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[インタビュー]「安倍は韓国を2015年に戻す目標…妥協的和解は危険」(下)

登録:2019-08-16 09:58 修正:2019-08-17 07:37
鄭栄桓・明治学院大学教授が13日、ハンギョレ新聞社で韓日関係と歴史問題について語っている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

([インタビュー]「安倍は韓国を…」(上)の続き)

-韓国市民の日本製品不買運動、「NO JAPAN」ではなく「No安倍」に焦点を合わせた批判をどう見るか。

 「多くの日本の市民たちはNO安倍、NO JAPANを同じだと見る。ただ、韓国の市民が『なぜNO JAPANではなくNO安倍』を主張するのかは共有できる部分であり、韓日関係に対する理解を深める契機になるのではないかと思う。同時に、韓国の人々があまりにも安倍首相の問題にのみ集中する部分は憂慮される。安倍と極右保守勢力が再び韓国を侵略する意図を持っているとみなしているが、安倍は第2次世界大戦前ではなく、第2次大戦以降の東アジア冷戦体制に戻ろうとしているのだ。第2次大戦後から90年代まで韓日が共有した歴史自体が韓国の市民たちと被害者たちによって壊れていっているのに、日本は90年代まで韓日が共有した土台の上で新しい立場を作ろうとしている。日本の野党も安倍のような世界観を共有しており、安倍が退いても大きく変わらないだろう。戦後も平和ではなかった日本、その延長線上で日本が新たな地図を作ろうとしている」

-今回の事態を見ながら、韓国人は日本の右翼の朝鮮半島に対する欲望、征韓論の復活を憂慮している。実際に日本社会で征韓論的な思考が憂慮すべき実体として日本の政策に影響を与えているのか。

 「永続と断絶の部分がある。韓国が日本を守る緩衝地帯になればいいというのは、日本の保守派が続けてもっている認識だ。日本の右翼は『中国や北朝鮮を阻む盾の役割をすることが韓国の生きる道なのに、韓国が愚かなポピュリズムのせいで正しい選択をできず、北と感情的な民族主義、同胞意識で協力しようとしている』と見なし、『理性的に韓国が再び繁栄できる方法を教えてやらなければ』と考える。韓国を直接侵略するというよりも、戦後体制で韓国の役割を続けてほしいということだ。韓国を直接支配するのではなく、代理人を立てるイメージだ。ある意味ではもっと怖いとも言える。

 しかし、韓国は日本の政界が持っている選択肢がかなり狭いという点を慎重に考えなければならない。韓国のマスコミは、日本のマスコミの影響の中で安倍を見ている。日本のオルタナティブな勢力は、戦後体制が作り上げてきた平和民主主義国家を安倍首相が壊そうとしているから安倍と闘わなければならないという。ところが、安倍は戦前の価値を代弁するのではなく、日米安保体制と韓国との関係などの戦後の価値も代弁している。その秩序がそのまま進めば、新しい価値を回復させるのは難しい。80年代以前は、日本の進歩勢力はある程度オルタナティブな価値を持って日本に加害の責任を問うた。しかし、このような部分がだんだん狭くなっている。日本のマスコミ、政界、学界、官僚、財界など、目に見える談論も狭まっているという点を認識しなければならない。総合的な日本認識を改めて持たなければならない時期だ」。

-韓国政府の朝鮮半島平和プロセスに対して安倍首相はかなりの反感を示したが、いまや安倍首相は北朝鮮との「前提条件なしでの対話」を掲げ、韓国を越えて日朝国交正常化を推進するというシグナルも送っている。日朝関係をどう見通すか。

 「日本の政界の視点から見れば、日朝国交正常化が可能なのは安倍首相しかいないだろう。安倍勢力が野党に回れば、再び日朝国交正常化を批判し政治的動員の道具として使われるだろうし、それに耐えられる野党政権が作られるかどうかについては短期的には悲観的だ。ただ、北側がどのように対応するのかが問題だ。北は2002年の平壌宣言に基づきながらも、同時に人的被害に対する賠償・補償を要求するツートラック方式だ。北朝鮮がある意味で韓国よりもっと現実政治的に動くため、(日朝国交正常化に)動く可能性はある。しかし、新たな東アジア体制や歴史清算の観点から見ると憂慮がある。北は植民地支配の清算を全面的に要求できる、21世紀に外交ルートを通じて日本にもう一つの新しい歴史認識の枠組みを要求できる唯一の国だ。だが、北が体制保障と平和問題を優先して、歴史や人権問題を譲歩する可能性がある。1970年代、金日成(キム・イルソン)主席は歴史問題について譲歩すると明らかにしている。その後も北は慰安婦問題を含めた人権侵害は請求権協定に含まれていないと言いはしたが、2002年の平壌宣言の内容を見ると、韓日協定+金大中(キム・デジュン)・小渕宣言程度を要求するものとみられる。北は韓日関係を見守りながら、自分たちが日本にどの程度要求するかを計算しているようだ。だからこそ南北協力が必要だ。究極的には日本は加害の歴史を認識し、国内の歴史や人権教育をしなければならない課題があるのに、自主的に行われる条件は設けられていない。南北と日本が対話しながら、このような部分が日本国内で行なわれるようにしなければならない。安保と緊張の心配が低くなるほど、そのような条件が整えられる。こうした点を考慮すれば、南北・朝米対話がもう少し順調に進んだ後で日朝対話が行われるべきだと思う」

