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[記者手帳] 難民を雇用した済州の養殖場からの電話…「政府はどこにいるんですか」

登録:2018-07-05 09:38 修正:2018-07-05 10:34
イエメン難民が故郷のサナアにサウジアラビア空軍が爆撃するシーンの動画を見せている=パク・スンファ記者//ハンギョレ新聞社

 10日間の済州島取材を終えてソウルに戻ってから二日が過ぎた時だ。済州から一本の電話がきた。自分を「済州の養殖場の事業主でイエメン人を雇用しているK(29)」と名乗った。

 Kさんは「現場の声」を伝えたいと言った。「いま養殖場に来たイエメン人は、韓国文化、韓国語、さらには韓国の食事法も全くわからない状況です。教育を受けて試験を受けて入ってきた他の外国人労働者とは違います」。Kさんの養殖場で働くイエメン人もやはり、韓国語のあいさつどころかハングルの基本も知らないという。「文字がわかれば単語や基本的な文章でも教えてあげられるけれど、ハングルの最初の文字も知らないから方法がないんです」

 Kさんをはじめ済州の事業主たちは、イエメン人の「顔と印象」だけを見て雇用した。「出入国・外国人庁が設けた就職説明会は『無作為マッチング』で行われました。イエメン人に1番、2番と番号をつけ、事業主とつなぐ方法でした」。イエメン人を対象とした出入国当局の事前教育は2時間程度の映像を見せたのが全部だった。Kさんは「現場では政府当局が何をしているのかが見えない。イエメン人を押しつけられたという感じがするほど」だとし、「少なくともアラビア語でなされる韓国語、韓国文化の講義でもユーチューブにアップしてくれたらいいのに、それさえもない実情」と話した。

 済州島民は、どさくさの中で「難民問題」の最前線に立った。これには政府の「放置」も大きな役割をした。急に集まった「難民申請者」に困惑した出入国当局は、「出島制限」で彼らを済州に閉じ込めたこと以外には、特別な措置を取らなかった。臨時の方便として行われた「就業斡旋」も事後管理とはかけ離れていた。「韓国を全く知らないイエメン人」と「イスラム文化になじみのない事業主」が、緩衝地帯なしにぶつかりあったのだ。

イム・ジェウ記者//ハンギョレ新聞社

 現場に適応できなかったイエメン人は事業場から離脱し、事業主たちには不満が積もった。この様子だけを浮き彫りにするメディアによって「衝突と不和」がもくもくと広がっている。済州で会った島民たちは、それぞれ心に傷を抱えていた。イエメン人に善意を示した市民社会は厳しい非難に直面し、イエメン人を雇用した事業主は無駄な荷物を担わされたという被害意識を持つようになった。根拠を見つけにくい噂に恐れる済州島民も多い。当の政府は、このうちの誰に対しても何の役割も果たしていない。

 よかれあしかれ、韓国は難民条約に加盟している。2013年の難民法を制定したのも韓国の国会だ。「549人のイエメン人」は、頭の痛い問題だとして棚に上げておける“物”ではない。遅くはあるが、衝突の現場となった済州には市民の「善意」ではない政府の「行政力」が必要だ。美しい島・済州はイエメン人たちを閉じ込めるための刑務所ではないだろう。

イム・ジェウ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/851888.html韓国語原文入力:2018-07-05 07:53
訳M.C

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