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古代史論争で常に引用される『翰苑』訳注本、韓国で初めて発刊

登録:2019-03-24 23:13 修正:2019-03-25 06:59
『訳注翰苑』の表紙//ハンギョレ新聞社

 九州の大都市である福岡の郊外には、太宰府天満宮という有名な神社がある。春には境内に咲き誇る梅と、随一の入試祈願所として広く知られ、韓国人観光客も好んで訪れる名所だ。だが、韓・中・日の歴史学界は100年間余りにわたり、まったく異なる理由でこの神社に注目してきた。1917年、この神社の神事を司る官吏が自宅に所蔵した宝物を調査していて発見された7世紀の中国唐時代の貴重な文献が残っているためだ。今でも古代史論争の主要な素材として登場する三国時代の朝鮮半島の地理風俗を言及する際に欠かせない引用出処になっている『翰苑(かんえん)』筆写本がそれだ。

 韓国の学界が日本に伝わる『翰苑』の漢文テキストを考証し、内容を韓国語で解説した訳注本が初めて出版された。東北アジア歴史財団韓国古中世史研究所(所長 イ・ソンジェ)傘下の翰苑講読会のメンバーである研究者20人余りが、約3年をかけて講読と比較研究の末に出版した『訳注翰苑』だ。仁川都市公社のユン・ヨング文化財部長と、ソウル市立大学のアン・チョンジュン教授、淑明女子大学のキム・ジヨン講師、成均館大学のチョン・ドンジュン研究教授、成均館大学のウィ・ガヤ博物館学芸士らが執筆した。『翰苑』は、唐時代の中国とその辺境地域に居住する民族の地理・風俗などをまとめた百科事典の性格を持つ本だ。唐の歴史家、張楚金が660年頃に編纂し、雍公叡が注を付け、当初30冊が作られた。しかし、ほとんどが失われ、朝鮮半島三国と倭国、そして匈奴と烏桓、鮮卑など北方一帯の異民族を扱った「蕃夷部」1冊だけが9~10世紀に日本に伝えられ、原本を書き写した筆写本として残り、今に伝えられた。この「蕃夷部」は、高句麗の官等と政治状況、綿織物などの生産基盤、鴨緑江の起源、三韓の位置、百済の年代呼称など、現存する他の史書にはない稀少な記録が多く書かれているだけでなく、今は存在せず名前だけが残った歴史書物『魏略』『高麗記』が引用根拠として言及されているため、韓・中・日の古代史研究にとって大事な基盤資料と認められている。今回出版された訳注本は、古代史の理解に必須の文献だが内容自体が難解で、誤記も少なくないため解読が難しいことで有名だった『翰苑』「蕃夷部」の原文内容を詳細に韓国語で解釈して訳し、解説を付けたものだ。日本では1922年、中国でも1934年にすでに影印・訳注本が出版され、韓国での刊行はしばらく遅れていたが、今回の出版は韓国学界の古代東アジア史研究のために重要な踏み石を置いたと評価される。

ノ・ヒョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/887136.html韓国語原文入力:2019-03-24 19:57
訳J.S

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