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掘っ立て小屋で死んでいった「独立の英雄」洪範図、78年ぶりに故国へ

登録:2021-08-13 03:06 修正:2021-08-14 11:51
1922年のモスクワ極東民族大会に参加した洪範図将軍/聯合ニュース

 「鳳梧洞(ポンオドン)戦闘の英雄」洪範図(ホン・ボムド)将軍の遺体が、今年の光復節を機に、死去から78年ぶりに故国に戻る。洪範図将軍は1943年、祖国の光復(独立)を見ることなく、ソウルから5000キロ離れた中央アジアのカザフスタンの都市クズロルダに埋葬された。

 大統領府は12日、クズロルダに埋葬されている洪範図将軍の遺体が、光復76周年を迎える15日夜にソウルに到着すると明らかにした。旧韓末の1868年、平壌(ピョンヤン)で貧しい農夫の息子として生まれた洪範図将軍は、国運が傾きつつあった1895年、江原道淮陽(フェヤン)で蜂起して日本兵を射殺し、抗日運動を開始した。猟師として生活していた洪将軍は、大韓帝国が乙巳条約や丁未条約などで事実上、日本の属国に転落すると、1907年に猟師を集めて義兵部隊を結成した。その後、30人あまりの日本兵を殺傷した厚峙嶺(フチリョン)戦闘などで、数十回にわたって日本軍と激戦を繰り広げた。親日派の官吏や富豪などを処断し、日本人の金鉱を襲撃して金塊を奪い軍資金とするなど、大胆不敵な活動を繰り広げ、「飛ぶ洪範図」とも呼ばれた。

 1910年8月、庚戌国恥(韓国併合)で国権を奪われた後、洪将軍は間島と沿海州に舞台を移して活動を続けた。洪将軍は3・1独立運動(万歳運動)の翌年の1920年、独立武装闘争史で最も輝かしい勝利の一つとされる鳳梧洞戦闘を率いた。当時、洪将軍は「いつも階級章もない一兵卒のような姿で、指揮刀や拳銃の代わりに日本軍を討つ長銃2丁を持ち歩いていた」(『間島独立運動小史』)という。

 しかし、独立勢力の拠点だった満州と沿海州地域に対する日本の軍事的圧迫が強まると、洪将軍は独立軍の勢力を拡大するためロシア領土に移動したが、韓人武装勢力同士の紛争で多くの死傷者が発生した「自由市惨変」を経験した。ソ連共産党はこの事件以降、韓人武装勢力を強力に統制した。1937年にはスターリン政権の強制移住政策により、洪将軍ら9万6000人あまりの高麗人がカザフスタンに強制移住させられた。洪将軍は、カザフスタンのクズロルダでは掘っ立て小屋に住み、高麗劇場の警備員として生計を立てるほど苦しい晩年を過ごし、75歳で死去した。

 国権侵奪とそれに続く武装独立闘争、高麗人強制移住まで、韓国現代史の痛みがそのまま刻まれている洪将軍の遺体の返還は、これまで政府の宿願だった。政府は1992年のカザフスタンとの国交樹立後、洪将軍の遺骨返還を推進してきた。金泳三(キム・ヨンサム)政権時代の1995年に一度返還が試みられたが、北朝鮮がカザフスタン政府に対して将軍の故郷が平壌であることを挙げて反対したという。遺骨をどこに返還するかをめぐり南北の意見の相違が表面化すると、カザフスタン政府と現地同胞社会は苦しい立場に立たされざるを得なかった。

鳳梧洞戦闘の英雄、洪範図将軍の遺体が光復節の15日夜、韓国に帰って来る。写真はカザフスタンのクズロルダにある洪範図公園の洪範図将軍の胸像=クズロルダ/聯合ニュース

 同胞たちが遺体返還に快く取り組めなかったもう一つの理由は、将軍の存在がカザフスタン高麗人社会で「精神的求心点」の役割を果たしていたからだ。彼らはクズロルダに将軍の墓を建て、「民族指導者」として称えてきた。カザフスタン政府も1994年に「洪範図将軍通り」を宣言するほど将軍を尊重してきた。遺体返還に同意すべき将軍の子孫がみな亡くなっていることも現実的な困難として作用した。

 このような中、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は2019年4月にカザフスタンを訪問し、遺体返還に向けた外交的努力を傾けたという。こうした努力が実を結び、文大統領は昨年の3・1節記念演説で遺体の返還が決まったことを明らかにすることができた。大統領府の関係者は「鳳梧洞戦闘戦勝100周年(6月7日)を期して洪将軍をお迎えするために努力してきたが、残念ながらコロナ禍で返還が延期されてきた。今回のカザフスタン大統領の訪韓を機に実を結ぶことになった」と説明した。

 文大統領は遺体返還に向けて、14日にファン・ギチョル国家報勲処長を特使とする特使団をカザフスタンに派遣する予定だ。特使団には共に民主党のウ・ウォンシク議員(洪範図将軍記念事業会理事長)と、「暗殺」や「大将キム・チャンス」などの複数の独立運動映画に出演した俳優のチョ・ジヌンさんが国民代表として参加する。15日夜に故国に到着する洪将軍の遺体は、16~17日の国民追悼期間を経て、18日に大田(テジョン)顕忠院に埋葬される予定だ。

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/1007492.html韓国語原文入力:2021-08-12 17:39
訳D.K

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