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韓国検察、事実上の死刑廃止にもかかわらず死刑求めて上告続ける理由とは

登録:2018-12-11 06:39 修正:2018-12-11 11:07
今年10月10日、国会で開かれた第16回「世界死刑廃止の日」記念式および討論会で、人革党再建委捏造事件の死刑囚の遺族であるイ・ヨンギョ氏が発言している=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

 「無期懲役を言い渡した2審の刑が軽すぎる」として、死刑を要求する検察の上告が続いている。韓国は事実上の死刑制廃止国であり、量刑不当で上告できないというのが最高裁(大法院)の一貫した判例である点で、検察のこのような機械的な上告慣行に問題があるという指摘が相次いでいる。

 最高裁は先月29日、「奥歯父さん」ことイ・ヨンハク事件の上告審で、「検事が『原審の刑が軽すぎる』ことを上告理由に掲げることはできないというのが最高裁の確立された判例であり、当該判例を変更する必要があるとは思えない」として、上告を棄却した。最高裁はいわゆる「水落山(スラクサン)殺人事件」でも、同様の理由で検察の上告を棄却した。K氏は2016年5月、ソウル蘆原区上渓洞(サンゲドン)の水落山登山路で、60代の女性登山客を殺害した容疑で裁判にかけられた。1審から死刑を求刑してきた検察は、2審で無期懲役の判決が言い渡されたことを受け、最高裁に上告したが、棄却された。

 最高裁判所が毎回このような判断を示してきたにもかかわらず、検察の態度は変わっていない。そのうえ、マスコミの報道などで国民の怒りを買った事件ならなおさらだ。検察は先月21日、京畿道楊平郡(ヤンピョングン)の田園住宅殺人事件でも、H被告に下された無期懲役の刑が軽すぎるとの理由で上告状を提出した。当時2審を担当したソウル高裁刑事1部(キム・インギョム裁判長)は、1審と同じく無期懲役を言い渡しながら、「(検察の上級機関である)法務部が1997年を最後に、20年以上死刑を執行していない状況で、死刑に処してほしいとして控訴するのが果たして正しい検察権の行使なのか疑問だ」と皮肉った。

 最高裁判所の確立された判例は「刑事訴訟法の解釈上、検事は原審の刑が軽すぎるという理由で上告を主張できない」ということだ。キム・デグン韓国刑事政策研究院研究委員は「主に1審で死刑が宣告され、2審は無期懲役などに減刑された際、検察が量刑不当の趣旨で上告してきたが、最高裁は判例などを参考にし、これを一貫して棄却している。(最高裁が)上告理由に関する刑事訴訟法の条項(第383条4項)を『被告人の権利救済のための条項』と判断しているためだ」と説明した。

 これに関し、ある判事は「凶悪犯罪で国民の憤りが高まると、検察が世論を意識して死刑を求刑する。棄却されることを承知で、とりあえず上告してみるということ」だとし、「韓国が実質的な死刑廃止国に分類された状況なので、最高裁の判例が変わる可能性は極めて低い」と指摘した。

 一方、検察は刑事訴訟法第383条4項に「被告人のための条項」という文句が直接明示されていない以上、判例変更のための上告が可能だという立場だ。検察関係者は「主要事件は刑事上告審議委員会で外部の意見を参考にし、上告するかどうかを決める。死刑制の存廃をめぐる論議があるが、凶悪犯に死刑を求刑することが犯罪の予防策になり得る」と話した。

コ・ハンソル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/873826.html韓国語原文入力:2018-12-10 22:19
訳H.J

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