ソ戦勝利のきっかけになった。

 第2次世界大戦後に冷戦が本格化すると、ソ連、中国、東欧諸国、北朝鮮などの社会主義圏は、大規模な軍事パレードを軍の士気鼓舞と軍・国民の絆の強化の場として積極的に活用した。軍事パレードのたびに、各種兵器とともに武装した軍人が90度以上に足を持ちあげガチョウのように行進する「ガチョウ足行進」が常に登場した。

昨年10月10日深夜、平壌の金日成広場で行われた労働党創設75周年記念軍事パレードで北朝鮮軍が行進している=朝鮮中央通信/聯合ニュース

 北朝鮮は今回の展覧会を通じて、国防力強化と経済発展効果を同時に狙っている。米国や欧州などは、軍需企業が主管する各種の兵器展示会を年間を通して開催し、武力を誇示し兵器販売の取引をする。韓国も地上軍の兵器展示会、民間・軍兼用の技術博覧会、地上軍フェスティバル、航空ショーを兼ねた国際航空および防衛産業展示会(ADEX)を行っている。

 北朝鮮は展覧会方式を選び、国内外に対し武力誇示の効果を上げながらも、「好戦」「挑発」のイメージから脱しようとしている。遠い先になるだろうが、対北朝鮮制裁が解除され北朝鮮が国際社会に安定するならば、展覧会が北朝鮮の兵器を広報・輸出する「国防経済」のプラットフォームになる可能性もある。今回の展覧会の名称が「自衛-2021」であることから、北朝鮮がこのような展覧会を今後も続けるという意図を読み取れる。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1014821.html韓国語原文入力:2021-10-12 17:07
訳M.S

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