ヤン・スンテ最高裁長官時代の裁判所事務総局(行政処)が、最高裁判事の多様化などを求める書き込みを裁判所の内部掲示板に掲載した判事の人事評価を人為的に操作し、地方に“左遷”させた事実が事務総局の文書で確認された。司法壟断時代を触発させた「裁判官ブラックリスト」が具体的に実行された事実が明らかになったのは初めてだ。同文書は、パク・ビョンデ元最高裁判事(事務総局長)だけでなく、ヤン・スンテ元長官の決裁も受けたという。これに先立ち、ヤン元長官は6月の記者会見で、「不利益を受けた裁判官はいないと、自信を持って言える」と主張した。
18日、ハンギョレが検察などを取材した結果、事務総局の家宅捜索で、文書の形で確保された「騒ぎを起こした裁判官の人事措置報告書」(2015年1月作成)には、裁判所の内部掲示板に最高裁長官の司法行政を批判したS部長判事の人事評定順位を格下げし、昌原地裁統営(トンヨン)支院に異動するという内容が書かれているという。S部長判事は2011年から水原(スウォン)地裁に勤務し、2015年2月の定期人事で統営支院に発令され、当時も最高裁長官が問題判事を手なずけるための人事だという批判があった。裁判官らは裁判所の人事システムにより「地方→首都圏→ソウル」の順で勤務するが、S部長判事はソウルで勤務すべき時期に首都圏で4年間勤務しており、次の異動で“配慮”されるべきだったにもかかわらず、むしろ最も遠い裁判所の一つに発令されたからだ。事務総局の「裁判官ブラックリスト」が実行された結果だという事実が、今になってようやく確認されたわけだ。
S部長判事は2014年8月、当時のヤン・スンテ最高裁長官がクォン・スンイル事務総局次長を最高裁判事に推薦したことに対し、裁判所の内部掲示板に「最高エリート裁判官ではなく、人権に対する感受性を持つ法曹人に門戸を開いてほしい」という趣旨の書き込みを掲載した。さらに、2015年1月にも、最高裁判事候補推薦委員会がシン・ヨンチョル最高裁判事の後任にパク・サンオク韓国刑事政策研究院長などを推薦したことに対し、「積極的に最高裁判事の構成の多様化という価値を具現する必要がある」という書き込みを残した。最高裁長官が推薦権を持つ最高裁判事に関連してS部長判事が書き込みを掲載してから、事務総局が勤務地や事務分担など、様々な人事上の不利益案を検討し始めたのだ。
これに先立ち、最高裁判所の内部調査でも、S部長判事の「性向」を分析した事務総局の文書が確認された。にもかかわらず、今年5月、最高裁(大法院)特別調査団(団長アン・チョルサン裁判所事務総局長)は「批判的な裁判官に対し、人事上の不利益を与えた資料は見つからなかった」と発表した。しかし、検察が関連書類を事務総局から確保したことで、「裁判官ブラックリスト」の隠蔽疑惑も浮上するものとみられる。検察は同日、S部長判事を呼んで文書内容を確認したという。検察は他の裁判官らにも人事の不利益があった事実を確認したという。ある裁判官は「自分と異なる考えを持っているという理由で、最高裁長官が裁判官に人事上の不利益を与えたのは、裁判官の独立の深刻な侵害だ」と批判した。
キム・ミンギョン記者(お問い合わせjapan@hni.co.kr)