日帝強制占領期(日本の植民地時代)の強制徴用被害者らが日本戦犯企業に対して起こした訴訟をめぐる「ヤン・スンテ最高裁-外交部-大統領府」の「三角コネクション」疑惑が検察の主要な捜査対象として浮上している。当時の裁判所事務総局が、政府が裁判に関与できる“通路”を開くため、関連規則まで急きょ変更した情況もさらに明らかになった。
26日、ハンギョレの取材の結果、裁判所事務総局政策室は2013年9月「対日関係の悪化」を懸念する外交部の立場を強制徴用訴訟に反映する計画を立てた。当該文書には「外交部の立場を書面で裁判に反映できる方法を新たに設けるため努力する予定」だという内容が盛り込まれていた。外交部は2012年8月、最高裁判所が「三菱などは強制徴用被害者9人に賠償責任がある」という趣旨の判決を出して以来、不満を示し続けてきた。しかし、外交部は裁判の“当事者”ではないため、自らの要求事項を裁判に反映する方法がなかった。
ところが、2015年1月、最高裁は訴訟関連の内部規定の「民事訴訟規則」を改定した。「国家機関と地方自治体は公益に関する事項に関し、最高裁判所に裁判に関する意見書を提出することができると共に、最高裁判所は彼らに意見書の提出を求めることができる」という内容だ。下級審ではなく、最高裁の裁判に限り、訴訟と関連のない第3者の意見も参考できるよう規則を変更したものだが、最高裁はこれに対し「上告審の充実化」という理由をつけた。
以降、朴槿恵(パク・クネ)政権の初代駐日本大使を務めたイ・ビョンギ当時国家情報院長が朴槿恵大統領の秘書室長になってから、韓日間の歴史問題に対する政府の態度が変わり始めた。そして外交部は裁判所事務総局が整えておいた、いわば“内規高速道路”を積極的に活用した。日本の戦犯企業を代理していたキム&チャンは、2016年10月「大韓民国の外交部」に意見書を要請した。破棄差戻し審を経て、最高裁に再上告されて3年が経った時点で、意見を求めたのだ。チャンスを手にした外交部は、最高裁に「法理的に韓国が勝訴するのが困難な事案」とする意見書を提出した。「司法壟断」疑惑を捜査するソウル1部(部長シン・ボンス)は、当時事務総局は外交部と緊密に交感し、裁判を先延ばす見返りとして、海外高官への裁判官派遣の拡大などを要求したものではないかと疑っている。
2012年、最高裁判所が一度判断を下した同事件は、最高裁の判決の主旨どおり、事件が再上告されてから5年が経っても結論が出ていない。もし最高裁が下した「賠償責任」の判断に従ったなら、「審理不続行棄却」により数カ月で終わった事案というのが法曹界の評価だ。
事務総局が外交部を“窓口”とし、事実上大統領府と交感したと見られる部分もある。2014年3月、チョン・ダジュ元企画調整室審議官が作成した文書の中で、事務総局は、大統領府が全教組を法外労組とする決定への執行停止申請を引用した下級審の判決に不満を抱いていたことを把握した。また、最高裁で「下級審の判決を正す」見返りに、「在外公館への派遣に積極的に協力」してもらうことを計画していた。最高裁判所の独自調査団もこれに対して「司法行政権が最高裁の裁判に不当な影響を及ぼし、本案結論をむやみに観測するのは、実行するかどうかを離れそれ自体が司法行政権の乱用」だと指摘した。
これと関連し、同事件が最高裁判所に足止めされていた時期、最高裁判所裁判研究官を務めたイ判事は26日、フェイスブックに掲載した文で「当時、先輩研究官と最高裁判事などが(三菱事件について)『韓日の外交関係に大きな破局をもたらす事件』だとして、再検討も指示したが、最高裁判所が下した判決の正当性を自ら否定するというのは話にならないと思った」と書いた。彼はハンギョレに「当時、外交部が意見を提起した状況だったため、破棄差戻しを考慮するのが全くあり得ないことだとは思えない」としながらも、「破棄差戻しを検討したのは不当だと思った」と明らかにした。