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「悪の枢軸」とされた北朝鮮、核開発の封印解いた―9・11が朝鮮半島に及ぼした影響

登録:2021-09-11 06:08 修正:2021-09-17 06:58
ジョージ・W・ブッシュ米大統領の中途半端な中東政策で、金大中大統領が力を入れて進めてきた太陽政策は大きな打撃を受けた=ハンギョレ資料写真//ハンギョレ新聞社

 イスラム原理主義テロ組織アルカイダが2001年9月に行った猟奇的なテロは、米国の中東政策だけでなく、地球の反対側にある朝鮮半島情勢に言葉では言い表せないほど複雑な影響を及ぼした。

 2001年1月に就任したジョージ・W・ブッシュ大統領は、前任のクリントン大統領が金大中(キム・デジュン)大統領に主導力を譲って積極的に進めていた北朝鮮政策を大々的に修正した。ブッシュ大統領を取り囲んでいたネオコンの影響を懸念した金大統領は、普段5~6月に開かれていた韓米首脳の初会談の日程を3月初めに繰り上げて説得に乗り出したが、結局失敗した。この光景を見守っていたドナルド・グレッグ元駐韓米国大使は、回顧録『歴史のかけら』で、「北朝鮮に対するブッシュ大統領の理念的で誤ったアプローチは、韓米が協力して北朝鮮との新しい関係のために用意した平壌南北首脳会談(2000年6月)という意義深い発展を、悲劇的かつ不当にも止めてしまった」という鋭い批評を残した。

 しかし、この時まで北朝鮮の核開発は、朝米が1994年10月に結んだ「朝米枠組み合意」によって封印されていた。同時多発テロの大きな衝撃はこの封印を一瞬にして外してしまった。ニューヨークの中心にそびえ立つ世界貿易センタービルが崩壊する光景を目撃したブッシュ大統領は、直ちにアフガニスタンを侵攻し、翌年の2002年1月、一般教書演説で北朝鮮をイラン、イラクとともに「悪の枢軸」と呼んだ。ジェームズ・ケリー国務次官補(東アジア・太平洋担当)は同年10月、平壌(ピョンヤン)を訪問し、高濃縮ウラン(HEU)方式を通じた核開発疑惑を取り上げることで、朝米枠組み合意に死刑宣告を下した。これで北朝鮮の核開発を防いでいた封印が解除され、金大中大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記の6・15南北共同宣言も紙切れになった。グレッグ大使は当時の米国の心境を「民間航空機がわざと平壌の主体思想塔にぶつかって崩れ落ちるのを見たらどんな気分になるだろうか。米国人たちは今年9月11日にニューヨークでこうした経験をした」と説明した。

 以後、北朝鮮核問題は解決不能の道に陥った。北朝鮮はその後6回の核実験を行ない、2017年11月末に米ワシントンを攻撃できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星-15型」の発射実験に成功し、「国家核武力の完成」を宣言した。

 9・11同時多発が朝鮮半島に及ぼしたもう一つの影響は、在韓米軍の「戦略的柔軟性」をめぐる合意だった。米国がイラク戦争の円滑な遂行のため、韓国に駐留する在韓米軍を活用するという「戦略的柔軟性」を要求すると、韓国政府は苦心の末、それを受け入れた。当時盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は2006年1月、「在韓米軍の戦略的柔軟性の必要性を尊重する」と合意した。同合意は15年の歳月が経った今、米中戦略競争で尖鋭化している東アジア情勢の中で、韓国にもう一つの負担を負わせている。ポール・ラケメラ在韓米軍司令官は今年5月の人事聴聞会で、「在韓米軍は米インド太平洋司令官に域外の偶発事態や地域的脅威に対応するため、様々な選択肢を提供できる独特な位置を占めている」と述べた。これは、台湾などをめぐり米中間に武力衝突が発生した場合、いかなる形であれ韓国が巻き込まれる可能性があることを意味する。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1011202.html韓国語原文入力:2021-09-1008:28
訳H.J

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