政府の高齢者雇用事業を媒介に、これまで隠れていた高齢層の労働欲求が表面化し、今年に入って高齢者労働が雇用指標の全般に影響を及ぼしている。専門家らは高齢者雇用事業の必要性と効果を認めながらも、労働市場の核心年齢層として位置付けられる高齢者労働に対する本格的な検討が必要な時期だと指摘した。民間労働市場での引退時期の延長、政府支援による高齢者雇用事業の社会的経済への転換、福祉拡充を通じた所得支援などを総合的に考慮しなければならないという意味だ。
■高齢者雇用事業が目覚めさせた高齢者労働
13日に統計庁が発表した2月の雇用動向によると、先月の全体就業者数が26万3千人増加した中、60歳以上(高齢者)の就業者数は39万7千人増えた。高齢者の経済活動人口は1~2月平均で38万9千人増え、昨年水準(25万3千人)を大幅に上回った。
今年に入って、高齢者の経済活動参加と雇用が活発だった理由は、まず規模を拡大した政府の高齢者雇用事業のためだ。今年1年間に政府が提供する高齢者の雇用は61万件規模で、昨年(51万件)より10万件多い。特に高齢者雇用事業が例年に比べると1カ月早く始まり、「早期執行効果」が1~2月の指標でさらに大きく表れた。
製造業(-15万1000人)、建設業(-3000人)、卸・小売業(-6万人)など、主要産業の就業者数が減少している中、高齢者雇用関連産業の就業者数の増加は著しい。高齢者雇用が含まれる保健福祉サービス業の就業者は、1年前より23万7千人増えた。昨年、前年比14万1千人減少した臨時職も、高齢者雇用の影響を受け、先月は4万3千人まで減少幅を減らした。
農林漁業の就業者数が11万7千人増えたのも、高齢者就業者数の急増によるものと分析される。「引退者の増加と彼らの家族の帰村(Uターン、Iターン)の影響」というのが農林漁業就業者数の増加に対する企画財政部の説明だ。引退が労働市場からの退場のもっとも重要な要因となり、過去の中年失業のように景気鈍化期に雇用から押し出され自営業や臨時・日雇い職を探すというより、帰村する傾向がいっそう強まっていることに伴う結果という意味だ。
■「市場・社会的経済・福祉を総合して高齢者労働を考えるべき」
最近の指標でさらに顕著に表われているが、長い間30~50代を中心としていた労働市場が、高齢者を核心に再編される状況は「避けられない未来」だ。高齢者人口は最近、前年同期に比べ50万人以上増加している。50代の人口が1万人台の増加に止まり、30代と40代の人口は減少傾向がはっきりしていることとは対照的だ。専門家らが所得支援と高齢者の社会的活動支援のために高齢者雇用事業の緊急性を認めるとともに、同時に「市場、社会的経済、福祉を総合して高齢者労働に対する中長期的なビジョンを出さなければならない」という意見を示しているのはそのためだ。高齢者が所得支援の対象であるだけでなく、生産の主体にならなければならない状況は遠くないからだ。
まず、民間市場領域で引退年齢の引き上げの必要性と、福祉を通じた所得支援の拡充が共通して取り上げられる。韓国労働社会研究所のキム・ユソン理事長は、「再就職よりは少なくとも65~70歳まではそれまで専門性を持って働いてきた仕事ができるよう、老後の労働時間や賃金を減らしても引退を遅らせる制度を設ける必要がある」と語った。
一時的(通常9カ月)な所得支援制度にとどまっている高齢者雇用事業の生産性と持続性を引き上げ、社会的経済領域に移す案も提示されている。「私がつくる福祉国家」のオ・ゴンホ運営委員長は「現在の高齢者雇用事業を中長期的には『公益的な性格』と『政府支援』という共通分母を持つ社会的経済に編入させる案も考えられる」と話した。