検察の「告発教唆」疑惑を与党側の「工作政治」として押し通そうと、韓国野党「国民の力」が必至に試みている。疑惑が提起された初期から「政治工作」のレッテルを張り、局面の転換を企てていた国民の力とユン・ソクヨル前検察総長は、情報提供者であるチョ・ソンウン元未来統合党(現・国民の力)選挙対策委員会副委員長が、8月11日に国家情報院のパク・チウォン院長と食事を共にした事実が明らかになるや否や、今回の疑惑報道自体を二人の「共謀」だと主張し、大々的な反撃に乗りだした。12日、チョ元副委員長がSBSとのインタビューで「(ニュースバースが告発教唆疑惑を初めて報道した)9月2日は、院長や私が望んでいた日付ではない」と語った部分がユーチューブを通じて公開された後、今回の疑惑を「パク・チウォン・ゲート」と呼び始めた。野党の有力大統領候補を落馬させるために、現職の情報機関のトップが若い政治家とインターネットメディアを動かし「報道工作」をしたということだ。
告発教唆疑惑が報道される前、情報提供者が国家情報院長と二人きりで会っていたことは、軽く見逃せることではない。現職の国会議員時代に「政治九段」というニックネームで呼ばれていたパク院長であるだけに、他の同席者なしに独立した空間で食事をしたとすれば、情報提供者が告発教唆疑惑について助言を求めた可能性は排除できない。
チョ元副委員長は13日、フェイスブックを通じて「パク・チウォン院長はユン総長についての内容を相談する対象としては考えていなかったし、1カ月先の未来である9月2日の報道は、前日でさえ知らなかった事故のような報道だったので、ありえない組み合わせ」だと反論した。パク院長もこの日、本紙の電話取材で「私はそこまで馬鹿ではない。そのような話をしたことはない」と否定した。そのような釈明にもかかわらず、十分に考えられる疑いであるだけに、パク院長が直接、国会情報委員会に出てきて関連内容を詳細に明らかにしたり、捜査機関の調査が行われるのであれば、誠実に臨まなければならないだろう。
しかし、パク院長とチョ元副委員長の対話の内容が何であるのかとは関係なく、検察が告発を教唆したのかどうかが今回の疑惑の本質だという点は変わりない。検察の政治介入と検察権力の私物化の有無に対する徹底的な真相究明が、何より優先されなければならない。
これまでに明らかになった事実を探ってみると、国民の力のキム・ウン議員が、昨年4月15日の総選挙での候補者時代に、ソン・ジュンソン最高検察庁捜査情報政策官(当時)と疑われる検察側の人物から、与党の要人やジャーナリストらに対する告発状とC氏の判決文をテレグラムのメッセンジャーで受けとり、チョ元副委員長らに渡したのは、昨年4月初めのことだ。チョ元副委員長はこれを1年以上保管し、7月21日にインターネットメディア「ニュースバース」の記者に情報提供した。パク院長とチョ元副委員長が会う以前のことであり、無関係のことだという話だ。
ユン・ソクヨル陣営と国民の力指導部も、そのような事実を知らないわけではないだろう。提起された疑惑の本質を、付随的に派生した疑惑を前面に出すことで覆い隠そうとする試みはこの辺でやめて、真相究明のための高位公職者犯罪捜査処(公捜処)による捜査と最高検察庁による調査に積極的に協力しなければならない。そのような点で、10日に公捜処によるキム・ウン議員の事務室の家宅捜索を力づくで妨害し失敗させた国民の力が、13日には比較的素直に令状執行に応じたのは、当然のことだ。
パク・チウォン院長の振る舞いも調べて確認せざるを得ない。国内政治への介入が厳格に禁止されている国家情報院のトップが、政治家時代からの知り合いで交流を続けている政界やマスコミの関係者と頻繁に会って食事をすることは不適切だという指摘は避けがたい。パク院長も、今後はすべての言動によりいっそう慎重な姿勢を示さなければならないだろう。