キム・ヨジョン朝鮮労働党中央委副部長は、その地位と役割がかなり独特である。彼女は労働党中央委員会委員であり、中央委副部長だ。党中央委政治局(候補)委員のリ・ソングォン外務相より公式序列は低い。リ外務相は今月15~18日に開かれた党中央委第8期第3回全員会議で、政治局員に割り当てられた「主席団(貴賓席)第2列」に、キム副部長は主席団の下の一般席に座った。しかし実際の地位と役割はキム副部長がリ外務相よりはるかに高く、幅広いものとみられる。
例えばこうだ。リ外務相は23日夜、「朝鮮中央通信」に発表した「談話」で、「外務省は(キム・ヨジョン)党中央委副部長が米国の未熟な評価と憶測と期待を一蹴する談話を発表したことを歓迎する」と明らかにした。「誤った期待は自ら(米国)をより大きな失望に陥れるだろう」というキム副部長の前日の談話に続く流れだ。北朝鮮流の表現を使えば、キム副部長の談話に対する「反響」といえる談話だ。
昨年6月の「対北朝鮮ビラ事件」では、キム副部長がまず談話を発信すると、党序列がもっと高いチャン・グムチョル統一戦線部長が2回も後続談話を発表して後押しした。当時、「対南事業部署の事業総和(決算)会議」を主宰したのは、対南事業公式実務責任者であるチャン・グムチョル部長ではなく、キム副部長とキム・ヨンチョル党中央委副委員長だった。統一戦線部報道官は、キム・ヨジョン当時党中央委第1副部長が「対南事業を総括」すると述べた。
こうしたキム副部長の“低くて高い”独特の地位と役割は、彼女が権力の中心で公開活動をする金正恩労働党総書記の唯一の兄弟であり、「白頭(ペクトゥ)血統」(金日成・金正日の直系)という事実に根ざしている。
キム副部長は今年5回にわたり談話を発表し、「金正恩の口」の役割を果たしてきた。4回(1月13日、3月16日、3月30日、5月2日)は韓国側を、1回(6月22日)は米国を標的にした。キム副部長の業務領域が韓国や米国との関係を包括することを裏付けている。パク・チウォン国家情報院長は今年9月、国会情報委員会に出席し、キム副部長が「対韓・対米・国民生活・新型コロナ(対応)に関連して実質的にナンバー2の役割を果たしている」と述べた。