-日本社会の右傾化が続き、特に日本の若者に歴史に対する無関心、中国、韓国など周辺国に対する反感が高い。韓日市民が距離を縮めお互いを理解するためにできることは何か。

 「最近、あいちトリエンナーレで平和の少女像の展示が中止された。日本の歴史修正主義者の目標は、日本の加害責任を象徴したり教える内容を公共領域で廃止することだった。90年代に小学校の教科書に『慰安婦』の内容が入ったことに対する強力な反発から、歴史修正主義が登場した。いまでは中学校の教科書から慰安婦の内容をは完全に削除され、博物館や歴史施設などの教育表示板にあった強制動員の加害責任を表現する文についても右翼たちが攻撃して全て修正させてきた。関東大震災についても、(朝鮮人を)日本が虐殺した事実に注目するという表現を削除し、「日本人によって殺されたと書かれている本もある」という形に書き換えてきた。少女像の展示中止は、この20年間続いてきたこのような流れの終着点だ。日本国内で、加害問題に対して着実な歴史研究に基づく、日本市民の当事者意識と結びついた歴史教育が必須だ。そうするには、この20年間日本の公共領域から消えたものを再び再建しなければならない。その道は難しいが、やらなければならない道だ」

-安倍首相が推進する改憲と、戦争が可能になるいわゆる「普通の国になること」は結局実現するだろうか。

 「改憲問題は安保問題だけでなく、人権問題などにも関連した総合的な国家改造構想であるため、変化要因が多くて実現できないかもしれない。しかし、『普通の国になること』はすでに完成されつつある。集団的自衛権を認める安保法制はすでに通過した。すでに自衛隊の海外活動は可能になっており、東アフリカには自衛隊の基地がある。民主党が政権を取れば安保法制を廃止するだろうか?やらないだろう。ところが、強制動員判決が始発点となった韓日の葛藤は、日本がほぼ完成させた『普通の国になること』に混乱をもたらす要素となる可能性があるので、日本はこのように強く反発している」

-日本は韓日請求権協定で植民地支配に対する賠償はすべて終わっており、韓国最高裁が判決した強制動員被害者賠償は韓国政府と企業が解決しなければならないと主張する。いわゆる「1+1プラスアルファ」解決策をはじめ、韓日の葛藤を速やかに解決するために韓国政府が乗り出して解決すべきだという提案についてどう考えるか。

 「被害者意識に基づいた平和意識ではあったが、憲法9条によって平和を実現しようとする人たちが大多数である流れが1980年代まではあった。そのような価値や理念が失われていき、現実主義が自民党に勝つための唯一の選択と考えその道を歩んできた。しかし、そのような選択自体が今の安倍一党体制に帰結した。日本社会はこの30年間に失った進歩的な価値を回復しなければならない時期だ。しかし、韓国が政治的、外交的な妥協の手を差し出せば、そのような陣痛の過程をむしろ韓国が奪ってしまうという面もある。安倍政権では解決できない問題であるため、再び原則を確認し、待ちながら状況を見守らなければならないのではないか。

 むしろ請求権協定がなぜ揺さぶられざるを得ないのか、請求権協定が被害者の人権、生命を守るための体制だったのかどうかを振り返り、被害者の正義を立てる提案を日本に継続的に行うべきだ。安倍政権は無視するだろうが、市民は見ている。韓国社会のメッセージが日本の市民を教育する側面がある。短期的な政治的解決をするよりは、価値を確認する過程を一緒に歩まなければならない」

ー現在の韓日の葛藤を解決する過程で、日韓慰安婦合意の過ちを繰り返さないためには、どのような教訓に注目すべきか。

 「2015年の教訓をどのように共有するかが重要だ。韓日政府が当事者を排除して慰安婦問題の合意をしたというのが本質的な問題だ。当事者たちは日本政府の不可逆的な謝罪を望んだ。日本が謝罪をはじまりとし、歴史を記憶し続け、子どもたちに教えることを、これに対する約束を破らないよう法的責任を明示してほしいとハルモニ(おばあさん)たちは望んでいた。韓国の外交当局は日本政府がこれを受け入れるとは思わなかったため、当事者を排除して約束を結んだ。しかし、当事者を排除した約束は抑圧的であり、市民たちも反発することになるので問題解決にならない。

 日本軍『慰安婦』問題と強制動員をめぐる韓日対立を解決するためには、韓国が譲歩しなければならないという主張もあるが、私はそうではないと考える。そうなれば、日本政府は2015年の繰り返しまたはそれ以上の譲歩を望むだろう。韓国が政治的、外交的な妥協の手を差し出し、強制動員をめぐる葛藤を急いで収束させようとすれば、「輸出規制を強力にすることで韓国を2015年に再び戻すことができる」「韓国には強く出る必要がある」という“成功体験”を日本に与えることになる。そうすれば安倍首相としては本当に歴史に名を残す首相になり、「普通の国」を完成させることになる。日本の市民社会にも、国際社会や韓国の市民が歴史問題をどう見ているのか、韓国の最高裁がなぜこのような判決を下したのかを共有しながら学ぶ時間が必要だ。なので、私は外交的に迅速に解決することには慎重な立場だ。だが、原則的なメッセージは送り、日本社会と対話を続けなければならない」

パク・ミンヒ、ノ・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/905667.html韓国語原文入力:2019-08-15 09:53
訳M.C

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