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[ファクトチェック]平和の散策路が北朝鮮軍の射程圏内に入るため危ない?

登録:2019-04-05 06:15 修正:2019-04-08 07:54
非武装地帯(DMZ)散策路の高城地域の確定地図=行政安全部提供//ハンギョレ新聞社

 政府が3日、非武装地帯(DMZ)内に「平和安保体験路」(DMZ平和散策路)を作り、4月末から一般市民に開放すると発表した後、一部では、北朝鮮軍の発砲射程圏内にあるとか、金剛山(クムガンサン)観光客射殺事件の再発が懸念されるとし、憂慮の声があがっている。しかし、このような主張には誇張された側面が少なくない。

■平和の道が北朝鮮軍の射程圏に入る?

 平和の散策路が開放されれば、観光客たちは非武装地帯内にある、高城(コソン)(統一展望台~金剛山展望台)▽鉄原(チョルウォン)(白馬高地戦跡碑~ファサルモリ高地の非常駐監視警戒所)▽坡州(パジュ)(臨津閣~撤去された監視警戒所)など三区間を訪れることができる。特に、鉄原と坡州の区間では、一般人が初めて一般前哨(GOP)の鉄条網(停戦ライン)の向こう側にある南側の監視警戒所(GP)まで足を運ぶことができる。一部のマスコミは、これらのGPと最も近い北側のGP間の距離が近すぎて危険だと指摘する。しかし、偶発的な事故で観光客が負傷するほどではないというのが、軍の説明だ。鉄原の非常駐GPと坡州の撤去されたGPは、北側のGPからそれぞれ1.9キロメートル、1.2キロメートル離れている。北朝鮮軍が携帯していることで知られるAK小銃の「有効射程距離」(兵器が標的を攻撃し、被害を与えられる最大の射程距離)は500メートルに過ぎない。この小銃の弾丸が着弾できる最も遠い距離の最大射程距離は2200メートルだが、この場合、目標を攻撃して被害を与えるには困難があることから、あまり意味がないと国防部は見ている。

 一部のマスコミは、該当区間が高射銃や迫撃砲のような重火器に露出される危険性を強調する。重火器とは、個人が携帯できる小銃とは異なり、各GPに1~2台ずつ配置される大きな共用火器だ。軍関係者は北朝鮮軍による重火器発射の可能性について、「戦争や交戦をする目的でない限り、重火器で攻撃することはできない」と述べた。特に、南北が9・19南北軍事合意書によって、地上や海、空から相手に向かった一切の敵対行為を全面中止することにした約束を守っている状況を考えると、この類の挑発の可能性はさらに低くなる。

 北朝鮮軍が実際、高射銃などの重火器を使うなら、現在運用中の10カ所の安保見学場も“射程圏内”に入る点で、平和の散策路が特に危険だという主張は説得力に欠ける。高射銃(ZPU-2または4)を地上に向かって発射する際、最大射程距離は8キロメートルほどだが、市民が良く訪れる坡州の都羅山(トラサン)展望台をはじめ、10カ所の安保見学場も北側のGPと1.6~3.6キロメートルほどの距離だ。金剛山展望台は1.6キロメートル、龍楊ボ(ヨンヤンボ)観察デッキは1.8キロメートルで、平和の散策路と大きな差がない。北朝鮮が重火器を使用するためには、銃眼口を開かなければならないが、このような動向は韓国軍当局の最先端監視装備で捉えられるという。

 国防部は4日、散策路の開放と関連し、「北朝鮮軍の脅威はありえない」という立場を明らかにした。ノ・ジェチョン国防部副報道官は同日、国防部の定例記者会見で「今回の散策路の開放は、9・19軍事合意以降に造成された南北間の軍事的信頼をもとに反映したもので、民間人訪問客に対する威嚇行為はありえなく、現在運営している安保見学場の訪問客らも同様に徹底した安全対策を設けて運営している」と述べた。

非武装地帯(DMZ)散策路の鉄原地域の予想図=行政安全部提供//ハンギョレ新聞社

■「観光客銃撃事件」が再発する恐れがある?

 平和の散策路でも、2008年7月に発生した金剛山観光客射殺事件のような予期せぬ事故が起きかねないという懸念も行き過ぎている。金剛山は軍事境界線の向こう側の土地だが、平和の散策路は南側の地域だ。2008年の事故当時、北朝鮮軍は金剛山地域から北側GPの近くに接近した観光客から100メートル程度離れた距離で小銃を発射した。平和の散策路の訪問客たちが車両から降りて歩き回れる南側のGPは、軍事境界線の以南であるだけでなく、北側のGPとそれぞれ1.2キロメートル(坡州)、1.9キロメートル(鉄原)、1.6キロメートル(金剛山展望台)離れている。

非武装地帯(DMZ)散策路の坡州地域の予想図=行政安全部提供//ハンギョレ新聞社

■国連軍司令部の許可なしで散策路を作る?

 非武装地帯内にあるこれらの鉄原と坡州GPを民間人が接近できる見学施設にするには、国連軍司令部の承認が必要だ。国防部は、国連軍司令部と実務レベルの協議を終えたという。「国連軍司令官の決裁手続きが残っているだけ」というのが、国防部の説明だ。国防部当局者は「国連軍司令部は事前承認と見ても良いという立場」だとし、「実務陣の評価によると、安全と事業目的など様々な点を考慮し、承認に全く問題がないという立場」だと説明した。ノ・ジェチョン国防部副報道官も4日、「国連軍司令部とは計画段階から緊密な協議を行うと共に、現場を一緒に訪問するなど、準備を進めてきた」とし、「国連軍司令部側も非常に肯定的であり、現在は、国連軍司令官の公式承認手続きを残すのみだ」と確認した。

ノ・ジウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/888731.html韓国語原文入力:2019-04-04 19:42
訳H.J

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