北朝鮮の3大主要メディアである「労働新聞」「朝鮮中央通信」「朝鮮中央テレビ」が、チェ・ソンヒ外務省副相の15日の平壌での会見内容を3日経っても報道していない。ハノイでの2回目の朝米首脳会談が合意なしで終わった2月28日深夜12時を過ぎて開かれたリ・ヨンホ外相の記者会見の内容をいまだに報道していないことと似ている。会見で対米メッセージは出すものの、それを国内には伝えないパターンの反復だ。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とドナルド・トランプ米大統領がハノイで「相互の尊重と信頼を一層分厚く」し「生産的な対話を継続することにした」(労働新聞3月1日付1面)という論調を、まだ公式修正する状況ではないというメッセージでもある。
韓国政府の主要な関係者は17日、「相手の反応を見て今後の方向を定めるという意図が込められているようだ」と話した。
実際、チェ副相の「いかなる形態であれ米国の要求に譲歩するつもりはない」という発言は、「米国側が交渉を再び提起してくる場合にも、私たちの方案には変わりがない」としていたリ外相の既存のメッセージと本質的には同じだ。「譲歩はない」という原則的な線引きだ。
ただし、注目すべき違いがある。リ外相が会見で「今後の行動計画」を口にしなかった反面、チェ副相は最高指導部の「行動」を示唆するメッセージを出した。15カ月目を迎えた核実験・弾道ミサイル発射モラトリアムの持続有無は「全面的にわれわれの(金正恩)国務委員長の決断にかかる問題」という発言がそれだ。危険水位を行き来する対米圧迫・警告と言える。
北朝鮮の事情に明るい韓国政府の元高位関係者は「北側が公式声明・談話発表ではなくチェ副相を前面に出したのは、一応米国の反応を推しはかるためと見られる」としながら「情勢を安定させる措置が取られないならば、北側が『行動』に出る危険もある」と指摘した。「われわれの最高指導部がまもなく自らの決心を明確にすると見られます」というチェ副相の発言は、それゆえに注意を要する。ただし「決心」の主体に金委員長を特定しなかったうえに、「予告」ではなく「観測」の形式を借りての発言であるためその含意を計り難い。
元高位関係者は「韓国と中国の役割、特に中国の習近平国家主席の役割が重要な時点」だとし、「習主席が北朝鮮に特使を送り、金委員長の意中を正確に把握して、交渉の基盤を再び確かめることが現実的なアプローチだろう」と助言した。彼は、金委員長が1月8日の4回目の朝中首脳会談で、習主席に「朝鮮半島情勢の管理と非核化交渉過程を共同で研究し操縦する」(労働新聞1月10日付1面)を約束した事実を想起させた。