11月3日の米大統領選挙を控え、朝米が対話を劇的に再開する「10月サプライズ」を現実化するため、韓国政府が傾けてきた外交的努力の実態が少しずつ明らかになっている。韓国政府は北朝鮮の体制保証要求を満足させる「終戦宣言」と「キム・ヨジョン労働党第1副部長の訪米」という超大型パフォーマンスを共に進めることで、現在の膠着状態を突破しようとしたものとみられる。
読売新聞は7日付で、韓米日協議と関連した複数の消息筋を引用し、「文在寅(ムン・ジェイン)政権が11月の米大統領選を控えてキム・ヨジョン副部長の米国訪問の仲介を図った」と報道した。韓国政府は、初めは膠着状態に陥った朝米核交渉を再稼動させるために、第3回朝米首脳会談の成功に集中した。この過程で浮上したのが、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の実妹、キム・ヨジョン副部長の訪米カードだったと同紙は報じた。
当時、金正恩委員長は昨年2月末、ベトナムのハノイで開かれた第2回朝米首脳会談の失敗による影響で、再び“外交的冒険”に出ることが難しい状況だった。この時、キム・ヨジョン第1副部長が訪米し、ドナルド・トランプ米大統領と会えば、大統領選挙を控えた時点で米国メディアの関心を集めることができ、行き詰まっている朝米交渉の扉を開くこともできると判断したという。同報道に対し、カン・ギョンファ外交部長官は7日、国会で開かれた外交部国政監査で「事実ではない」と否定した。
しかしこの3カ月間、南北当局が見せてきた動きを振り返ってみると、カン長官の答弁を額面通り受け取ることはできない。6月、北朝鮮が開城(ケソン)南北共同連絡事務所を電撃的に爆破し、南北関係を崖っぷちに追い込んだことを受け、文在寅大統領は従来の外交安保ラインを再編し、“新たな枠組み作り”に乗り出したが、その最初のカードが3回目の朝米首脳会談だった。文在寅大統領が6月30日、「米国の大統領選の前に朝米間の対話努力をもう一度進める必要がある」と述べたのも、このような努力の一環だった。その後、キム・ヨジョン副部長は7月10日、談話を発表し、「独立節記念行事を収録したDVDを必ず得ることに対し、委員長同志(金正恩委員長)の許諾を得た」という文言で、対米接触の窓口は今後自分になることを強く暗示した。
韓国政府はこの時から北朝鮮を会談に引き出すための“議題の構築”に力を注いだ。政府がひねり出した解決策は「終戦宣言」だった。キム・ヨジョン副部長は談話で、「非核化措置 対 制裁解除という過去の朝米交渉の基本テーマが、今や敵視政策の撤回 対 朝米交渉再開の枠組みに修正されるべきだ」と述べたが、朝米対立を終わらせるという意味の「敵視政策の撤回」は、終戦宣言と同じ意味として受け止められた。以後、チェ・ジョンゴン外交部第1次官、キム・ヒョンジョン国家安保室第2次長、イ・ドフン外交部朝鮮半島平和交渉本部長などが相次いで米国を訪問し、文在寅大統領は先月23日、国連総会の演説で改めて終戦宣言を提案した。
この構想には朝米ともに関心を示したものとみられる。スティーブン・ビーガン米国務副長官は先月28日、ワシントンでイ・ドフン本部長と会談した後、朝鮮半島の非核化と平和構築に関する「創意的なアイデア」について話し合ったとし、「北朝鮮の参加」を呼び掛けた。金正恩委員長も9月、今年上半期に文在寅大統領と親書を交わし、3日にはトランプ大統領に送る「慰問電文」を電撃公開した。
しかし、トランプ大統領が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染したことが確認された2日以降、マイク・ポンペオ国務長官の訪韓が実現せず、「10月サプライズ」が現実化する可能性はかなり低くなった。特に米国は6日、“中国包囲”に向けて東京で開かれたクアッド(QUAD)外相会議に出席し、微妙な余韻を残した。大統領選挙を控えたトランプ政権の関心が“朝米対話”より米有権者のより大きな支持を得られる“中国封鎖”に集まっていることを端的に示す事例だ。