人に似た「人間型(ヒューマノイド)ロボット」は成功できるのだろうか。
2014年に初の感性認識型ヒューマノイドロボットとの触れ込みで家庭用・商業用として市販され、話題を集めた日本のソフトバンクの「ペッパー」(写真)が、事実上事業化に失敗し、撤退段階にあるというニュースが最近報じられた。一方では、新たなヒューマノイドロボットの開発が発表されている。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(写真)は先月19日、米カリフォルニアのフリーモント工場で年次の人工知能発表イベント(AIデー)を開催し、人間型ロボット「テスラボット」を開発中だと述べ、来年に試作品を発表する予定だと明らかにした。発表会には「テスラボット」の衣装を着たダンサーが登場し、パフォーマンスを披露した。マスク氏は「すでに車輪のついたロボットを作っているため、ヒューマノイドロボットに必要な部品はほとんど持っている」とし「テスラが電気自動車製造企業を越えるものと認識されることを願う」と述べた。
テスラボットは体高177センチ、重さ57キロで成人の体格を持ち、20キロの物を運ぶことができ、時速8キロで動けるとの開発仕様が公開された。頭部には8つのカメラからなる視覚システムが装着されて目の役割を果たし、胸部には人工知能が搭載され、独自開発の半導体(D1)を使ったスーパーコンピューターと連係して作動する予定となっている。マスク氏は「SF映画のディストピアは考えていない」とし「人が避けたがる退屈で反復的で危険な仕事を、テスラボットは代わりに行ったり支援したりすることになるだろう」と述べた。そして「テスラボットは人間によって、人間のために作られる」とし「未来においては肉体労働は選択事項になるだろう」と述べた。
チェコの劇作家カレル・チャペックは、1920年に発表した戯曲「R.U.R.」で「ロボット」という言葉を初めて使った。ロボット(robot)とは、雑用または奴隷状態を意味するチェコ語「ロボタ(robota)」から来た言葉だ。100年前の作家の想像が、イーロン・マスク氏によって現実として具現化されうるのだろうか。
ヒューマノイドロボット開発熱は高いが、成功するかどうかについては見方が大きく分かれている。
■汎用ロボット、人のように用途は「無限」
各種の道具や機械装置は、大半が人による操作を念頭に置いて設計されているため、うまく機能するヒューマノイドロボットが登場すれば、人の活動のかなりの部分を代替したり、支援したりできる。人間型ロボット「ソフィア」を開発したハンソン・ロボティクスの創業者デイビッド・ハンソン氏は、かつて「人に似たロボットは転び、会話ではテーマを忘れ、我々を誤解し、興奮させるほど失望させ、開発者と一般人を挫折させる」とし、「しかし、よちよち歩き段階のヒューマノイドロボットは成長し続けるので育成が必要だ」と述べている。人に似たロボットは人と意思疎通できるという社会的機能を通じて、他の機械が提供できない価値と役割を果たしうる。SF映画のように人間を脅かす人間型ロボットを懸念する段階はまだ遠いように思える。ヒューマノイドロボットはロボット分野にとどまらず、生物学、認知科学、機械工学、人工知能および音声認識、神経科学などの様々な分野での研究開発を促進させるので、広範な科学技術の発達につながるというのが開発賛成論者の見解だ。
■「ヒューマノイドロボットには長所がない」
コンピューターの先駆者アラン・チューリング氏は1951年、「人に似たロボットを作ることは無駄で、非常に不快な結果を招くだろう」と述べ、「ヒューマノイドロボットは作るな」と警告した。『エージェントアプローチ 人工知能』の著者スチュワート・ラッセル氏も最近「ヒューマノイドロボットの問題は、その姿に騙されて我々が人間の特性を与えてしまということ」とし「それ以外にヒューマノイドの長所はない」と述べている。
グーグルのロボット工学者だったロボット事業家ライアン・ヒックマン氏は「ミディアム」への寄稿で、「ヒューマノイドロボットは正しい問題に対する誤った解答」とし「ある作業を自動化するためには、完全な人の形にするよりも、電動鉛筆削りのようなずっと単純な形の方が遂行できる」と述べた。未来の自動車技術の開発も、運転ロボットではなく自動運転車の開発競争として進められている。家庭でも人に似た1台の汎用ロボットではなく、掃除、食器洗い、洗濯、料理などの固有の職務を自動化したそれぞれのロボットを投入するというやり方で自動化が進んでいる。
専門家の多くは、マスク氏の発言は実体のない誇張されたマーケティングに過ぎないとこき下ろしている。CNNやブルームバーグなどの海外メディアは、実体のないイメージだけでマーケティングを繰り広げてきたマスク氏の過去を想起させた。また、別の形のロボットである自動運転車とヒューマノイドロボットを同時に開発するというマスク氏の主張は、基本的に衝突する事業戦略でもある。
2015年に米国防高等研究計画局(DARPA)主催の災害ロボット大会で優勝したヒューマノイドロボット「ヒューボ」を開発したKAIST(カイスト)のオ・ジュンホ名誉教授は、ハンギョレの電話取材に対し「ヒューマノイドロボットを研究してはいるが、実用的な目的でやっているわけではない」とし「人間型ロボットは多目的なので、人間のように何でも試させることができるというのが長所」と述べた。災害状況や宇宙探査のような予測不能な状況において、他の手段がない時にはヒューマノイドの利用価値があるものの、現段階では実用性がないということだ。