金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長兼統一戦線部長が、最高人民会議以降、北朝鮮側の重要な政治行事に相次いで欠席し、その理由に注目が集まっている。
金英哲党副委員長は、労働党中央委員会政治局拡大会議(9日)や全員会議(10日)、最高人民会議(11~12日)には出席した。党・政府など国家機関の主要人事でも従来の職にとどまった。表向きの地位には変化がない。
ところが、金副委員長は「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(再)推戴慶祝中央群衆大会」(13日、金日成広場)や「偉大な首領金日成(キム・イルソン)同志の誕生(太陽節)107周年慶祝中央報告大会」(14日、平壌体育館)、「金正恩国務委員長の太陽節(4月15日)を契機とした錦繍山太陽宮殿参拝」には姿を見せなかった。新しく組織された労働党中央委副委員長と国務委員会委員のうち、これら三つの行事にすべて欠席したのは金副委員長だけだ。特に錦繍山太陽宮殿の参拝に出席しなかったのは“異常兆候”と言える。
これを直ちに“失脚の兆候”と見るのは難しい。金正恩委員長が12日に労働党本部庁舎で主要幹部たちと一緒に撮った記念写真で、金英哲副委員長が比較的に良い位置にいるからだ。政府関係者は19日、「金副委員長の地位に変化があるという話は聞いていない」と述べた。
金副委員長が重要な政治行事に出席できないほど、活発に非公開の南北接触など水面下の活動をしていると見られるのも、そのためだ。しかし、南北の間に特使を通じた接触が行われている可能性は、まったくないとは言えないが、それほど高くはない。その兆候が現れていないからだ。しかも、核心外交ラインのリ・スヨン党副委員長やリ・ヨンホ外務相、チェ・ソンヒ外務省第1次官は、全員15日の錦繍山太陽宮殿の参拝に出席した。リ副委員長はすべての行事に出席しており、リ外務相は13日の中央群衆大会だけ欠席した。チェ第1次官は中央群衆大会・中央報告大会の主要出席者として呼ばれなかった。金英哲副委員長やリ・ヨンホ外務相、チェ・ソンヒ次官の3人が13日の行事に参加できないほど“緊急な事情”、例えば朝ロ首脳会談の準備に追われている可能性もあるが、それも確認されていない。
北朝鮮事情に詳しい消息筋は「金英哲副委員長の健康が悪化し、(入院)治療中という話もある」と伝えた。しかし政府高官は「そうした諜報を聞いたことはない」と述べた。元政府高官は「(これまでの状況を見る限り)金副委員長の相次ぐ欠席の理由がはっきりしない」としたうえで、「金副委員長の状況が良くないことを示すものかもしれないが、それは南北関係にとっても良くないシグナルかもしれない」と述べた。