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進撃のトラクター「これから朴槿恵掘り返しに行く」

登録:2016-11-25 02:03 修正:2016-11-25 16:04
今月23日「全ボン準闘争団」西軍を率いる「大将トラクター」に乗り込んだイ・ヒョシン全国農民会総連盟副議長の姿//ハンギョレ新聞社

 トラクターは秋の収穫が終わってからも休む暇がなかった。慣れ親しんだ泥道から離れて、不慣れなアスファルトの上をガタガタ音を立てながら、北東に向けて走っていた。田畑を後にして道路に乗り出したトラクターの計器盤からは、さびた鉄のにおいが漂っていた。

 「現代の趙秉甲(<チョ・ビョンガプ>甲午農民戦争の導火線となったとされる朝鮮後期の腐敗した郡守)である朴槿恵(パク・クネ)とその残党を捕まえるために、オート麦の植え付けを中断して出てきました」。今月23日午前9時30分忠清南道洪城(ホンソン)警察署前。畑仕事を中断してトラクターに乗り込み、10日間かけてソウルを目指すイ・ヒョシン全国農民会総連盟(全農)副議長(53)は、赤い鉢巻きをしめてトラクターのハンドルを握ったまま、このように語った。彼は、東軍と西軍に分かれてソウルに進撃する「全ボン準(<チョン・ボンジュン>甲午農民戦争を率いた人物)闘争団」の西軍大将を務めている。イ副議長が率いる西軍は同日、洪城を出発し、礼山(イェサン)、唐津(タンジン)を経て、牙山(アサン)まで8時間を休まず走った。記者も助手席に座ってその時間を共にした。

全ボン準闘争団西軍の移動経路//ハンギョレ新聞社

 トラクターの乗り心地は乗用車とは比べものにならなかった。平均時速15~20キロで走っているのに、終始ガタガタ揺れて頭を支えるのがやっとだった。ハンプを越えるときは、必ずといっていいほど座席に腰を打ち付けられた。「キーキー、ブーンブーン」。ガラスから入り込む大型タイヤの轟音が、絶え間なく耳にズキンズキンと響いた。乗り込んでから10分足らずで、吐き気とめまいが押し寄せた。

 「一日中運転していると、両肩がとても痛みます。トラクターは乗用車とは違って、衝撃が吸収されません。トラクターは農機だから普段はこんなに早く走ることはありません。トラクターでこんなに長い距離を走行するのは、おそらく空前絶後でしょう」

 全農は今月15日、朴槿恵大統領の退陣に向けた農家の心をトラクターに乗せて「全ボン準闘争団」を出撃させた。イ副議長が運転する西軍の「大将トラクター」は初日、全羅南道海南(ヘナム)を出発して、全羅北道を経て、忠清南道まで休まず走り続けた。全ボン準闘争団の道程を最初から最後まで走破した唯一のトラクターだ。残りのトラクターは各市・郡を通るたびに合流しては抜けるリレー方式で参加する。16日、慶尚南道晉州(チンジュ)を出発した東軍はチェ・サンウン全農副議長が率いている。

 東軍と西軍は24日、京畿道安城市(アンソンシ)に到着した。彼らは25日には全国から集まった約2000台のトラクターと合流し、午後5時、政府ソウル庁舎前で「米価大暴落、農民殺害、国政壟断、朴槿恵退陣農民大会」を開く計画だが、警察は集会の禁止を通告した。彼らは26日、光化門(クァンファムン)で開かれるキャンドル集会にも参加する予定だ。トラクター軍団の最終目的地は大統領府だ。

全ボン準闘争団の西軍大将であるイ・ヒョシン全国農民会総連盟副議長が今月23日午前、隊列の先鋒としてトラクターを運転しながら忠清南道の国道を走っている。計器盤が時速15キロを指している//ハンギョレ新聞社

トラクターに乗って、忠清南道唐津市に到着した全ボン準闘争団西軍が、今月23日午後2時30分頃に昼食を終え、記念撮影を行っている//ハンギョレ新聞社

 「農家のベク・ナムギさんが亡くなった時、『トラクター闘争団』を初めて企画しました。結構悩みました。(秋の収穫の後で)最も忙しい時期に農作業を10日も休まなければならないからです。畑1500坪にオート麦を植えなければならないのに、それを中断して出てきました。家を出るとき、『一年間の農作業に支障が出ても、人生を耕していると考えよう』と決めました」。イ副議長はさらに「朴槿恵大統領は大統領選挙の公約で米価を引き上げると言ったが、結局嘘でした。農業を国の基幹産業として保護・育成すべきだという考えを持った政権を立てなければなりません」と付け加えた。

 全農は「コメの価格暴落の解決とコメの輸入中断」を求めて、先月30日から全国の各市・郡を訪れ、稲を積み上げ野積闘争を展開した。農家の気持ちを無視した政権に対する怒りは、ペク・ナムギ氏の死と朴槿惠・チェ・スンシルゲートを経て、爆発した。イ副議長は「国民がキャンドル(集会)で戦っているのに、農家もさらに積極的な方法で気持ちを示さなければと思いました。このような時局に私たちの問題だけで声を高めではならないと思って、『朴槿恵退陣』のスローガンを前面に掲げました」と話した。

今月23日正午、忠清南道礼山郡を通っていた全ボン準闘争団を待っていた夫婦がイ副議長に食べ物を渡している//ハンギョレ新聞社

 洪城を過ぎて礼山の町に入ると、黒いビニール袋を持った夫婦が一生懸命に手を振っていた。大将トラクターを止めてドアを開けると、夫婦は「ご苦労様です」と言いながらビニール袋を渡した。袋の中にはお餅やみかん、飲料水と共に、心が込められていた。

 「トラクターで国道に沿って主に田舎を走ったら市民たちの反応が本当に暖かいです。店を飛び出して手を振ってくれる人、食べ物をくれる人、カンパだと言って(お金を)渡してくれる人…。同じ農家だから、より深く共感しているようですね。その気持ちから元気をもらって、大変な道のりでも力強く走っています。大統領府に行って朴槿恵を追い出さなきゃなりませんから」

全ボン準闘争団西軍が今月23日午後5時、忠清南道牙山市内に進入している//ハンギョレ新聞社

洪城 牙山/チェ・イェリン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/area/771875.html 韓国語原文入力:2016-11-24 19:03
訳H.J(2640字)

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