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世界で唯一無二、キムチビリーが繰り広げる無料レトロ・フェス

登録:2019-09-23 01:58 修正:2019-09-23 09:00
10月3日、仁川市松島の複合文化空間「Caisson 24」で開かれるレトロ・フェスティバルを企画したバンド「ストリート・ガンズ」のタイガー=ストリート・ガンズ提供//ハンギョレ新聞社

 エルビス・プレスリー風のバンド演奏が流れ、人々はスウィングを踊る。DJはLPでノリのいい音楽を流し、片隅に設けられたバーバーショップではエルビス・プレスリーのように髪を流すリーゼント・スタイルにしてくれる。1950年代の風景ではない。昨年9月にソウル鍾路区(チョンノグ)の複合文化空間「エム」で開かれた「レトロ・フェスティバル」で繰り広げられた光景だ。昨年、初めてのフェスが成功し、今年は場所を移して規模を拡大した。10月3日、仁川松島(インチョン・ソンド)の複合文化空間「Caisson 24」で二回目のレトロ・フェスティバルが開かれる。

 「レトロ・フェスティバル」を企画したのは、バンド「ストリート・ガンズ」のリーダー、タイガー(本名パク・ソンホ)だ。1950年代のロックンロール草創期の形態・ロカビリーを真面目に追求してきた。彼は最初からロカビリーにハマったわけではない。19日、ソウルの西橋洞(ソギョドン)のとあるカフェで会ったタイガーは「子どもの頃はそんな音楽があることさえ知らなかった」という。

 小学生の時、友達と一緒に市民会館でバンド「復活(プファル)」の公演を見てファンになった。中3の時ギターを習い始め、高校時代にスクールバンドを結成した。メタリカなどのヘビーメタルバンドの曲を主にカバーした。大学に入ってからもヘビメタ・バンドをしていた彼は、軍隊から帰って来た時、世の中が変わったことを知った。ニルヴァーナ登場後、ヘビメタの時代は去り、オルタナティブ・ロックとパンクの時代が始まっていたのだ。「悩みつつも僕も乗り換えました。パンクバンド『プポンチュン』を作って弘益大前のクラブでライブしたらとても面白くて。でも2年ほど活動して解散することになった」。

韓国唯一のロカビリー・バンド「ストリート・ガンズ」=ストリート・ガンズ提供//ハンギョレ新聞社

 パンクにも飽きた。もっと変わったことをしてみたかった。それで結成したバンドがロック・タイガースだ。パンクを基盤にしつつもロックンロールの要素を加えて、1950年代風の皮ジャンとリーゼントでキメた。2004年には日本最大のロカビリーの祭典「東京ビッグランブル」に招待された。曲も聞かずに、彼らのプロフィール写真だけを見て「韓国にもロカビリー・バンドがあったのか?」と招待状を送ってきたのだ。「あんなに多くのバンドがロカビリー専門でやってるのを見てびっくりしました。それに比べたら僕たちは生ぬるかったですね」。

 その日以降、本格的にロカビリーにのめり込んだ。エレキベースの代わりに大きなコントラベースを入れて、西洋の昔の音楽に韓国らしい情緒を盛り込もうと努めた。「ホン・ソボム先輩が『キム・サッカ(19世紀の詩人)』で韓国初のラップを作ったように、僕たちも韓国だけのロカビリーを作らなければならないという責任感が生じたんです」。楽しく踊って遊ぼうといったロカビリー・スタイルの歌詞の代わりに、まっすぐで率直な歌詞を書きはじめた。ある時、外国人観客がライブを見て言った。「お前らのロカビリーはどこにもないキムチビリーだぜ」。キムチビリーの命脈はロック・タイガース解散後の2013年に結成したストリート・ガンズにも受け継がれている。

 「ロカビリー文化から派生したものって多いんですよ。ヘアスタイル、ファッション、ダンス、映画、バイク、旧車…。そんなものまで好きだから、すっかりはまってしまいました。最初は一人で喜んでただけだったのに、そのうちバーバーショップ、スウィングダンスとかのレトロ文化が少しずつ入ってきた。そんな人たちと交流しているうちに、『レトロ好き同士が集まってパーティーをやろう』となって、やったのがレトロ・フェスティバルなんです」。

10月3日、仁川市松島の複合文化空間「Caisson 24」で開かれるレトロ・フェスティバルのポスター=レトロ・フェスティバル提供//ハンギョレ新聞社

 今年のフェスティバルは無料だ。昨年、フェスティバルに来て惚れ込んだ人がスペースを無料で貸してくれたからだ。ファンでなくても誰でも楽しめるようにクライング・ナットなどのおなじみのバンドも呼び、無料でリーゼントにしてくれるなどの観客参加型イベントも用意した。レトロな服や小物を売るフリーマーケットも運営する。

 「周りからは『最近レトロがはやっているのにお前は先に行き過ぎてるから、世に知られないんじゃないのか』と言われるんだけど、ちょっと違う気がします。今流行のレトロは韓国の1980~90年代の郷愁を刺激するもので、僕らのレトロはもはやクラシックになったロックンロール黎明期のすばらしい文化に対する憧れです。しばらく流行って廃れてしまうのではなく、時間が経つほど価値が増すもの、それこそが素敵なレトロだと思います」。

 ストリート・ガンズが6月に発表した2枚目のアルバム『ザ・セカンド・ブリット』からのシングルが「古い何か」である理由が分かるような気がした。「古い何かに涙が出るのは/その中に込められた話がたくさんあるから…」。

ソ・ジョンミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/910430.html韓国語原文入力: 2019-09-22 15:55
訳D.K

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