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北朝鮮携帯電話500万台推定…活用度高いがインターネット・SNSできず

登録:2018-07-26 06:08 修正:2018-07-28 07:22
2018年4月17日、平壌中区駅平壌大劇場で開かれた「第31回4月の春親善芸術祝典・在日朝鮮人総聯合会芸術団公演」の観覧を終えた観客が劇場を出ている。多くの人が手に携帯を持っている=統一TVジン・チョンギュ代表提供//ハンギョレ新聞社

 4月27日の南北首脳会談、6月12日の朝米首脳会談以降、南北関係改善に対する期待と共に、北朝鮮住民の生活に対する関心も高まっている。在米ジャーナリストのジン・チョンギュさんは、北朝鮮核危機が高まっていた昨年10月に平壌を訪問し、最近、訪朝取材記『平壌の時間はソウルの時間と共に流れる』を出版した。同書には平壌市民の日常が鮮やかな写真と文章で紹介されているが、携帯電話を片手に街を歩く平壌市民の姿は韓国とあまり変わらない。北朝鮮の情報技術と使用環境はどんなレベルだろうか。

■北朝鮮の情報技術の現状

 閉鎖国家北朝鮮の情報技術能力が国際社会の注目を集めた契機は、2014年11月のソニー・ピクチャーズのハッキング事件だ。まだハッカー集団の正体は明らかになっていないが、ソニー・ピクチャーズが北朝鮮の指導者の暗殺を素材にしたコメディー映画『インタビュー』を製作配給するのに、北朝鮮が激しく反発しており、米連邦捜査局(FBI)が北朝鮮をハッキングの黒幕とした捜査を進めたことで、北朝鮮のハッキングの実力に対する関心も高まった。

 北朝鮮は、金正日(キム・ジョンイル)時代からソフトウェアの重要性を強調し、積極的にコンピューター技術を開発してきた。オープンソースとリナックスを基盤に、独自のコンピューター運営体制(OS)の「赤い星」を開発してアップグレードしてきた。また朝鮮コンピューターセンターや平壌情報センター、朝鮮鴨緑江技術開発会社などの組織を基盤に、人工知能研究及び様々なソフトウェア開発に乗り出している。

 統一部の北朝鮮情報ポータルによると、北朝鮮は1998年に中学4年生からコンピューター教育を義務化し、金日成大学や金策工科大学、平壌科学技術大学、咸興コンピューター技術大学などの教育機関から年間1万人ほどの情報技術人材を輩出している。

 北朝鮮では、外交使節と研究人材など当局が許可した特殊集団以外には一般人がインターネットにアクセスできない。一般国民は1997年に開通した国内のイントラネット「光明網」に接続し、北朝鮮政府が管理する各種コンテンツを利用することができる。韓国でインターネットが普及していなかった時期のPC通信サービスと似ている。

■移動体通信とインターネット環境

 北朝鮮にも移動通信とスマートフォンが急速に広がっており、一般人の利用が増えている。北朝鮮では2008年、エジプトの移動体通信会社オラスコムが北朝鮮の会社と共に高麗リンクを設立し、移動体通信サービスを始めた。2012年には第2移動体通信会社「強盛ネット」が、2015年には第3移動体通信会社の「星」が設立されて、移動体通信3社体制が整っており、第3世代(3G)網を使用する。

 国際電気通信連合の2016年統計によると、北朝鮮の携帯電話加入者は361万人だ。昨年「北朝鮮の有・無線通信サービスの現状および示唆点」報告書を発表した情報通信政策研究院のキム・ボンシク副研究委員は「最近の北朝鮮の移動体通信加入者は500万人と推定される」とし、「北朝鮮では個人間の商業活動が活発で、スマートフォンは商売の必須道具として脚光を浴びている」と話した。2500万人の北朝鮮人口のうち約20%が携帯電話とスマートフォンを使用しており、1、2世帯当たり1台の割合だ。

デンマークの開発者が2018年初めに訪朝後に公開したスマートフォン「アリラン」のメイン画面のアプリ=クリステンセンのツイッター提供//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮核問題により国際社会の制裁が加えられているが、北朝鮮はスマートフォンやタブレットを独自生産して普及している。北朝鮮はアリランやチンダルレ、平壌など、様々なブランドのスマートフォンを生産し、普及している。今年初めに販売されたアリラン171は、アンドロイド7.1.1を運営体制にしており、RAM4ギガ、ROM32ギガに、デカ(10)コア2.6ギガヘルツのプロセッサを搭載している。画面は5.5インチ、カメラは13メガピクセルの解像度で、ハードウェアにおいては世界レベルとあまり変わらない。スマートフォンの端末価格は北朝鮮の一般労働者賃金の3カ月分の給料に該当し、北朝鮮では富の象徴とされている。

 スマートフォンであるにも関わらず、インターネットには接続できず、カカオトークのようなソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)も使えないというのが特徴だ。独自開発した各種ゲームや辞書、カーナビなどのアプリがあり、写真撮影や動画視聴、音楽感想、ゲームなどの用途で主に活用される。デンマーク開発者クリスチャン・ブデ・クリステンセン氏が今年1月に北朝鮮を訪問した際、「アリラン」のアプリを紹介し、北朝鮮のスマートフォンの利用実態が知られた。

北朝鮮が2018年初めに開発して公開したスマートフォンの最新機種「アリラン171」の性能=「朝鮮の今日」からキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 SNSはないが、利用者たちは「通知文」(ショートメール)を通じて活発な疎通をする。北朝鮮のスマートフォンではインターネットを使用できないが、中国との国境地帯では、中国で開通したスマートフォンでインターネットを利用する場合も珍しくない。

 北朝鮮関連メディアのある脱北者記者は「北朝鮮のスマートフォンではインターネットにはアクセスできないが、搭載されたアプリを通じて「労働新聞」など日刊紙や各種図書、作物栽培法など多様な資料を利用できるため、一般住民たちの常識レベルを上げるのに役立っており、北朝鮮指導部のこのような方針が住民から支持を受けている」と話した。

 国会立法調査処のキム・ユヒャン科学放送通信チーム長は「北朝鮮ではスマートフォンで利用可能な情報が、体制の広報に関わる情報などに限られているが、政治社会的変化のきっかけがあった場合、かなりの影響を及ぼす可能性のあるネットワークが存在するということが重要だ」とし、これに注目すべきだと話した。

ク・ボングォン「人とデジタル」研究所長(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/854405.html韓国語原文入力:2018-07-23 19:24
訳H.J

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