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最高裁事務総局の「広告費10億」の文書以後…朝鮮日報、上告裁判所賛成報道あふれる

登録:2018-08-04 07:44 修正:2018-08-04 12:32
2015年 朝鮮日報の上告裁判所に関連した主要報道//ハンギョレ新聞社


2015年上告裁判所広報推進の過程で
「アンケート・座談会・記名コラム掲載を提案
代価として9億9900万ウォンの広告費編成」

「立法と司法の不倫」と評していた朝鮮日報
最高裁事務総局の文書以後、論調変わる
「国民の立場から見よ」など集中報道
報道要請の内容がそっくり「企画報道」に

協賛・広告費執行の有無確認必要
「国庫横領予備容疑の事案」との指摘も
朝鮮日報「事務総局が一方的に作成した文書」

 ヤン・スンテ最高裁長官時代の最高裁事務総局が、朝鮮日報に上告裁判所広報のためのアンケート調査と座談会、特集記事などの掲載を注文し、その代価に10億ウォン(約1億円)の裁判所予算を広告費として支給する計画を立てていたことが明らかになった。 最高裁事務総局が「記事取り引き」を試みたもので、検察内部では「国庫横領予備」の疑いで捜査すべき事案という評価が出ている。 ヤン・スンテ最高裁の“司法壟断”疑惑が具体的にあらわれている状況だが、最近まで朝鮮日報は「上告裁判所導入のための裁判取り引きはなかった」として文書公開に反対する趣旨の報道をしてきた。

■コラム代筆および報道計画

 最高裁事務総局が31日追加公開した「朝鮮日報を通しての上告裁判所広報戦略」という文書(2015年4月25日企画調整室・司法政策室作成)等を見れば、当時事務総局は朝鮮日報を通して上告裁判所を集中的に広報することにし、朝鮮日報側に全国の弁護士を対象としたアンケート調査、紙上座談会、朝鮮日報内部筆陣のコラムと外部の寄稿文掲載などを提案したことが分かる。

 文書は特集記事を臨時国会開院直前の2015年5月第4週から6月第1週の間に集中掲載するよう計画を立てた。 文書はアンケート調査の場合「(ソウル地方弁護士会より)朝鮮日報を主体として実施する方案の方がアンケート調査の成功の可能性を確保し、調査結果の効果的な広報により有利だ」と判断した。さらに「朝鮮日報を調査主体とする場合、アンケート調査機関に支給する用役代金の支援が必要だ。 朝鮮日報に上告裁判所関連広告などを掲載し、広告費にアンケート調査実施代金を含めて支給する方案を検討すること」としている。 文書には「(裁判所予算の中で)一般裁判運営支援の一般需要費のうち、司法部の公報広報活動支援細目で9億9900万ウォンが編成されている」として、具体的な支出細目まで指摘されている。

 朝鮮日報が上告裁判所関連のアンケート調査結果を報道したことはない。 ただ、上告裁判所報道と関連して協賛金・広告費などが最高裁から朝鮮日報へ渡ったかどうかは、今後検察が確認しなければならない部分だ。 検察関係者は「事務総局の計画通りならば、国庫横領予備の疑いで捜査が可能になり得る」と話した。

 文書はまた、アンケート調査期間をあらかじめ公示せずに「上告裁判所設置賛成」が60%以上出たらすぐ調査を中断し、地域別に加重値を別にして反対の立場の反映比率を低くしようとするなど、アンケート調査歪曲まで計画したことが分かった。 最高裁が上告裁判所推進の名分を作るために世論の操作企画もはばからなかったという点を見せる部分だ。

 文書は2015年5月26日頃の掲載を目標に、朝鮮日報論説委員が司会を担当して法曹界と社会の元老を相手に紙上座談会を開く案を計画し、これを朝鮮日報に提案することにした。事務総局が作成した文書は、座談会出席者候補はもちろん、座談会進行の具体的な順序と発言内容、議論の方向まで一つ一つ具体的に計画している。

 事務総局が同年5月6日に作成した「朝鮮日報訪問説明資料-上告制度改善のための国民的共感形成」という文書も4月25日の文書内容をそのまま含んでおり、このような内容が全て朝鮮日報に提案された可能性が大きいと見られる。

 これに先立ち、同年4月14日に事務総局企画調整室が作成した「上告裁判所関連メディア紙上座談会施行案」文書も、朝鮮日報での紙上座談会を詳細に計画して、座談会で参席者が発言する内容を準備するために当時L司法登記局長をチーム長に事務総局審議官が大挙参加する実務準備チーム(タスクフォースチーム)を構成することにした。

