26日午前8時13分(現地時間)、中国と国境を接したベトナム北部ランソン省のドンダン駅の錆びたレール上に、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の専用列車が姿を現した。23日午後4時32分に平壌(ピョンヤン)を出発し、中国の丹東~天津~武漢~南寧などを経て、65時間40分をかけ3800キロメートルを走破する長旅の末、北朝鮮の最高指導者としては55年ぶりにベトナムを訪れたのだ。
列車がゆっくり駅に近づくと、内外信記者約100人で埋め尽くされた駅周辺がざわつき始めた。北朝鮮の最高指導者が中国などを訪問する際は、徹底した保安のため、外信が専用列車を近くで撮影することは不可能だったが、今回は他の国家指導者同様、多くの外信記者が到着する場面をリアルタイムで生々しく報道した。祖父の金日成(キム・イルソン)主席譲りの行動力を見せ、国際舞台で活躍する指導者としてのイメージを示した。
客車のドアが開き、金委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)労働党宣伝扇動部第1副部長が先に姿を現した。金副部長は、金委員長が列車から降りる前に、キム・チャンソン国務委員会部長とともに、レッドカーペットと周辺状況を確認した後、再び列車に乗り込んだ。金副部長は昨年6月、シンガポールで開かれた朝米首脳会談同様、慌ただしく走り回った。
金委員長が列車から降りたのは8時22分だった。長旅の疲れからか、やや曇った表情で降り立った彼は、出迎えたベトナム人たちと挨拶を交わし、笑みを浮かべ始めた。ベトナム側からはボー・バン・トゥオン宣伝担当政治局員やマイ・ティエン・ズン官房長官らが出迎えに出た。金委員長はベトナム政府高官らと握手を交わした。「お会いできて嬉しいです」と言っているように見えた。儀仗隊を査閲して駅舎を出た彼は、ベトナム住民らに笑顔を見せながら、手を振った。
金委員長は8時24分頃、専用車のベンツのプルマン・ガードに乗り込んだ。車を取り囲んだ“防弾警護隊”12人も走り始めた。1日に列車1台が通過する小さな国境村のドンダン駅には、多くの住民が出て金委員長を歓迎した。金委員長は、車の窓を開けて住民らに手を振った。ハノイへ向かう途中、バクニンにあるサムスン電子工場などを訪問する可能性もあるという見通しも示されたが、1番国道で170キロを走り、午前11時頃にハノイのメリアホテルに到着した。
一方、金委員長を乗せてドンダン駅に到着した専用列車の機関車には、中国鉄道総公社のロゴと共に「DF4D3058」という番号が書かれていた。金委員長の専用列車機関車の番号は「DF11z-0002A」だ。韓国交通研究院のアン・ビョンミン研究員は「北朝鮮の指導者が中国に入る時は、通常中国指導者の列車をけん引する機関車が北朝鮮側にわたり、専用列車と連結した後、国境を越える」と説明した。ベトナムにも、中国の側が提供した機関車が専用列車をけん引したものとみられる。