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北朝鮮、越北や遺体の損壊、上部指示による銃撃など韓国側の判断をすべて否定

登録:2020-09-26 06:27 修正:2020-09-26 09:18
小延坪島で行方不明になった公務員が北朝鮮側海上で漂流していたところ北朝鮮軍の銃撃を受けて死亡したとされる中、今月25日、同公務員が銃撃されたものと推定される黄海道登山岬海岸付近で北朝鮮軍の軍艦が移動している/聯合ニュース

 北朝鮮が海洋水産部(海洋部)の漁業指導員A氏の銃撃事実が公開された翌日の25日、A氏の射殺に対して電撃的に遺憾を表明し、再発防止を約束したのは、南北関係のさらなる悪化を防ぐためと見られる。その一方で、北朝鮮は韓国軍の主張を一つひとつ反ばくし、北朝鮮軍の今回の措置がやむを得ない対応だったと主張した。しかし、北朝鮮の釈明は常識的に納得しがたい部分も多く、この機会に南北当局間の共同現場調査などを通じて、疑惑を解消する必要があるという声が高まっている。

 韓国軍は、漁業指導員A氏が北朝鮮海域まで行った背景について、越北するためと判断した。軍関係者は前日、メディアのブリーフィングで「北朝鮮側の人が行方不明者と一定の距離を離隔し、防毒マスクを着用して行方不明者の漂流経緯を確認しながら“越北陳述”を聞いたものとみられる」と述べた。しかし、北朝鮮は同日の通知文で「80メートルまで接近して身元の確認を要求したが、初めの1、2回大韓民国の誰々だとごまかすように言っただけで、それからは何も答えなかった」とし、A氏が越北する意思を示なかったと反論した。

 北朝鮮は、死亡したA氏の遺体を損壊したという韓国軍の主張も否定した。韓国軍は「防毒マスクと防護服を着用した北朝鮮軍が遺体に接近して油を注いで燃やした情況が把握された」とし、「延坪部隊の監視装備にも遺体を燃やす明かりがとらえられた」と明らかにした。しかし北朝鮮はA氏に銃撃を加えた後「約10メートルまで接近して捜索したが、侵入者は浮遊物の上になく、大量の血痕が確認された」とし、海上現地で焼却したのは「侵入者が乗っていた浮遊物」だったと釈明した。

 このように積極的に反論したのは、越北の意思を明らかにした民間人を銃撃で射殺しただけではなく、遺体まで損壊したことを認めた場合、道徳性に致命的な打撃を受けるという判断によるものとみられる。しかし、A氏が着ていた救命胴衣は海に簡単に沈まない。このため、A氏が銃撃で浮遊物から落ちたとしても、海に沈んだため発見できなかったという北朝鮮の説明は納得し難い。

 銃撃命令を下した責任者が誰かについても、南北の説明は食い違っている。韓国軍は北朝鮮軍が「上部の指示」で銃撃したものとみられると説明した。国会国防委員会委員らは前日、国防部の非公開報告を受けた後、「北朝鮮海軍司令官が銃撃指示をしたと韓国軍は見ている」と伝えた。北朝鮮の取締艇が、A氏を6時間も海上で抑留したのも、上部の指示を待つ時間が必要だったためと見られる。

 これに対し、北朝鮮は取り締まり艇の指揮責任者である「艇長の判断のもと、海上警戒勤務規定が承認した行動準則に従い、約10発の銃弾」を撃ったと主張した。しかし、いくら韓国と体制が異なる北朝鮮だとしても、何の軍事的脅威にもならない非武装の民間人に向かって、初級幹部にすぎない「艇長」が勝手に射殺命令を下すという説明は現実性に欠けている。射殺命令の責任が上層部まで及ばないように“トカゲのしっぽ切り”に出たのではないかという疑念を抱かせる。

 北朝鮮は、A氏が北朝鮮の取り締まり艇に見つかってから6時間にわたり何をしており、何をきっかけに銃撃を加えたのかについて、十分な説明をしていない。北朝鮮軍は取り締まり命令に応じず空砲弾を2発撃って逃走しそうな状況になり、うつぶせの姿勢で何かをかぶろうとする行動も見せたと、あいまいに説明した。A氏が北朝鮮軍の取り締まりに応じず反抗したという趣旨の説明だ。北朝鮮軍がA氏に銃撃を加えたことがやむを得ない対応だったことを強調する発言とみられる。しかし、北朝鮮軍の艇長が非武装の民間人A氏に銃撃を加えることを決心した具体的な契機と経緯など。核心の事案については触れなかった。

パク・ビョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/963690.html韓国語原文入力:2020-09-26 02:31
訳H.J

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