小児心臓病手術(フォンタン手術)に必要な人工血管の国内供給再開と関連し、米ゴア社が「医療機器製造および品質管理基準(GMP)の審査および規制書類の免除」と「米国定価」レベルの販売価格を保障することを条件に掲げたことが確認された。ゴア社は8日、食品医薬品安全処(食薬処)などに送った公式書簡で、このように要求を明らかにした。
最近、国内の人工血管の在庫が底をつき、フォンタン手術が見送られる事態が続いたことを受け、ゴア社は「(人工血管の)再供給を考慮している」と発表したが、2017年10月に韓国から撤退した背景と人工血管を供給しない理由などが公式文書で確認されたのは初めてだ。
13日、共に民主党のキム・サンヒ議員室を通じて、ハンギョレが入手した食薬処や保健福祉部、ゴア社などが作成した人工血管関連文書によると、同社は韓国政府が送った人工血管供給協力要請書簡に対する返信で、「韓国市場からわが社が撤退したことをめぐる人道主義的関心について非常に憂慮している」としながらも、韓国政府に要求する条件を明確にした。「GMP審査および規制書類を免除し、米国の定価で販売することに同意するなら、さらに歩み寄り、人工血管などの再供給を考慮する」という内容だ。
現在、在庫が底をついた人工血管の米国販売価格は約82万ウォン(約8万円)で、韓国での販売価格約46万ウォン(約4万5千円)のほぼ2倍だ。この人工血管は韓国国内で1年に約50本使われている。これに先立ち、政府は2015年に治療材料に対する報酬上限金額の一括引き下げを進め、同製品の価格も19%ほど引き下げられた。ゴア社は、再供給の条件として、関税や配送費なども販売価格に反映することを掲げた。
希少・必須治療材料の人工血管の販売価格の引き上げは可能だ。ゴア社の撤退後、保健福祉部は昨年9月、「国民健康保険療養給与基準に関する規則」で、希少・必須治療材料の上限金額算定基準を変えたからだ。ゴア社の人工血管の場合、輸入国での流通価格や製造・輸入原価などを参考にし、健康保険報酬を定めることができるようにしたものだ。
ゴア社が2017年に韓国市場から撤退した背景も、文書を通じて一部確認された。2017年6月に食薬処がゴア・コリア関係者と「人造血管の国内供給に関する面談」を行った後に作成した資料によると、福祉部が「健康保険報酬を調整・検討する」とし、国内からの撤退を引き止めたが、ゴア社は「2019年8月22日に満了するGMP適合認定書の再審査など、別途の投資は困難だ」という立場を示した。これに対して食薬処は「米国本社は、GMP適合認定書満了後にも韓国国内での供給の意思はあるものの、(国内使用患者が少なく)営利目的を果たすことができないため、GMP審査など一切の費用負担を避けたいと思っている」と判断した。
ゴア社が8日に食薬処に送った書簡で「GMP審査および規制書類の免除」を要求した理由も、2017年に撤退した背景と無関係ではなさそうだ。ただ、ゴア社が韓国に比べて費用や審査回数など規制が強い欧州には引き続き製品を供給する一方、韓国から撤退した理由は、依然として明確でない。3年周期で更新審査を行う韓国のGMP審査には250万ウォン(約24万6千円)、毎年審査する欧州では1500万ウォン(約147万5千円)がかかると食薬処は説明する。
13日に行われた国会保健福祉委員会の食薬処業務報告で、与野党議員は問題解決にもっと積極的に乗り出さなかった食薬処を批判した。キム・サンヒ議員は「食薬処がゴア社の撤退以降、2年間何もしなかったのではないか」とし、「ゴア社がまず人工血管20本を供給することにしたのは幸いだが、持続的な供給再開という課題を解決し、二度とこのようなことが起きないよう徹底した対策を講じなければならない」と指摘した。チェ・ソンラク食薬処次長は「(ゴア社が許可を自ら取り下げた製品に対する)輸入許可の復元や関連法の改正などを一部行なったが、(こうした事態をもたらした点について)申し訳なく思っている」とし、「今週ゴア社とテレビ会議を開く予定であり、類似した事例が発生しないよう、抜本的な改善策を早急に講じる」と述べた。