マイク・ポンペオ米国務長官が、北朝鮮の非核化を前提に民間投資の許容など果敢な“経済的補償”方案に初めて言及し、朝米首脳会談を契機に北朝鮮が正常な貿易国家に変貌する第一歩を踏み出すかに関心が集まっている。ポンペオ長官が提示した方案は、国際社会の対北朝鮮制裁解除と朝米国交正常化などを前提にしたものなので、北朝鮮経済が画期的な改革・開放に進む道が開かれることもありうる。
1.ベトナム開放モデル
「緊密なパートナーとなったかつての敵国」
ポンペオ、金正恩委員長に言及
国交正常化後、低い同等関税
正常交易関係→WTO加盟国加入
■正常貿易国・WTO加入…ベトナム式開放は可能か
ポンペオ長官は「北朝鮮の経済繁栄」と共に「今は緊密なパートナーになったかつての敵国」の事例に言及した。ベトナム開発モデルを想定したのではないかとの観測が出ているのはそのためだ。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長も、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談でベトナム式改革・開放に関心を見せたと伝えられている。
ベトナムの場合、1995年に米国と国交正常化を実現した後、米国と締結した二者貿易協定(2001年)を通じて他国と同等な関税を互いに適用する“正常貿易関係”(NTR)を成し遂げた。対外経済政策研究院のチョン・ヒョンゴン先任研究委員は「ベトナムの事例を見れば、米国との正常貿易関係は活発な民間資本誘致や他国との貿易正常化に進むための核心的措置」と説明した。2006年には米国議会がベトナムに対する「恒久的正常貿易関係」(PNTR)法案を通過させ、翌年ベトナムは世界貿易機関(WTO)の加盟国になった。ベトナムが米国との国交正常化後にも国際貿易に完全に編入されるには、12年かかったということだ。ベトナムの人権問題や価格の安い工業製品輸入問題などに対して、米国議会が内部対立を調停する過程が容易でなかったためだ。貿易正常化と制裁解除のためには、米国議会の政治的攻防を乗り越える過程が必須という意味だ。チョン研究委員は「北朝鮮の場合にも“1人独裁体制”、“人権”を材料にした政治的問題が不安要素になる可能性がある」と話した。
2.国際金融支援
アジア開発銀行などインフラ投資
経済協力南北二者→多者構造へ
「IMFなど加入必要…3年ほどかかる」
米・日・欧などの同意、条件造成がカギ
■ ADB金融支援…国際社会の一員として参加するか
第二の方案は、アジア開発銀行(ADB)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)のような国際機関を通した“金融支援”だ。こうした国際機関のインフラ投資は、単純な財源調達の問題に終わらず、経済協力をかつてのような南北二者構造から多者構造に拡大し、北朝鮮が国際社会の一員として参加することになるという意味がある。
これにも少なからぬ時間が必要だ。国際金融機関のインフラ投資支援を受けるためには加盟国にならなければならないが、国際通貨基金(IMF)の加盟国になってこそ世界銀行(WB)をはじめアジア開発銀行、アジアインフラ投資銀行にも加盟できるためだ。キム・ドンヨン副首相兼企画財政部長官は「北朝鮮が国際通貨基金に加盟するためには、3年ほどの時間がかかるだろう」と見通した。
非加盟国状態でも支援を受ける方法はある。世界銀行は総会の承認を経ればインフラ投資ではなくとも開発計画樹立などを助ける技術支援(TA)を提供できる。ユン・テシク企財部開発金融局長は「国際機関で最大持分を占める米国、日本、欧州が北朝鮮に対する金融支援に同意できる条件がいつ造成されるかがカギ」と説明した。
3.「朝米の掛け橋」開城工業団地
再稼働すれば対米輸出に新たな販路
「域外加工地域認定、制裁緩和の効果
銀行が開かれ、事実上金融制裁解除」
■開城工業団地は韓米FTA域外加工地域になるか
開城(ケソン)工業団地が北朝鮮と米国の貿易を連結する“掛け橋”になることもありうる。韓米両国は、2007年に自由貿易協定(FTA)交渉で妥結し、今後開城工業団地の生産品を韓国産と認定するかを協議する「朝鮮半島域外加工地域委員会」を設置することにした。協議の条件は、朝鮮半島非核化の進展、南北関係に及ぼす影響、労働・環境基準の充足などと決めた。だが、北朝鮮の核実験のせいで2016年2月に開城工業団地が門を閉める時まで、対米輸出の道は一度も開かれなかった。
今回の朝米首脳会談で北朝鮮の非核化が宣言されれば、開城工業団地が再稼働されるのはもちろん、新たな対米輸出の販路も開かれる可能性が出てくる。キム・グァンギル元開城工業団地法務チーム長(弁護士)は「開城工業団地など北朝鮮の一部地域を域外加工地域と認定し、米国に輸出できる道が開かれれば、対北朝鮮制裁を大幅に緩和する効果が生じる」として「単純に関税だけ下げるのでなく、対米貿易を許容するには銀行の支店設立も許容しなければならため、事実上金融制裁が解けるだろう」と話した。