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「良心的兵役拒否」に無罪判決、70年続いた処罰が止まった

登録:2018-11-02 10:05 修正:2018-11-02 15:17
今月1日午前、ソウル瑞草区の最高裁判所で良心的兵役拒否者の兵役法違法に関する宣告のための最高裁全員合議体が開かれている=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 1950年から続いた2万人近い処罰の行列が止まることになった。宗教や信念を理由に、入営や銃を取ることを拒否する良心的兵役拒否は無罪だという最高裁判所の判決が初めて出た。6月の「兵役法処罰条項は合憲、代替服務制のないものは違憲」という憲法裁判所のあいまいな決定からも一歩進んだという評価を受けている。

 最高裁(大法院)の全員合議体(裁判長:キム・ミョンス最高裁長官、主審キム・ジェヒョン最高裁判事)は1日、「エホバの証人」の信者で2013年7月に陸軍現役兵として入営を命じるよう通知を受けた後、入営を拒否して兵役法違反の疑いで起訴されたオ・スンホン氏(34)を、上告審で懲役1年6カ月を宣告した原審判決を覆し事件を無罪の趣旨で昌原(チャンウォン)地裁の合議部に差し戻した。

 最高裁の全員合議体は「良心的兵役拒否に対し、刑事処罰など制裁を加え兵役義務の履行を強制することは、良心の自由など基本権の本質的な内容に対する脅威になりうる。兵役義務の履行を一律的に強制し、履行しなければ刑事処罰で制裁するのは、少数者に対する寛容と包容という自由民主主義の精神にも反する。真の良心による兵役拒否なら、兵役法で処罰の例外事由に定めた『正当な理由』に該当するというのが多数意見」だと明らかにした。

 最高裁判事13人のうち、キム最高裁長官やキム・ジェヒョン、クォン・スニル、チョ・ジェヨン、パク・ジョンファ、ミン・ユスク、キム・ソンス、ノ・ジョンヒ最高裁判事など8人が多数意見に参加した。イ・ドンウォン最高裁判事は、国家の安全保障に憂慮がない状況を前提に多数意見に加わる別個意見を出した。キム・ソヨン、チョ・ヒデ、パク・サンオク、イ・ギテク最高裁判事は「真の良心の存在の有無を審査するのは不可能だ。世界唯一の分断国として、厳しい安保状況と兵役義務の公平性を考慮すれば、良心的兵役拒否は認められない」とし、有罪を主張する反対意見を出した。

■良心的兵役拒否の判断基準今回の無罪判決(最高裁判事9対4)は、2004年の最高裁全員合議体の有罪判決(最高裁判事11対1)を14年ぶりに覆すものだ。最高裁は、宗教または信念による兵役拒否を判別する基準を新たに提示した。最高裁は「良心的兵役拒否で『良心』とは、その信念が深く、確固としていて、真実でなければならない」と定義した後、「信念が深いというのはその人のすべての考えと行動に影響を及ぼすという意味であり、人生の一部ではなく全部がその信念の影響力のもとになければならない」とした。兵役を忌避する用途だけで宗教を掲げることは容認できないということだ。さらに「兵役拒否者が深く確固たる信念を持っていても、状況によって異なる行動をするとしたら、真実と見なすことはできない」と述べた。最高裁はこれに照らし合わせてオ氏が、13歳のときから信仰生活を始めた▽2003年に初めて入営通知を受けて以来、現在まで信仰を理由に入営を拒否▽父親と弟も同じ理由で獄中生活▽扶養しなければならない配偶者、幼い娘、生まれたばかりの息子がいるにも関わらず刑事処罰の危険を甘受している点を「良心と信念の真実性」を認める根拠に挙げた。

 最高裁はこの他にも「良心的兵役拒否の教理乱用」を防ぐための基準も提示した。当該宗教の教理に「良心的兵役拒否」が含まれていても、他の信者も兵役を拒否するのか▽教団で信者として認めるのか▽教理内容全体を徹底的に従うのかとともに、▽宗教を信奉するようになった動機▽改宗したならその理由▽信仰の期間と実際の宗教活動などを主な判断要素に挙げた。

 釈然としない面もある。こうなると今後、良心的兵役拒否の「良心」が「深く確固として真実なのか」が裁判の対象になる。最高裁は「被告人が自身の兵役拒否が切実で具体的な良心によるもので、その良心が深く、確固としていて、真実であることを示す疎明資料を提示し、検事がこれらの資料の信憑性を批判して排斥し『正当な理由』がないことを立証する方式」で裁判が進行されなければならないと明らかにした。簡単に判定し難い「良心の真正性」をめぐり、新たな議論が起こる可能性は少なくないようだ。10月末現在、裁判所には良心的兵役拒否関連事件が227件係留されている。

■代替服務制の立法を急げ最高裁の今回の判決は、「処罰規定は合憲だが、良心的兵役拒否者を処罰してはならない」という6月の憲法裁のあいまいな決定とは異なり、「処罰が不当で無罪」という点を明確にした。当時、憲法裁は良心的兵役拒否の処罰は代替服務制がないためであるので、裁判所が無罪判決で解決せよとボールを渡した。しかし、最高裁は代替服務制を理由にした憲法裁の論理を受け入れなかった。最高裁は「良心的兵役拒否を『正当な事由』と認めるかどうかは、代替服務制の有無とは関係ない」と明らかにした。良心的兵役拒否が「正当な事由」に該当すれば処罰しないだけであり、代替服務制とは関係がないという説明だ。

 憲法裁の決定に続く最高裁の無罪判決で、来年12月31日が法改正時限である代替服務制の立法が一段と急がれることになった。しかし、近々発表される政府の代替服務制案は、陸軍現役兵の服務期間の2倍に当たる36カ月間、刑務所で勤務するようにする方向で大枠が決まってきており、憲法裁と最高裁の判断趣旨とは異なり事実上「懲罰」だという批判もある。

ヨ・ヒョンホ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/868423.html韓国語原文入力:2018-11-01 21:14
訳M.C

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