「南朝鮮当局はお節介な『仲裁者』、『促進者』のふりをすることなく、民族の利益を擁護する当事者にならなければならない。我々の立場と意志に共感し、歩調を合わせなければならず、言葉ではなく実践的行動で……」
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が12日、最高人民会議の施政方針演説で述べた苦言だ。耳を傾けるべき部分と不適切な内容が入り混じっている。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、韓国が当事者ではないと言ったことがない。「現在、朝鮮半島で起きている世界史的な大転換において、私たちが一番重要な当事者」(2月11日、首席補佐官会議)と述べたことを思い出してほしい。
文大統領が朝米間で「促進者」を買って出たのは事実だ。文大統領は自身の朝鮮半島政策をまとめて初めて明らかにしたドイツのケルバー財団演説(2017年7月6日)で、「朝鮮半島における冷戦構造の解体と恒久的平和定着」を目標に掲げた。「朝鮮半島の非核化」は南北関係の画期的な進展や朝米・朝日の敵対関係の解消なくしては実現できない。“北朝鮮の核”は問題の全てではない。文大統領が昨年2月の平昌(ピョンチャン)五輪以降の朝鮮半島情勢の変化を「非核化過程」ではなく、「朝鮮半島平和プロセス」と呼ぶのも、そのためだ。
「北朝鮮の核問題」は朝米の敵対関係と複雑に絡み合っている。“信頼構築”を動力にした朝米の相互変化がなくては解消できない。文大統領が「お節介な促進者のふり」をしてきたのも、そのためだ。当事者であり、促進者としての動きであり、問題とは言えない。むしろ、「お節介」という非外交的な用語を施政方針演説で使った金委員長の言語感覚こそが問題だ。さらに、文大統領は「仲裁者」という言葉を使わなくなって久しい。「仲裁」とは利害関係でつながっていない第三者を指す言葉だ。韓国は「第三者」ではない。
問題は認識の誤りではない。文大統領は「南北関係の発展は朝米関係進展の付随的効果ではない。南北関係の発展こそ、朝鮮半島の非核化を促進させる動力だ」(2018年の光復節記念演説)と述べた。文大統領が「非核化を優先すべき」という主張と明らかに距離を置き、「南北関係と非核化の並行戦略」を駆使するのもそのためだ。しかし、3大経済協力(開城(ケソン)工業団地や金剛山(クムガンサン)観光、鉄道・道路連結)事業には進展が見られず、政府高官は口を開くたび「制裁の枠組みの中で」を繰り替えず。遅々として進まない南北関係が本当の問題だ。
南北・韓米・朝米という3つの両者関係のうち、一つがギクシャクするだけでも、朝鮮半島平和プロセスは前に進めない。したがって、「言葉ではなく実践的行動」という金委員長の呼びかけがなくても、文大統領は南北関係の領域を広げるためにも、“対米自主性”の強化により多くのエネルギーを注がなければならない。
だとしても、「我々の立場に歩調を合わせなければならない」という金委員長の要求は不適切だ。南北米3者は異なる自分のアイデンティティに基づき、「相対的な力の計算」と「利益の算法」のもとで行動するしかない。隔たりを埋めて、共同利益の基盤を広げるために努力するのは、3者すべての役目だ。互いを理解しようとする努力を続けてこそ、針の穴より狭い出口を見つけ出し、朝鮮半島の平和の広場にたどり着くことができる。