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[特派員コラム]トランプと新型コロナが出会った結果

登録:2020-05-01 01:56 修正:2020-05-01 07:36

 ドナルド・トランプ米大統領は自分に批判的なメディアを「レームストリーム・メディア(Lamestream Media)」と呼ぶ。「メインストリーム(主流)」という言葉の代わりに、時代遅れのメディアという侮蔑的な意味が込められている。主に彼が「フェイクニュース」と呼ぶニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNN、NBCなどがこれに当たる。

 トランプは就任後、「メインストリーム・メディア」という表現を使ってきたが、「ロシア・スキャンダル」などのさまざまな批判に苦しみ、昨年7月から「レームストリーム・メディア」という言葉に替えた。彼がこの単語を頻繁に使うほど、マスコミに対する不満が多いという意味であり、それほど彼に対する批判が多いという意味でもある。彼のツイッターでのこの表現の使用は最近まで47回を数えるが、今年3~4月だけで半分の23回にのぼる。米国の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事態の悪化とトランプ責任論が噛み合った時期と正確に一致する。

 トランプがレームストリーム・メディアという言葉を使う時は、FOXニュースのような友好メディアとの対比も念頭に置いている。しかし、これもCOVID-19事態の中で少し変化した。彼は客観的なアンカーとされるFOXニュースのクリス・ウォレスに対する不満を示す一方、最近は露骨な親トランプ性向を持つワン・アメリカ・ニュース(OAN)を持ち上げている。同メディアの記者は、3月にホワイトハウスのCOVID-19タスクフォースの記者会見でトランプに「大統領の支持率は歴代最高だが、ブリーフィングを生中継するかどうかで論争している放送局がある」と質問し、トランプは「良い質問だ。とてもありがたい」と応えた。トランプは「ヒドロキシクロロキンがCOVID-19に効果的」という同メディアの報道をリツイートしたり、ブリーフィングの際にOANを指名して質問権を与えている。米メディアはこれを「FOXニュース、もっと頑張れ」という意味だと解釈する。トランプはまた、自分を支持する黒人姉妹ブロガー「ダイヤモンド&シルク」をツイッターで公に応援している。四方から批判され支持率が下がれば下がるほど、「友軍」が恋しくうれしいのだろう。

 ところがトランプと支持メディアや支持勢力の「以心伝心」はこれに止まらないようだ。コロナ禍とトランプの危機は、しばらく表面下にとどまっていた「オルタナ右翼」という極右保守勢力を表に呼び戻している。最近、COVID-19シャットダウンに反発するデモ隊が星条旗を掲げて街に出た時、トランプはこれを煽るようにミネソタ、ミシガン、バージニアの各州に向けて「解放せよ」とツイートした。トランプは彼らを「国を愛する人々」と呼び、肩を持った。白人優越主義、反移民、銃器所持の擁護などを特徴とする「オルタナ右翼」は、2017年にシャーロッツビルで起きた白人優越主義者による流血事態後、停滞しているようだった。しかし、COVID-19が彼らに機会を与えているようだ。技術企業を監視する非営利団体「技術透明性プロジェクト(TTP)」はフェイスブックで「内戦」を企てる125の極右過激主義者グループを発見したと最近明らかにした。このうちの60%がCOVID-19が襲ったこの3カ月の間に作られ、この1カ月間だけで会員が数千人も増えたという。彼らはトランプの「解放せよ」発言にインスピレーションを与えられており、爆弾の製造法などについて議論しているとTTPは明らかにしている。

 トランプはCOVID-19を当初「中国ウイルス」と呼び、「米国人の雇用が先」と言って移民受け入れを臨時に中止した。このような行動はアジアなどに対するヘイトと暴力を助長しうるが、トランプはその側面にはあまり関心を示さない。トランプがCOVID-19への対応に自身の核心基調である「アメリカファースト」を混ぜ合わせている間に、さらに増幅した分裂とヘイトが米国のニューノーマルとして固定化してしまうのではないかと心配だ。

//ハンギョレ新聞社

ワシントン/ファン・ジュンボム特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/942743.html韓国語原文入力:2020-04-30 20:29
訳D.K

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