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「暴力に耐えられず運動やめます」…スポーツ界の暴力被害選手たちの声

登録:2020-07-04 09:47 修正:2020-07-04 12:49
トライアスロンの故チェ・スクヒョン選手が2013年の全国海洋スポーツ祭典で金メダルを首にかける様子=チェ・スクヒョン選手の遺族提供//ハンギョレ新聞社

 「私はセクハラ・言葉の暴力の被害者です。私はこのような状況に耐えられず、来年には運動をやめることに決めました。言葉の暴力を受けて自分を責め、本当にだめな人間だと思うことがあまりにも耐え難かった。いつもやればできると決心していたのに、今はトレーニング場に入った瞬間から私がやっているこの運動が怖いです。 練習に集中できず、監督から何を言われるだろうかと恐れています。
 今日はどう怒られるのか、とても怖いです。あまりにも疲れ、本当に疲れ果てて、自害、自殺まで試みてしまったことがあります。まだあの時のことが思い浮かびますが、それでも今は来年にはこれをやめるという思いで、一日一日を耐えています。一番大好きだったことが、どうしてこんな風に流れてきてしまったのか分からないけれど、私の心も身体もひどく傷ついてまともじゃありません」
-実業チームの運動選手のAさん

 国家人権委員会スポーツ人権特別調査団が昨年11月に発表した「実業チーム選手人権実態調査結果報告書」に掲載されたスポーツ界の暴力被害者の訴えだ。所属チームの関係者らの暴力行為に苦しみ、自ら命を絶ったトライアスロンのチェ・スクヒョン選手の無念の犠牲に、別の被害者たちも加害者の監督らを告訴するなど、勇気を出している。人権委が昨年公開したこの報告書にも、チェさんのようにスポーツ界の時代遅れの暴力慣行の被害を訴えた選手たちの声が載っている。彼らは、蔓延する言葉の暴力と過度な権威主義▽無力化した申告制度▽第3の監視機関の不在をスポーツ界の慢性的な問題として挙げた。

 まず、「指導者の言葉はそのまま法律」のように受け入れられる権威主義文化を告発する声が数多く上がった。実業チームの選手Bさん(26)は「これだけお前を支援してやっているのに、これができないなら敗北者だ。××(差別的な侮辱語)だろ」という言葉を練習場で毎日のように言われたと告白した。悪い噂を流して精神的な苦痛を与えるのも指導者だった。実態調査でCさん(28)は「監督が私の悪い噂を流すんです。他の市郡庁の監督たちに悪いイメージを植えつけようとしたみたいです。『チームの悪口を言って回る、監督の悪口を言って回る』という風に。自分のおかげであいつ(選手)がこれだけうまく行ったのに恩知らずだ、とも言います」と話した。

 身体的暴力も日常化している。アンケート調査に回答した1251人を対象に、現在の所属チーム内で身体的暴力を受けた経験があるかを尋ねたところ、26.1%(326人)が「はい」と答えた。身体的暴力を受けた理由については、「加害者の機嫌が悪かったから」と答えた割合が38.5%で最も高かった。次に「精神力が緩んだ」(30.2%)という理由や、「良い成績が出せなかったから」(24.7%)という理由も多かった。さらに「理由はよく分からない」と答えた選手も24.2%にものぼった。

 「問題提起をして要請文を書いても、思った以上に変化がありません。何も変わっていません。私たちが立ち上がってそんなことをしたことの意味がないと思います。虚しさが増しました。結局、私たちが運動するにあたってさらに制裁を受けるのではないかという不安がわくんです。協会はあっち側の人たちなので、協会側からは全く助けを得られないと思います。大韓体育会でもまだこの事実を知っているのか知らないのか、よく分かりません。警察署に行った時もセクハラや暴行を受けたことがあるのか、それがなければお金以外はかけられるものがない、という風に言われたんです」
-実業チームのスポーツ選手のEさん(30)

 閉鎖的で権威的なムードにより、選手たちは被害救済をまともに受けられてもいない。「内部のことを他の人に話したら裏切り者のイメージになるという恐れが大きい」だとか、「私が暴行を受けたと通報したらその通報によって実業チームをなくしてしまうため、通報するのが難しい」などの声が上がった。

 所属チームで身体的暴力を受けた経験がある326件中、対処策について回答した182人の選手のうち半分以上(67.0%)が何の行動も取れなかったということが分かった。助けを求めて暴力行為が止まったという回答はたった1人だった。何の役にも立たなかった(40.0%)か、相談で終わった(40.0%)という事例が多かった。このほか、対処がうまくできなかった理由については、報復が怖い(26.4%)▽相手が不利益を与えるのではないか心配(23.1%)▽どう対応したらいいか分からない(22.0%)▽相手と気まずくなるのが嫌で(20.9%)の順だった。チェさんもまた、死亡直前まで大韓体育会やトライアスロン競技協会、捜査機関にも助けを求めても問題が解決されない過程を見て、無力感を感じたということが伝えられている。

 「問題が生じれば、そのまま警察署に行ったほうがいいと思います。特に連盟から助けを得られるものもないし。以前、選手に何か事が起きて自分の会社に話をしたんですが、その時被害を受けたのは選手でした。会社は監督、コーチの言葉だけを聞いて選手の立場は聞き入れませんでした。問題が内部でうまく解決するとは期待できません」
-実業チームのスポーツ選手のFさん(35)

 選手たちは、これからはこのような慣行の輪を断ち切らなければならないと訴えた。選手のGさん(25)は「スポーツ人権に関するアンケート調査が各市道郡庁に渡る際に、警告文というか、『選手に対する抑圧的な行動や、選手に対する侮辱的な行動をやめよ』といった文言が、郡長や市長のような偉い人に伝わってほしい。実質的にスポーツ人権が下落しているのは、市長や郡長のように権力を持つ上の人たちが知らないから起きるのだと思う」と語った。

 選手たちは、これからはスポーツ界の実態把握を超えて、現実の変革に積極的に取り組むべきだと強く主張した。選手たちは人権委に「調査をすれば良くなるのですか? 私たちが伝えたら知ってもらえるのですか? 運動選手はみんな我慢しなきゃならないのですか」「調査だけするのではなく、本当に改善できるよう方策を立ててください。スポーツ選手たちは本当につらくて苦しいです」「毎回毎回こんなアンケートをして何になるんですか。まったく改善されていない」「机上の行政で終わらないことを願っています」などの意見を残した。結局、人権委の全方位的な実態調査にもかかわらず、チェ・スクヒョン選手の苦痛は彼女が死亡するまで世論化されないまま終った。

 最後に残したい一言として、人権委の調査に応じたある選手は下記のような長い願いを記した。数多くのチェ・スクヒョンたちの、切羽詰った声だ。

 「このような特別調査をすれば問題点がなくなるんですか。本当に知りたいです。いまもコーチや監督は堅物が本当に多いです。権威的で成績ばかり望みます。そのためにこのような問題が起こるのだと思います。成績の前に選手の人権をまず考えてくれるような人になってほしいというのが私の願いです。人権委員会がもう少し頑張って、良いトレーニング環境が作られるよう助けてください。お願いします」

オ・ヨンソ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/952119.html韓国語原文入力:2020-07-03 15:40
訳C.M

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