 文書はこれと共に、当時臨時国会が上告裁判所設置法案を本格的に論議する前に、朝鮮日報の記名コラムと「太平路」または「デスクから」等のコラムを通して上告裁判所に友好的なコラムを掲載することを朝鮮日報に提案することにしている。 このために「執筆陣に関連資料および執筆内容に関する基礎報告書を提供」することにした。

 これと関連して同年5月4日に司法政策室が作成した「朝鮮日報広報戦略日程およびコンテンツ検討」文書は「記事コンテンツ」という項目で上告制度改善の必要性、上告裁判所案の内容、最高裁判事増員論の問題点、上告裁判所判事任命方案、外国の事例などを紹介している。

■ 「上告裁判所賛成」の報道あふれる

 朝鮮日報が上告裁判所に初めから友好的な報道をしていたわけではなかった。 「上告裁判所と三権分立」(2015年1月17日)というタイトルのコラムでは、与野党の議員168人が発議した上告裁判所法案を「立法と司法の“不倫”」に比喩したりもした。 これに対し事務総局は直ちに「上告裁判所立法推進動力ブームアップ(boom-up)方案検討」なる文書(2015年2月1日)を通して、「保守メディアの一部否定的報道が公式の立場と誤認される」としてこのコラムを取り上げて論じた後、イ・ジンガン前大韓弁護士協会会長などの上告裁判所賛成の寄稿文掲載を推進するという対策を打ち出す。 実際に文書作成直後の2月6日には、イ前会長名義で「上告裁判所が必要な理由」という寄稿文が、4月13日にはオ・ヨンチョン元ソウル大学総長(前司法政策諮問委員長)が書いた「最高裁正常化のための出発点、上告裁判所」という寄稿文が朝鮮日報に載った。 特にオ元総長の寄稿文は、最高裁事務総局がコラム掲載前に作成した文と“助詞”まで同じで「代筆」疑惑が提起されている。

 事務総局が同年4月末と5月初めに朝鮮日報活用戦略を具体化した文書を作成した直後の5月19日から6月初めまで、朝鮮日報の紙面には上告裁判所関連記事とコラム、企画報道が続いた。 特に5月28日の1面と3面にかけての企画報道は「上告裁判所の議論、国民の立場から見よ」というタイトルで「最高裁に(事件が)年間3万7000件」と指摘した。

 同年9月20日付の事務総局の「朝鮮日報報道要請事項」文書は「上告審事件の訴価総額と当事者総数に関する企画報道」を要請して、年間受付けられる上告事件の訴訟物価額5兆ウォン(大邱市の年間予算6兆ウォン)▽5兆ウォンが資本市場に流入した場合、経済的利益1500億ウォン▽年間上告事件当事者数12万人(忠南論山市の人口) ▽飛行場の騒音損害賠償訴訟、解雇無効訴訟などを事例として提示している。 文書の内容は「最高裁判事“月火水木金金金”で仕事をしても手に余るのに…上告裁判所が漂流?」という企画記事(10月21日)にそっくり記事化された。 裁判記録が人の背丈ほどに積み上げられたコ・ヨンハン最高裁判事の執務室の写真も、その企画記事と一緒に掲載された。 最高裁判事の執務室公開は非常に異例なことなので、当時も上告裁判所導入に事務総局が“オールイン(総力集中)”しているという話が出た。

 「朝鮮日報」という名前がタイトルに入っている文書は「朝鮮日報上告裁判所寄稿文」「朝鮮日報コラム」「朝鮮日報寄稿文」「朝鮮日報諜報報告」「朝鮮日報広報戦略」「朝鮮日報訪問説明資料」「朝鮮日報報道要請事項」「朝鮮日報記事日程およびコンテンツ検討」など9件に達する。 これと関連して朝鮮日報はこの日、立場表明文を出して「最高裁事務総局の文書は事務総局が一方的に作成したもので、朝鮮日報とは関係がない」と明らかにした。

 一方、事務総局が非公開文書の追加公開を予告した当日である31日、朝鮮日報はその間の報道態度とは異なり「ヤン・スンテの最高裁事務総局、裁判請託国会議員名簿作成した」という報道を紙面に送り出した。「上告裁判所導入を媒介にした裁判請託の可能性」を初めて報道したものだが、「記事取り引き」疑惑が含まれた文書の公開が論調の変化に影響を与えたのではないかという分析も出ている。

ヨ・ヒョノ先任記者、キム・ナミル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/855698.html韓国語原文入力:2018-08-01 05:01
訳A.K

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