「安倍晋三政権は争点を扱うのが非常に上手だ。国民の反発を買うような政策は、選挙の時に掲げない」
内山融・東京大学大学院総合文化研究科教授(日本政治・比較政治)は、安倍首相の長期政権の秘訣の一つとして、“老練な”政局運営能力を挙げた。18日、東京大学の研究室で会った内山教授は、「消費税率の引き上げや(集団的自衛権行使のための)安保法制改正のような政策は、選挙がない時に推進した」として「第一次政権の時とは異なり、菅義偉官房長官や今井尚哉補佐官のような有能なサポート陣がいるのも強み」と語った。
内山教授も安倍政権の長寿の秘訣として、経済問題を優先して挙げた。彼は「(第二次政権の時の)経済重視政策が大きい。右派的な政策を推進したが、経済に基本を置いた」と診断した。安倍首相が最長寿首相になった点には、いくつかの偶然的要素も重なったと分析した。彼は、「過去のように(自民党内の)派閥間競争がひどい時は、首相が長く在任しにくかった」として「党内派閥が弱体化して無派閥が増え、安倍首相のような大衆的人気のある政治家が有利になった」と話した。また、「民主党政権が失敗して安倍政権に対する消極的な支持率が増えた」として「安倍首相にはさまざまな幸運があった」と指摘した。
内山教授は、安倍首相は憲法改正はするが、彼の公言とは異なり自衛隊の規定を追加しない形があり得ると話した。安倍首相は2017年5月、現行の平和憲法の中心である「戦争の放棄と交戦権の否認」の内容を入れた第9条第1・2項はそのまま維持して、自衛隊設置に対する明確な根拠規定を追加する案を推進すると明らかにしたことがある。内山教授は、「世論調査を行うと、半分程度は9条改正に反対する」として「安倍首相が9条以外の他の規定を変えれば、一応形態だけの憲法改正ができる」と述べた。1947年に制定された後は一度も改正されていない現行憲法の改正自体に意味があると言えるという話だ。
彼は、安保法制の制定・改正により自衛隊の活動範囲は既に拡がっているという点を指摘して、「9条に自衛隊規定を追加する改憲をしても、現実的に変わるものはない」と話した。憲法改正自体には実際的な意味は大きくなく、象徴的な意味がより大きいという話だ。彼は、「憲法改正は、自民党内のハト派に挙げられる岸田文雄政調会長が首相になれば、逆に推進することがより容易だろう」と見通した。
彼は、「自民党内の『安倍チルドレン』(安倍首相が政界入門を助けた政治新人)が多い」として、安倍首相が退任後も引き続き強い影響力を及ぼす政治家として残るはずだと予想した。安倍後継である「ポスト安倍」首相に対しては、「過去の自民党首相は長くても2年ほど在任した。ポスト安倍はそれほどではないが、安倍首相ほどの長期政権は難しいだろう」と分析した。