サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が5日、控訴審で懲役刑の執行猶予を宣告され釈放された。裁判部は、最高政治権力と最大財閥の不適切な取引に「典型的政経癒着は見られない」 「社会貢献活動費用の一環として執行」などの表現を使いながら免罪符を渡した。裁判所内外からは「司法の正義の時計の重りを2016年国政壟断以前に戻した判決」という批判が出ている。
ソウル高裁刑事13部(裁判長チョン・ヒョンシク)はこの日、イ副会長に懲役5年を宣告した原審を破棄し、懲役2年6カ月、執行猶予4年を宣告して釈放した。1審で懲役4年を宣告されたチェ・ジソン元サムスングループ未来戦略室長(67、副会長)とチャン・チュンギ元未来戦略室次長(64、社長)にも懲役2年に執行猶予3年を宣告し釈放した。1審で実刑を免れたパク・サンジン元サムスン電子対外協力社長(65)とファン・ソンス元サムスン電子スポーツ企画チーム長(56)もそれぞれ懲役2年に執行猶予3年と懲役1年6カ月に執行猶予2年を宣告され、刑が大幅に軽くなった。
この日の判決は「政治権力と資本権力の不道徳な密着」という1審判決の趣旨を根底から覆した。国政壟断に最も深く介入していながら「権力の圧力で仕方なかった」というサムスンの“被害者コスプレ”を事実上公認したと評価されている。裁判部はこの事件を「最高政治権力者である朴槿恵(パク・クネ)前大統領が韓国最大の企業集団であるサムスングループの経営陣を強迫し、チェ・スンシル氏が誤った母性愛で私益を追求した事件」と規定した。イ副会長に対しても「朴前大統領側の要求に受動的に応じた」だけであると判断した。
また、裁判部は「(チェ・スンシル氏のコアスポーツと結んだ)用役契約も、当初チョン・ユラ氏に対する乗馬支援を目的としたのではなく、チョン氏に対する支援が行きすぎてわいろに至った」として、サムスン側の主張を一言一句変えることなくそのまま受け入れた。
裁判部は特検がわいろ(約束を含む)で起訴した433億ウォンのうち、乗馬支援関連金額(78億ウォン)の一部である36億ウォンだけをわいろと認定し、執行猶予の道を開いた。裁判所はまた、わいろと連動して量刑に大きな影響を及ぼす横領額(特定経済犯罪法)も36億ウォンだけを認め、刑量が重い財産国外逃避疑惑をすべて無罪と判断した。
これと共に裁判部は「イ副会長のための経営権継承作業は存在しない」と釘を刺した。これに伴い、経営権継承作業という包括的懸案に対する不正な請託を構成要件とする第三者贈収賄疑惑はすべて認められなかった。
イ副会長側のイ・インジェ弁護士は宣告直後「裁判部の勇気と賢明さに敬意を表わす」と明らかにし、イ副会長はソウル拘置所を出て「良い姿をお見せできなくて、あらためて申し訳なく思う。今後さらに細心に見直す」と話した。特検は「裁判部が正義は生きているということを見せることを期待したが、きわめて残念だ。裁判部と見解の異なる部分は上告して徹底的に争う」と明らかにした。