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「競争者なく君臨するIT巨大企業を警戒すべき」IMF専務理事の警告

登録:2021-03-17 06:55 修正:2021-03-17 08:53
15日の国際通貨基金(IMF)ウェブサイトのトップページに「パンデミックと巨大企業の市場支配力強化」を扱ったIMFブログのタイトル(Rising Market Power)が見える=IMFウェブサイトより//ハンギョレ新聞社

 「コロナ・パンデミック危機で情報技術(IT)部門をはじめとする多くの産業は、むしろ恩恵を受けており、そうした産業内部でも巨大な市場支配者はそれこそ最大の勝者として君臨している」(クリスタリナ・ゲオルギエバ国際通貨基金(IMF)専務理事)

 15日(現地時間)、スイス・ジュネーブにある国際通貨基金(IMF)は、公式ウェブサイトに同じ問題を扱った論評ブログ、1時間の討論動画、そして分析報告書を一斉にアップした。コロナ・パンデミック危機を経て、世界的にIT大企業などの巨大企業の市場支配力が急拡大していると診断し、各国は経済回復と市場のダイナミズム強化に向けた競争政策への対応に直ちに取り組むべきだとする内容が共通のテーマとなっている。ここのところ多くの国で、いわゆるプラットフォームを掌握する「ビッグテック」を規制すべきとの声が力を得ていることと無関係ではない診断だ。「市場支配力の高まり 復興の脅威となるか?」と題する論評の作成者はゲオルギエバ専務理事を含む4人で、討論動画(「一つの挑戦によって浮き彫りとなった市場競争の退潮」)にもゲオルギエバ専務理事を含む各国の5人の経済アナリストが参加している。IMFに所属する10人あまりの研究者が分析した「企業の市場支配の高まりが新たな政策課題として浮上した」と題する報告書も発表された。

 ゲオルギエバ専務理事は論評で「今般の危機によって、中小企業が特に大きな打撃を受けており、大規模な雇用喪失に加え、その他の経済的な後遺症が生じている」とし「そうした後遺症のひとつに、あまり注目されないがやはり深刻なものとして、有力企業の市場支配力と各品目の市場集中度の高まりがある」と述べた。相対的に小さなライバル企業がコロナで倒れていっている一方で、市場の巨大な支配者はさらに強くなった企業として立ち現れており、「規模・範囲の経済」という市場の根本的な力に加え、パンデミックが市場支配力を強化するもう一つの強力な動因として作用しているわけだ。

 市場が少数の巨大企業の手によって過度に支配されれば、中長期的な成長を導く躍動性と競争が減退し、イノベーションが遅れ、競争的投資が窒息しがちになる。ゲオルギエバ専務理事は「最近の市場集中度の急激な高まりが潜在的な革新企業の新たな参入を妨げ、全世界のマクロ経済においてコロナ後の経済回復の障害となる可能性もある」と警告した。特にIMFは「先進国でこうした集中が、パンデミックに見舞われたこの1年で、少なくとも2015年末までの15年間に見られたのと同程度に高まる可能性があると推定している」と述べた。パンデミックが世界の市場構造に及ぼした影響について、IMFが大まかな数値として初めて明らかにしたのだ。

 この日発表されたIMFの報告書によると、北米、欧州、韓国、日本などの先進82カ国の主要上場企業の市場集中度(1980~2016年、各品目の市場で20社の総売上高に対する上位4社の売上高の割合)を分析すると、市場集中度の代表的な指標である「マークアップ(Markup、製品の市場価格から生産・販売コストを差し引いたマージン)が過去40年あまりで平均30%以上拡大している。この特定企業の名前は公表していないが、デジタル産業部門はこの20年間で、マークアップが経済全体のマークアップの上昇率の2倍ほどの劇的な上昇を示している。論評は「多くの産業で、パンデミックが市場集中度の悪化をさらに促している」と指摘した。ゲオルギエバ専務理事は、「様々な業界において、ある年にマークアップが最も高かった企業(上位10%)は約85%の確率でその翌年も高いマークアップを維持できると推定している」と述べた。この確率は1990年代のいわゆる「ニューエコノミー」より10ポイント以上高い。

15日にIMF公式ウェブサイトにアップされた討論動画。討論者にゲオルギエバ専務理事(右上)が見える=IMFウェブサイトより//ハンギョレ新聞社

 さらに深刻なのは支配力の固定化だ。20年前に市場を支配していた企業を追い出し、新たに市場を掌握した今の巨大企業は、今日のコロナ時代を経る中で、自らを再び脅かす「競争圧力の挑戦」をほとんど受けずにいる、と報告書は診断する。多くの産業の支配的企業が、コロナ禍という条件下におけるライバルの脱落と不在の中で、堅固な市場支配力の塹壕を構築しつつあるというシグナルがあちこちに現れているというのだ。

 IMFがこの日発表したこれらの資料は、このところジョー・バイデン米政権が連邦取引委員会や国家経済会議などの競争・規制に関する要職にビッグテック規制を主張する反独占論者を相次いで抜擢し、巨大企業の市場支配力と戦う姿勢を示していることと同じ脈絡を持つ。IMFは、市場集中度を高める主な動力の一つとして、世界的な買収合併(M&A)ブームを指摘し、「各国の競争当局は、巨大企業間の企業の結合を審査・規制する際、強く警戒し、油断してはならない」と述べた。

チョ・ゲワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/marketing/986996.html韓国語原文入力:2021-03-16 16:24
訳D.K

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