日本の安倍晋三首相が施政方針演説で韓国について「基本的価値を共有する国」との表現を6年ぶりに使った。しかし、引き続き安倍首相は「国と国との約束を守ることを期待する」と強制動員被害問題は韓国が解決しなければならないという既存の考えに変わりがないことを強調した。施政方針演説は日本の首相が一年の国政方針を明らかにする重要な演説だ。
安倍首相は通常国会開会日である20日に行なった施政方針演説で「韓国は元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国。であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを切に期待する」と述べた。安倍首相は2014年の施政方針演説の時まで以前の政権のように韓国を「基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国」と表現したが、日本軍「慰安婦」問題で対立が深まった後の2015年から「基本的な価値を共有する国」という表現を削除していた。
引き続き文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の2018年からは「戦略的利益を共有する国」という表現も消して、最高裁判所の強制動員賠償判決後の去年の施政方針演説では韓国について初めから言及しない「無視」までした。基本的価値を共有する国という表現は、韓国が日本と民主主義や法の支配のような基本的価値を共有する国家という意味であり、戦略的利益を共有するという言葉は北朝鮮問題について韓国と日本の協力が必要であるとの意味を内包している。安倍首相が去年の意図的無視から“条件付き”で6年前の表現に戻った背景には、韓日関係のさらなる悪化までは日本も望まないという考えのためと見られる。
しかし、安倍首相演説の強調点は後に登場する「であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを切に期待する」という部分だと見られる。日本政府は2018年10月に韓国最高裁(大法院)が強制動員被害賠償確定判決を下したところ、韓国最高裁の判決は1965年の韓日請求権協定違反であり、韓国が国際法を破っており、韓日間の約束は守らなければならないと主張してきた。強制動員被害の問題解決は韓国政府が行うことで、ボールは韓国側にあるという主張だ。安倍首相の演説内容はこのような方針には変化がないという意味だ。
ソウル大学日本研究所のナム・ギジョン教授は「12月の韓日首脳会談で関係回復と(強制動員問題を)対話で解決すると言ったので、その程度に合わせて出したと見ることができる」とし、「日本が『基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国』と韓国を再び表現したため、韓国も強制動員問題を解決せよという圧迫かもしれない」と話した。
恵泉女学園大学のイ・ヨンチェ教授も「東京五輪を控えて韓国との関係を悪化させたくはない。危機管理はする。しかし日本は譲歩しないという意味」として、「焦点は約束を守れという言葉にある」と語った。
北朝鮮に対しては「日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との諸問題を解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す」と述べた。去年の施政方針演説の時に「私自身が条件を付けずに金正恩委員長と向き合う決意であり、あらゆるチャンスを逃すことなく果断に行動する」と述べたが、今回は朝日首脳会談の意志を強調しなかった。朝米対話の停滞による変化と見られる。
安倍首相は現行の平和憲法改正の意志もまた強調した。「国のかたちを語るものは憲法。未来に向かってどのような国を目指すのかを示すのは、私たち国会議員の責任ではないか。新たな時代を迎えた今こそ、未来を見つめ、歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場で共にその責任を果たしていこうではないか」と主張した。
安倍首相は今回の施政方針演説の冒頭部分で「半世紀ぶりに、あの(1964年東京五輪の)感動が、再び我が国にやってきます」と、今年が東京五輪開催の年である点を強調した。
一方、茂木敏充外相はこの日の外交演説で「日韓間の現下最大の課題である『旧朝鮮半島出身労働者問題』(強制動員被害者問題)については、安倍首相から文在寅大統領に対し(昨年末の首脳会談時に)明確に求めた通り、韓国側の責任で解決策を示すよう強く要請するのとともに、問題解決に向けた外交当局間の協議を継続する」と述べた。「竹島(独島)は歴史的事実に照らしても国際法上も日本固有の領土であり、この基本的な立場に基づき冷静かつ毅然と対応する」と述べた。